Today's Insight

2024/7/22 10:30作成

中国:2029年までの改革指針を提示

■ 第20期三中全会では、「改革の全面深化」による「中国式現代化」を基本方針として採択
■ 2029年の完了を目指す改革案が提示され、中期的に構造改革を推進する方向性が示された

 中国では、15日から18日に現在の共産党指導部の下での中期的な経済政策の基本方針を協議する第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が開催された。18日に国営メディアに掲載された声明で、「改革の全面深化」による「中国式現代化」の推進が今後の政策の基本方針として採択されたことが確認された。

 「中国式現代化」に向けて、2035年までに高度な社会主義・市場経済体制を確立させ、2050年前後に社会主義強国化の完了を目指すとともに、これらの方針に向けて2029年(中華人民共和国成立80周年)までに改革を実現することが目標に設定された。改革には、高度な社会主義・市場経済体制の構築、人民の生活品質の向上(分配・雇用・社会保障・公共サービスの強化)、「美しい中国」の建設(グリーン経済推進)、「平安中国」の建設(国家安全保障の強化)などが挙げられ、あわせて統治体系を見直し、中国共産党による執政・指導を強化することも記された。

 「中国式現代化」の最重要課題には質の高い経済発展が挙げられ、具体策として供給側構造改革、「新しい質の生産力」強化、実体経済・デジタル経済の融合、サービス業発展、インフラ整備、産業サプライチェーンの強靭化が示された。その他の改革には、(1)非公有制経済(民間企業)をリードするために公有制経済(国営企業)を強化し、公平な市場競争の下で民間企業と国営企業の優位性を相互に補完し共に発展していくこと、(2)マクロ経済をコントロールするため政府によるガバナンスを強化し、財政・租税・金融の一体的な改革を進めること、(3)都市部での工業化や都市化の推進とともに、都市と農村の格差を縮めるために農村部での土地制度改革を進めること、などが挙げられた。

 声明は総花的・抽象的で2029年までに改革完了を目指す点以外に新たな情報は乏しいため、中国経済の成長期待を高める内容とは言い難いものの、中期的に改革を進めていく方向性は認められる。また、地方財政や地方融資平台(LGFV)の改革など、構造改革とともにさらなる悪化が想定される経済課題への対応も考慮されていることが確認された。中国政府は、短期間で急速に改革や課題処理を進めるよりも、景気の急激な落ち込みを回避しつつ時間を費やして構造改革や経済課題への対応を進めることを志向していることがうかがえる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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