Today's Insight
2025/10/31 11:15作成
原油:供給超過幅が一段と拡大する見通しに
■ 世界原油需要見通しはまちまちの修正となったが、供給見通しは一段と上方修正された
■ 供給過剰は過去最大規模に達する見込みで、WTIに上昇圧力はかかりにくい地合いが続く
国際機関による10月時点の世界原油需給見通しが出揃った。
2025年の世界の原油需要(日量)の伸びに関して、米エネルギー情報局(EIA)は需要の伸び悩みが想定より限定的だったことを反映し、108万バレル増(2024年:1億291万バレル→2025年:1億399万バレル)と前月(90万バレル増)から上方修正した。石油輸出国機構(OPEC)は130万バレル増(2024年:1億384万バレル→2025年:1億514万バレル)と前月の見通しを据え置いた一方、国際エネルギー機関(IEA)は70万バレル増(2024年:1億310万バレル→2025年:1億380万バレル)に前月(74万バレル増)から小幅に下方修正した。
原油供給シェアを回復し、市場での価格決定力を維持することを狙い、OPECプラス*¹の有志国は10月5日に11月分の原油生産量を日量13万7000バレル増やすことを決定した。サウジアラビアが大幅な増産を主張した一方、ロシアは原油安圧力を避けるべく小幅な増産を望むなど見解の相違が伝わったものの、前月と同水準の増産で落ち着いた。これを受けて、2025年の世界の原油供給(日量)見通しは一段と引き上げられた。EIAは同268万バレル増(2024年:1億319万バレル→2025年:1億587万バレル)に前月(235万バレル増)から上方修正し、IEAも同300万バレル増(2024年:1億310万バレル→2025年:1億610万バレル)に前月(270万バレル増)から見通しを引き上げた。IEA予測をもとにすれば、供給超過幅は2025年の230万バレルから2026年には400万バレルとなり、過去最大規模となる見通しとなった。
ロシアによるウクライナ進行への対応として、米財務省はロシアの石油大手2社を制裁の対象に加え、欧州連合(EU)もロシアに追加制裁を科すことで合意した。ロシアの石油輸出が減少し世界の原油需給が引き締まるとの思惑が広がる局面もみられたが、ダラス連銀による米石油・ガス企業約200社に対する四半期調査(9月時点)によれば、米国のシェールオイル企業は原油先物価格(WTI)が1バレル60ドルを上回れば新規生産で採算がとれると回答している。OPECプラスにはWTIの上昇を抑制する動機があり、WTIが上昇すれば米国の生産が拡大する余地が生じる。WTIには上昇圧力がかかりにくい地合いが続くとみられる。
*¹ OPECプラス=石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織
投資調査部長
山口 真弘



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