Today's Insight

2024/4/15 10:30作成

4月カナダ中銀レビュー:米国と同様に利下げは焦らず

■ マックレムBOC総裁は、次の一手は利下げ実施と示唆したが、早期利下げには慎重姿勢を示す
■ GDP成長率見通しと名目中立金利の上方修正などから、BOCは緩やかな利下げを志向と推測

 カナダ(加)中銀(BOC)は4月10日に理事会での決定を公表した。市場予想通り、政策金利は5.00%で6会合連続の据え置きに。今回はBOCが四半期に一度作成する金融政策報告書(MPR)が公表されたが、利下げ開始を巡って特定の時期までは示唆しなかった。ただし、総じてみると、BOCは今のところ緩やかなペースでの利下げを志向していると推測する。

 まず、金融市場で今後の利下げへ向けた具体的な方針が示されるとの期待感が高まっていたのは、前回3月MPC以降に利下げへ向けた情報が公表されていたためだろう。1つ目は、3月20日に公表された3月理事会議事要旨。理事会直後の声明と異なり、年内利下げへ向けた議論が示されていた。2つ目は、4月5日に公表された3月の加雇用統計。失業率が6.1%と2022年1月以来の高水準をつけていた。加えて、それ以前にも2月13日にフリーランド財務相は、次期予算案の編成に際して利下げ環境を整えるよう政府も行動する方針を示唆した。

 今回、マックレムBOC総裁は「景気抑制的な金融政策を必要以上に長く放置するつもりはない」とし、次の一手は利下げ実施と示唆した。一方、「コアインフレの一段の低下は、ごく最近」として、早期利下げに慎重な姿勢も示した。その背景として、今後の景気の底堅さに自信を深めた点があると考える。いわばBOCは「消極的な利下げ姿勢」を採用している状況だ。

 MPRでは、2024年のGDP成長率見通しを1.5%へ上方修正し、2025年は2.2%、2026年は1.9%と、底堅い成長が続くと予想した。また、消費者物価指数(CPI)見通しは、2025年と2026年が2.1%と、物価目標達成への自信を示した。これらは、純移民の増加と良好な米国景気が大きな要因と指摘。つまり、前者は消費者需要と労働者供給の増加に、後者は貿易を通じた加景気の下支えにつながるとの見方だ。これら外的要因の影響が大きいのは、政策姿勢の不確実性につながりそうだ。加えて、BOCが推定する名目中立金利は「2.25%から3.25%」へ、昨年4月時点(2.00%から3.00%)から上方修正されている。

 以上の点を踏まえると、BOCも米連邦準備理事会(FRB)と同様に利下げを急がず、かつ利下げペースは緩やかな調整にとどめたい意図があると推測する。現時点で当行は、BOCの利下げ開始を今年6月、利下げ実施ペースは「四半期に一度」の見方を維持しておきたい。


投資調査部
マーケットアナリスト
合澤 史登

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