Today's Insight
2024/9/5 12:10作成
9月カナダ中銀レビュー:10月の利下げ実施も示唆
■ BOCは6月と7月に続く利下げ実施を決定したうえ、政策姿勢は変わっていない点が確認できた
■ 直近のBOCは金融政策姿勢を巡る透明性向上を図っているとみられ、市場の安定につながろう
カナダ(加)中銀(BOC)は9月4日に理事会での決定を公表した。BOCは6月、7月に続いて3会合連続で政策金利引き下げを決定。政策金利は2022年7月以来となる4.25%となった。為替市場では事前予想通りの結果だったことから、カナダドルの反応は限られた。
今回は、BOCが前回7月理事会で示した政策姿勢*1を引き継いでいることが確認できたと考える。つまり、インフレ圧力が鈍化している点を考慮しつつ、経済成長の下振れリスクを重視するなかで利下げを志向する、との方針だ。また、マックレムBOC総裁は「もし、7月にBOCが示した物価見通しが実現していけば、利下げ実施を予想するのが妥当だ」と述べ、次回10月理事会での利下げ実施に含みを持たせた。そうした結果、本稿執筆時点で、短期金融市場では今年10月と12月理事会での連続利下げ実施が織り込まれている。
直近の経済指標では、物価の鈍化傾向や景気と労働市場の弱さが確認されていた。BOCはこれらの動向について、声明で直接指摘している。8月20日に公表の7月消費者物価指数(CPI)上昇率は、総合が前年比2.5%と40カ月ぶりの低水準だったうえ、BOCが重視するコアはCPI中央値とCPIトリム値がともに鈍化した。ほかにも、同30日に公表の4-6月期実質GDPでは、前期比年率2.1%増とBOCの予想値(同1.5%増)を上回っていたが、その成長を支えたのは政府支出と設備投資であり、家計部門の弱さが示された。また、同9日に公表の7月雇用統計では、雇用者数が前月比2800人減少と、労働市場の弱さが示されていた。
直近のBOCの情報発信を改めて振り返ると、金融政策姿勢を巡る注目点は明確になってきた印象がある。これは、今年6月11日に国際通貨基金(IMF)が、BOCに対して金融市場とのコミュニケーション改善を提言したことが大きいと考える。BOCが透明性の向上を図っているとすれば、金融市場の安定につながるだろう。次回10月理事会では四半期に一度作成される金融政策報告書(MPR)が公表されるが、そのなかで来年に向けた政策方針が示されると期待したい。なお、次回10月理事会までには、9月6日と10月11日に雇用統計(8月と9月)、9月20日に小売売上高(7月)、9月27日に月次GDP(7月)、などが公表される。
*1 詳細は、PRESTIA Insight 2024.07.25 「7月カナダ中銀レビュー:利下げへの積極性が浮き彫りに」をご参照
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登