Today's Insight

2020/9/11 12:30作成

為替相場は注視するが、ECBの責務は物価安定

■ ラガルドECB総裁はユーロ高を想定ほど強くは牽制せず、ユーロは急伸
■ 年内の追加緩和観測は根強く、目先のユーロは重いが、復興基金による財政統合期待は支援に

 欧州中銀(ECB)は10日の理事会で中銀預金金利をマイナス0.5%、主要政策金利を0.0%に据え置いた。また、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入枠を1兆3500億ユーロに維持、少なくとも来年6月末まで買い入れ、2022年末まで再投資を継続するとした。ECBスタッフによる最新経済見通しでは、2020年のGDP見通しをマイナス8.0%と6月時点(同8.7%)から上方修正したが、2021年についてはプラス5.0%、2022年は3.2%と6月時点(同5.2%、同3.3%)から小幅に引き下げた。一方、インフレ率見通しは2020年が0.3%と6月時点から変わらず、2021年は1.0%、2022年は1.3%へ引き上げた。

 ECBのラガルド総裁は、「ユーロ圏の成長見通しに対するリスクバランスは引き続き、下向きにある」と指摘。そのうえで、「ユーロ高が物価にマイナスの圧力になれば、注意深く監視しなければならないことは明らかで、理事会で広範囲に議論した」と述べた。物価安定が責務であり、為替相場は政策目標ではなく、ユーロ相場の水準についてコメントはしないと強調した。理事会内には、ユーロ上昇は経済ファンダメンタルズと概ね整合的で、現時点では1ユーロ=1.2ドルは均衡為替レートに近いとの考えや、米国との通貨戦争を避けるためユーロ高を看過したとの声も聞かれ、意見の集約は進まなかった模様。

 今後の注目は、新型コロナウイルス感染拡大で中断された、ECBの戦略見直しの再開である。ラガルドECB総裁は、景気支援と中期的な物価安定のため、潤沢な流動性が必要だと指摘しており、緩和姿勢を長期にわたり続けていく公算は大きい。物価目標値は前年比2%に近いが下回る消費者物価指数(HICP)上昇率であり、デフレに対応するための数値的目標の下限はない。米連邦準備理事会(FRB)のような平均物価目標の導入には慎重にならざるを得ず、次回10月29日もしくは12月10日開催のECB理事会ではPEPPや資産購入プログラム(APP)拡充は選択肢となろう。引き続き、マイナス金利の深掘りを協議した様子はないものの、追加緩和観測がくすぶり、目先のユーロは重いが、復興基金による財政統合への期待は支援材料に。


投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

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