Today's Insight

2024/7/23 13:30作成

豪ドル安が意味するもの

■ 円高や人民元安に加えて米ドル安が反転すれば、豪ドル安が一段と進む可能性も
■ 豪ドルの一段安は、4-6月期以降の消費者物価指数や雇用情勢によるRBAの政策判断に依拠

 11日以降、豪ドル安の進行が顕著となっている。ニュージーランド(NZ)中銀(RBNZ)が11日の金融政策会合で政策金利を据え置いたものの、市場では利下げに向けて舵を切ったと受け止められ、金利差縮小を意識した豪ドル高・NZドル安が進行。中国では6月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る伸びにとどまるなかでも、豪ドルは高止まりの様相を呈した。ただ、豪州発の新規手掛かりに乏しく、本邦当局による為替介入を巡る思惑が広がると円高に拍車が掛かり豪ドルを押し下げた。先週は河野デジタル担当相、昨日は茂木自民党幹事長が日銀に円安是正を求める発言をし、円高圧力がさらに強まっている。

 15日以降は中国で公表された4-6月期の実質GDPが政府目標の5%前後を下回り、同国の景気減速感が強まるなか資源需要回復を見込めず、鉄鉱石・原油先物価格も下落基調をたどり豪ドルの重しに。第20期中央委員会第3回全体会議では大規模な景気刺激策は打ち出されなかったが、昨日、中国人民銀行は期間7日のリバースレポ金利を1.8%から1.7%、銀行貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(1、5年物)を10ベーシスポイント引き下げた。声明では「実体経済への支援改善のため、カウンターシクリカル(景気変動抑制的な)調整を強化すると表明。予想外の利下げを受けた人民元安進行につれて、豪ドル米ドルは約3週間ぶりの0.66米ドル台前半、豪ドル円は約5週間ぶりの103円台後半まで下げを広げている。

 円高や人民元安に加えて米ドル安が反転すれば、豪ドル安が一段と進む可能性もある。だが、本質的には豪中銀(RBA)による金融引き締め姿勢に依拠していると判断される。豪労働市場には緩みが生じ始めており、31日公表の4-6月期CPIはRBAの政策の道筋を探る試金石となり得る。コアインフレ率として注目される中銀トリム平均値の上昇率が1-3月期(前期比1.0%)から鈍化すれば、利上げ観測は後退しようが、年内の利下げ観測を高めるかは、引き続き7-9月期以降の物価・雇用情勢も注視することになる。


投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

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