Today's Insight

2020/6/26 10:00作成

やや気掛かりな日本の30年国債利回りの上昇

■ 世界的に30年国債利回りが上昇しており、足元では、欧米対比で日本の利回り上昇が目立つ
■ 日銀は超長期金利上昇を容認しているが、上昇が続く場合は今後の対応が注目される

 各国中央銀行が金利の低位安定化を企図するなか、金融政策の対象範囲外にある超長期国債利回りが世界的に上昇し、イールドカーブのスティープニング(傾斜化)傾向が明確になっている。足元では、特に日本でこの傾向が目立っており、30年国債利回りは、2019年3月上旬以来、約1年3カ月ぶりの高水準に達している。世界的な低下に歯止めが掛かった3月中旬から6月上旬までは、30年国債利回りは日米欧で概ね連動して上昇してきたが、6月中旬以降、利回り上昇に歯止めが掛かった米国、ドイツと対照的に、日本では上昇が続き、欧米との乖離が鮮明となっている。直接的には、黒田日銀総裁が6月16日の日銀金融政策決定会合後の会見にて、「超長期金利はそれほど上がっていない」、「イールドカーブは全体として適正な形を維持している」などの見解を示し、超長期金利の上昇を実質的に容認したと受け止められたことに起因する模様。黒田日銀総裁は本日の日本時間早朝に行われた講演でも、改めて同様の趣旨の発言をしている。また、7月以降、大型経済対策に伴う国債増発が予定されており、これも金利上昇やイールドカーブのスティープニングを促している要因に挙げられる。

 国債利回り(名目金利)は、フィッシャー方程式*1に基づくと、自然利子率(中立金利)と期待インフレ率の和と表現される。自然利子率は中長期的には潜在成長率と概ね一致すると考えられ、これらに財政状況を反映したリスクプレミアムが加味される。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済対策が潜在成長率を引き上げるとは考え難く、国債利回りの上昇は、期待インフレ率の上昇、リスクプレミアムの拡大に求められる。関連指標をみると、長期的な市場のインフレ期待を示す各国の10年物価連動国債のブレークイーブン・インフレ率(BEI)は、3月以降緩やかな上昇基調が続き、世界的にインフレ期待が高まりつつあることを示唆。一方、リスクプレミアムを反映するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)プレミアム(5年)は、各国ともに3月の急上昇後、再び落ち着きを取り戻しつつある。両指標ともに日本特有の動きは見られない。足元の日本と欧米の30年国債利回りの連動性低下が一過性のもので、再び収束に向かう可能性は十分想定されるものの、今後、欧米との乖離が一段と広がり、日本の金利上昇に歯止めが掛からなくなる場合は、日銀の対応に注目が集まると考えられる。

*1 名目金利=実質均衡金利(自然利子率、中立金利)+期待インフレ率

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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