Today's Insight
2025/10/28 12:00作成
日本経済:高市政権の財政政策を確認
■ 補正予算では、ガソリン税の暫定税率廃止や国防費の積み増しが中核となる見込み
■ 長期的には「給付付き税額控除」の制度設計が有効な家計支援策実施のためにも重要に
高市内閣の発足後、「責任ある積極財政」による財政拡張期待の高まりもあり、日経平均は27日に5万円台に到達した。もっとも24日の所信表明演説で、高市首相は政府債務残高対GDP比の引き下げや財政の持続可能性にも言及。人事や連立協議を踏まえれば、予算規模の大幅な拡大までは想定されず、財政規律は維持されるとみられる。本稿では、今後協議が見込まれる財政政策について、簡単に確認したい。
今後の政策スケジュールとしては、例年通り、秋から年末にかけて2025年度補正予算や2026年度当初予算が組まれることになる。2025年度の補正予算では、即効性の高い物価高対策であるガソリン・軽油税の旧暫定税率の廃止、インフレ調整を目的とした医療・介護の公的価格の引き上げ、自治体向け交付金などに加え、国防費の増額が盛り込まれよう。所信表明演説では、国防費のGDP比2%到達の2027年度からの前倒しを表明。国防費は2025年度に8.7兆円まで増加し、GDP比1.8%に達する。ガソリン税の暫定税率廃止で1.5兆円程度の減収が見込まれる一方、国防費は1.1兆円を超える支出増となる見込みであり、この2つが補正予算の中核となりそうだ。2026年度当初予算における政策はまだはっきりとはみえないものの、高市氏が成長戦略の肝とした、経済安保や食料安保、エネルギー安保などの「危機管理投資」が盛り込まれよう。注目される所得税の「年収の壁引き上げ」は、所得制限が付いたうえでの非課税ラインがすでに160万円に引き上げられている。国民民主党が掲げる178万円にまで踏み込めば、追加的に5-6兆円の財源が必要になるとみられるが、自民党は全面的な引き上げには慎重なようにみえる。国民民主党との今後の議論が注目されよう。
長期的な課題として注目したいのが、「給付付き税額控除」の制度設計だ。これは、所得税額から一部を差し引いて家計への還元を行う税額控除と、税額が十分ではない低所得者への現金給付を組み合わせた制度だ。給付の必要性を所得の情報と結び付けて、必要な低所得者に手厚い支給を行い、必要性の低い層には給付を制限する仕組みを作ることを目指す。ここ数年、「住民税非課税世帯」を対象とする家計向けの給付策がたびたび実施されたが、支給対象に保有資産の多い年金世帯が多く含まれることになり、その効果が疑問視されてきた。議論に時間を要するため2026年度当初予算に盛り込むことは難しいが、長期的にその制度設計やインフラ構築は効率的な家計支援策実施のためにも非常に重要となる。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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