Today's Insight

2020/11/17 12:30作成

新型コロナウイルスが豪州に残したもの

■ 豪中銀ロウ総裁は講演で、新型コロナウイルス禍が豪州に与えた影響について述べた
■ 金融政策は事実に基づき雇用を重視、低金利維持、追加政策は量的緩和中心の運営となろう

 11月16日、豪中銀(RBA)ロウ総裁は、新型コロナウイルスの世界的流行による豪経済への影響と金融政策について語った。コロナの5つの痕跡として、①景気後退と労働市場への悪影響、②人口増加率の落ち込み、③不動産市場の変化、④人々のリスクに対する考え方の変化、⑤豪経済のデジタル化進展、を列挙した。①については、30年近く続いていた豪州の景気拡張が終了し、昨年末の水準回復は2021年末になるとのRBAの中心シナリオが示された。こうしたなか、2016年以降、概ね5%台だった失業率が直近9月には6.9%を記録。RBAは今後数カ月で8%近くへ悪化、2022年末時点でも6%超と予想しており、賃金や物価への下押し圧力となることを懸念する。②については過去20年の人口増加率は平均1.5%程度と、高成長を支える主因だったが、足元は1916年以来最低の0.2%に鈍化したとの試算を示した。さらに若年の移民減少で高齢化が進み、住宅市場など多くの分野に影響が出ている。今後、国境が再び解放されても状況が変わらない場合、豪経済の成長軌道は異なってくると述べた。③不動産市場は①と②の影響から、空室率上昇、価格低下などが生じており、低金利の効果は依然確認されないとした。④については、コロナ禍で人々は借入や消費について慎重になったことが指摘された。一方、⑤のデジタル化は数年かかるはずだったものが数カ月で進展した。

 こうしたなか、RBAの金融政策に変化が起きた、とロウ総裁は述べた。第1に政策運営上、これまでの「予測」より「事実」に重点を置くようになったこと、第2に今後数年は物価安定より雇用を重視すること、第3に世界的な低金利圧力が強まっており、金融危機の際のように豪州が比較的高い金利を維持することは今後2、3年難しいこと、第4に金融政策の目標が「金利」から「量」に変化したこと、の4点を挙げた。ロウ総裁は質疑応答でマイナス金利導入を強く否定した。講演内容を踏まえれば、今後は政策金利を0.1%の過去最低水準で維持しつつ、必要があれば量的緩和で対応していくことがうかがえよう。さらに、長期的な成長率、金利が左右されることから、コロナ禍後の移民の動向には注目していきたい。

投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
白鳥 朋子

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