Today's Insight

2019/11/13 10:00作成

イールドカーブ形状の正常化は基調転換シグナルなのか

■ 10月中旬以降、世界的に長期金利上昇が顕著となり、イールドカーブのベアスティープ化が進行
■ 逆イールドが解消し、景気後退入りの回避に加え、景気底入れも織り込み始める

 10月中旬以降、世界的に長期金利(10年国債利回り)の上昇が顕著となっている。今回の金利上昇には主に2つの要因が挙げられる。一つは、10月10、11日の米中閣僚級通商協議で「部分合意」に至り、米中両国の関税引き上げに歯止めが掛かる見通しが強まった点。もう一つは、10月29、30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、景気減速を未然に防ぐために行われてきた「予防的利下げ」の終了を示唆した点である。前者は、景気後退入りを見込んだ持ち高の解消(株売り、債券買いなどのリスクオフ・トレードの巻き戻し)を促したと考えられ、長期金利上昇と株高が同時進行する発端となった。一方、後者は金融緩和姿勢の転換であり、本来、株高を抑制し得る動きである。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が早期利上げを否定、利下げ終了後も物価目標を大幅に上回らない限り政策金利を低位にとどめる意向を示し、金融市場の大きな混乱を招くことはなかった。

 前者は今後の交渉次第で反転し得るが、後者は注目に値する。米国では、FOMC以降、イールドカーブのベアスティープ化(金利上昇かつイールドカーブ傾斜化)が強まり、イールドカーブの歪みが急速に修正されている。この結果、利下げ観測が強まった3月以降常態化していた政策金利と長期金利の逆転(逆イールド)とともに、追加利下げに対する思惑から歪みが著しかった残存0-5年までの逆イールドもほぼ解消された。残存5年以下の利回り水準は、依然、政策金利上限(1.75%)を下回っているものの、米イールドカーブの形状は、期間1カ月から30年まで綺麗な順イールド(残存期間が長いほど利回りが高い状態)を取り戻している。今次景気下降局面の初期から、筆者が景気シグナルとして取り上げてきた長短金利差は、ほぼ全ての年限間で逆転現象が解消され、債券市場では、景気後退入りの回避に加えて、利下げサイクル終了や景気底入れも織り込み始めているようだ。結果発表まで時間差がある経済指標での確認にはあと数カ月を要するが、リアルタイムで観測されるこのシグナルは基調転換の初期段階を示している可能性があり、頭の片隅にとどめておくべき動きだと考えている。


投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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