Today's Insight

2025/5/14 12:20作成

ドル円の天井を見極めへ

■ ドル円は急反騰しているが、ドルインデックスはドルの反発に力強さを欠く
■ 円高意欲が薄れるなかで、ドル円はパターン上でV字ボトムを示現し天井を付けるか注目

 米国が「相互関税」の詳細を発表した4月2日以降、ドル円は150円台半ばを高値に急落し、同22日に139円台後半の安値を付けた。だが、米中貿易摩擦の緩和期待やトランプ米大統領によるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任否定、米国の円安是正要求への警戒緩和を背景にドル円は反騰。米国は5月8日に英国との貿易協定締結で、中国とは同12日に115%の関税率引き下げでそれぞれ合意すると、市場のリスクセンチメントは大幅に改善し、一時148円台後半まで急騰した。

 通貨オプション市場ではドル円の1カ月物のリスクリバーサルにおける円コールスプレッドが縮小、ドル円の下値をヘッジするための円コール買いは後退している。シカゴマーカンタイル取引所のIMM通貨先物取組では非商業部門(いわゆる投機筋)の持ち高は過去最高水準の円買いポジションが積み上がっており、解消次第では円安が一段と進むとの警戒感がくすぶる。また、日銀の追加利上げ観測は後退している一方、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測は7月から9月に後ずれし、日米金利差を意識したドル高・円安は進みやすい。

 ドルインデックスは、4月21日に3年ぶりの安値となる97.921で下げ止まると反転し、5月12日には101.977の戻り高値を付けた。日足一目均衡表をみると、①ローソク足は先行スパン(雲)から大幅に下方乖離、②転換線は基準線とほぼ同水準ながら下位に推移、③26日前の遅行線はローソク足よりも下位に推移、する「三役逆転」でドル安は継続している。ドルインデックスの57%を占めるユーロが上昇基調に戻れば、ドルは相対的に上値を抑えられる。ドル円は急落後の急反騰を示すチャートパターン「スパイクボトム(V字ボトム)」の示現を判断するうえで、4月2日高値150円48銭や3月28日高値151円21銭が天井となるか見極めることとなろう。


投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

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