Today's Insight

2026/3/11 12:00作成

日本経済:原油高が財政拡張リスクを高める

■ 原油高への財政支援の可能性から当面のインフレ急上昇と景気急減速の可能性は高くはない
■ ただし景気拡大時の財政出動がインフレ圧力を高めよう。日銀は利上げのタイミングを探る

 原油価格の100ドル/バレルを超える急騰は落ち着いたものの、中東情勢が沈静化するかは不透明な状況が続いている。原油価格の上昇が続いた場合、日本政府がガソリン補助金により小売価格に上限を設定する可能性などが考えられ、当面はインフレの急上昇やそれによる景気の急減速につながる可能性はそれほど高くはないとみられる。ただし、原油高と円安の進行はガソリン税の旧暫定税率廃止といった政府が実施している家計向け支援策の効果を弱めるだろう。そうなれば国民会議において議論が行われている食品消費減税の早期実施といった政治的圧力が強まり、財政拡張の可能性を高めよう。金融政策では、日銀による4-6月期の利上げが引き続きメインシナリオとみられるが、外生的な不確実性上昇に伴い、利上げのタイミングへの不確実性も高まっている。

 こうしたなか日本経済は潜在成長率を上回る堅調な成長をみせている。10日に公表された昨年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は前期比年率1.3%と1次速報値の同0.2%から上方修正された。主因は、設備投資(同5.4%)と個人消費(同1.1%)の上方修正だ。労働市場のひっ迫や依然として緩和的な金融政策が企業の設備投資意欲を高めているようだ。さらに物価高が続くなかでも、所得環境の改善が消費を支えた。

 こうした流れは2026年初にも引き継がれている。1月の毎月勤労統計では、実質賃金(前年比1.4%)が2024年12月以来初めてプラスに転化した。プラス転化の主因は、政府の物価高対策による消費者物価の減速ではあるが、名目賃金も安定した伸びが続く。1月の現金給与総額(同3.0%増、共通事業所ベース:同1.9%増)や基本給に相当する所定内給与(同3.0%増、共通事業所ベース:同2.2%増)は伸びを高めた。実質所得の改善を受けて、1月の実質消費活動指数(旅行収支調整済み、前月比0.4%上昇)は堅調な伸びとなったほか、2月の消費者マインド(消費者態度指数:40.0、同2.1ポイント上昇)も2019年4月以来の高水準へと上昇。さらに、2026年の春闘(第1回集計は3月23日公表)では昨年並みの賃上げが実現する見込みであり、持続的な賃金上昇による消費の下支え、および物価上昇圧力も継続しそうだ。政府の財政支援が内需を支え、2026年も日本経済は緩やかながらも景気拡大を維持するとみられる。それと同時に、景気拡大時の財政出動はインフレ圧力をさらに高め、日銀の利上げがビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)となるリスクも高めよう。不確実性上昇のなかでも、日銀は利上げのタイミングを探っているとみられる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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