Today's Insight

2025/8/4 10:15作成

米国株:4-6月期決算 中間レビュー

■ 米主要企業の4-6月期決算は全体としては良好な結果と評価されよう
■ 景気後退懸念が高まる状況に至らない限り、利下げが株価を下支えか

 S&P500構成企業のうち330社が先週末までに4-6月期決算発表を終えた。金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計によれば、このうち81%の企業が市場予想を上回る一株あたり利益(EPS)を公表した。EPSは前年比11.2%増(発表済み企業は実績、未発表企業は市場予想)と、決算発表直前にあたる7月初めの市場予想(同5.8%増)を大きく上回ると見込まれ、全体としては良好な結果と評価されよう。セクター別では、コミュニケーション・サービス(CS、同31.8%増→43.5%増)、情報技術(IT、同17.7%増→22.5%増)、金融(同2.7%増→12.8%増)、一般消費財(同3.5%減→6.3%増)、などが業績改善のけん引役になるとみられる。ハイテク大手の決算では巨額の人工知能(AI)関連投資を継続する方針が示され市場では好感されたものの、半導体企業への好影響の波及は概ね想定通りとみなされた模様だ。S&P500の向こう1年予想株価収益率(PER)は22倍と相当に割高な株価水準を保ちつつ、予想EPSの改善がけん引する形で過去最高値を更新してきた。

 先行きのEPSは7-9月期(同8.4%増)、10-12月期(同6.9%増)と当面はやや伸び悩むことが想定されているものの、2025年は9.6%増と7月初め(8.5%増)からは上方修正されている。米政権の関税引き上げの影響によるコスト高を背景とした増益率の低下や個人消費減速への懸念が一巡しつつあることが示唆される。ただ、米実質GDPでは、関税引き上げを前に1-3月期に積み上げられた在庫が4-6月期に取り崩されたことが示されている。関税率が定まりつつあるなか、当面は7-9月期以降に生じる関税の悪影響を見極める局面となるだろう。

 こうしたなか、先週末に公表された7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比7.3万人増と市場予想(同11.0万人増)を下回ったほか、5月分(同13.9万人増→14.4万人増→1.9万人増)、6月分(同14.7万人増→1.4万人増)が大幅に下方修正された。労働参加率の低下(62.3%→62.2%)により失業率の上昇(4.1%→4.2%)は限られたものの、米連邦準備理事会(FRB)が労働市場は底堅いとしてきた認識の修正を迫られかねない結果と受け止められ、米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて37%まで低下した市場の9月利下げ確率は、雇用統計の結果により90%まで急上昇している。景気減速懸念は強まるものの景気後退には至らないとみられ、利下げ期待が下支えとなり、株価は値幅を伴いつつ高値圏で高下すると想定している。


投資調査部長
山口 真弘

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