Today's Insight
2023/11/21 10:30作成
原油:産油国の動向を注視
■ 国際機関は世界原油需要の伸びが来年に鈍化するとの見通しを維持
■ 主要産油国の動向はまちまちで、原油需給への影響を注視
国際機関による11月時点の世界原油需給見通しが出揃った。石油輸出国機構(OPEC)は13日に発表した月報で、2023年の世界原油需要量が前年比2.52%増加し日量1億211万バレルになると、前月の見通し(同2.45%増)から小幅に上方修正した。経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進国の需要見通しが下方修正されるなか、OECD非加盟の新興国の上方修正がこれを上回ったことが背景にある。また、2024年は景気減速の影響を受けて同2.20%増と、前年から伸びが鈍化するとの見通しは維持された。国際エネルギー機関(IEA、2023年:同2.41増→2024年:同0.88%増)や米エネルギー情報局(EIA、2023年:同1.90%増→2024年:同1.39%増)も同様の見通しを示している。ただ、中国主導で需要が底堅く推移するとみるOPECと、景気減速の影響やエネルギー効率向上の進展を重くみるIEAでは、2024年の需要鈍化の度合いに乖離がみられる。
世界の原油供給に関しては政治的な観点などの理由から、見通しを示している国際機関はEIAに限られる。EIAは世界の原油供給量について、2023年(同1.31%増→同1.64%増)、2024年(同0.92%増→同0.99%増)のいずれも上方修正したものの、OPEC加盟国と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が協調減産や自主減産の枠組みを強化するとの見方から、前年より伸びが鈍化するとの見通しが維持された。EIAの見通しをもとにすれば、世界原油需給は今年後半から来年いっぱい概ね均衡することが見込まれる。
今後の世界原油需給を見通すにあたり、需要面では中国を中心とした新興国の景気回復ペースが重要な要素となるだろう。供給面では引き続き主要産油国の動向が注目される。米国では原油生産が過去最高水準にあるほか、ロシアはガソリン輸出禁止措置を解除した。一方、OPECプラスは26日の閣僚級会合で追加減産を検討と報じられ、サウジアラビアによる自主減産の継続も検討されている模様だ。主要産油国の動向が原油需給に及ぼす影響を見極めたい。また、中東での軍事衝突の行方にも引き続き警戒したい。局地的な軍事衝突にとどまれば原油相場に及ぶ影響は限定的とみられるが、サウジアラビアやイランなど主要産油国を巻き込んだ紛争に発展した場合には、原油の需給バランスが大きく崩れるとの思惑から原油先物価格(WTI)が大きく変動する可能性があり、警戒姿勢を維持すべきであろう。
投資調査部長
山口 真弘