Today's Insight

2019/9/12 10:20作成

米10年国債利回りは1.50%を当面の下限として意識か

■ 米実質長期金利のマイナス転落は、米10年国債利回りの反転上昇のきっかけに
■ 景気後退シグナル2-10年国債利回り逆転が解消し、米10年BEIが1.50%を下回る可能性は低下

 米10年国債利回りは、先週後半以降、上昇基調を強め、ここ1週間余りで1.42%台後半(9月3日安値)から1.75%台前半(9月11日高値)まで最大約33bp急騰している。今回の急上昇の直接の理由は、10月上旬に米中通商協議を再開することが発表され、金融市場で交渉進展期待が高まったことだが、すでに米金利の低下余地が限られつつあった点も見逃せない。

 これを端的に示すのが実質金利の動向である。米10年国債利回りから同期間の期待インフレ率を示す米10年物価連動国債のブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質長期金利は、8月半ばに約2年11カ月ぶりにマイナスに転落した。過去10年間をみると、米連邦準備理事会(FRB)の量的金融緩和政策(QE)によってBEIが高止まるなかで米10年国債利回りが低下した2011年後半から2013年前半を除けば、実質長期金利のマイナス転落は米10年国債利回りの反転上昇の契機となってきた。今回も、昨日時点ではこの先例が当てはまり、先週以降の米10年国債利回りの上昇とともに、実質長期金利もプラス圏に浮上している。

 過去10年間の10年BEIの下限は1.50%であり、8月以降の米10年国債利回りの急低下により、同利回りはすでにこの下限に到達している。一段の利回り低下には、BEIが切り下がることが必要条件となってくる。2000年以降、10年BEIが1.50%を明確に下回ったのは2008年後半から2009年前半の景気後退期終盤に限定されるため、その可能性が高まるのは、景気後退を本格的に織り込む場合に限られそうである。ただ、今月に入り、8月末に景気後退シグナルとして注目を集めた米2-10年国債利回りの逆転は解消された。8月1日の対中制裁関税第4弾の発動表明以降、米景気の急激な悪化を織り込みつつあったが、先週の米中通商協議の進展観測に伴って景気後退に対する懸念は和らいでいる。現状を踏まえると、1.50%は米10年国債利回りの当面の下限目安として比較的強く意識されそうである。今後、利回り低下基調には徐々に歯止めが掛かり、低位もみ合いに移行するのではないか。

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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