Today's Insight
2025/8/22 10:00作成
米国経済:ジャクソンホール会議前のリスク点検
■ 7月のFOMC議事要旨では「インフレ上振れ」と「雇用下振れ」どちらのリスクが大きいかが焦点に
■ FRB内の意見は分かれ、見極めには雇用統計(9月5日)とCPI(11日)が待たれよう
20日に公開された7月29、30日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、米連邦準備理事会(FRB)の物価の安定と雇用最大化という二大責務に対して、「インフレの上振れ」と「雇用の下振れ」どちらのリスクが大きいか焦点となっていた。これにはFOMC参加者内でも大きく見解が割れている。大多数(majority)の参加者は、インフレの上振れリスクの方が大きいとし、数名(several)は2つのリスクはほぼ均衡していると主張。また、7月会合で現状維持に反対票を投じたウォラー理事とボウマン副議長とみられる2人(a couple of)の参加者は雇用の下振れの方がより顕著なリスクだと主張した。7月のFOMC後に公表された指標を確認すると、7月雇用統計では5・6月分の雇用者数が大きく下方修正され、労働市場の想定以上の鈍化が示された。その後のFRB高官の発言内容も踏まえると、FOMC内で雇用の下振れリスクを懸念する参加者の割合が増加した可能性はあるだろう。
一方、インフレ関連指標の上昇傾向と経済活動指標の堅調さは、インフレ高進リスクを懸念する参加者の様子見姿勢を頑なにした可能性がある。7月消費者物価指数(食品・エネルギー除くコアCPI:前年比3.1%上昇、前月比0.3%上昇)は伸びが加速。米関税引き上げの財価格への影響は依然一部にとどまっているものの、7月はサービス価格の伸びが高まった。生産者物価指数(前月比0.9%上昇)や輸入物価指数(同0.4%上昇)も堅調な伸びが続く。ミシガン大学消費者調査(速報値)の10年先インフレ期待(3.9%、前月比0.5%ポイント上昇)は、5月以降は低下が続いていたが、8月は再び上昇した。また、7月の小売売上高(前月比0.5%増)は堅調な伸びとなり、8月製造業PMI(53.3、前月比3.5ポイント上昇)も上昇するなど、経済活動関連指標は比較的しっかりとしている。こうした指標の結果はFRBの利下げへの慎重姿勢を維持させる方向に作用しよう。実際、シカゴ連銀グールズビー総裁やカンザスシティー連銀シュミッド総裁らはまだ利下げへの素地が整っていない旨を発言している。
トランプ米大統領やベッセント米財務長官による9月利下げへの圧力が続くなか、市場では本日行われるジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言に強い関心が寄せられる。ただし、上記のように9月の利下げにはFRB高官内でも意見が分かれている。さらに、9月17、18日開催のFOMCまでにあと1回ずつの雇用統計(9月5日)や消費者物価指数(同11日)の公表が控えていることから、今回の講演でパウエルFRB議長が9月利下げを決定づける発言をする可能性は高くはないとみられる。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加