Today's Insight
2025/4/24 11:50作成
直近のドル円相場で話題となっている材料
■ ドル円は一時140円割れまで下げ幅を拡大するなか、日米金利差と投機筋の動向が話題に
■ 4月入り後の為替相場の経緯を踏まえると、当面は米国債のタームプレミアムがポイントか
ドル円は4月22日に昨年9月以来の140円割れを示現するまで下げ幅を拡大した。そうしたなか為替市場では、(1)日米金利差の拡大、(2)投機筋の円買いポジションの積み上げ、が話題になるケースがみられた。本稿ではこれらの話題について簡単に整理しておきたい。
米政権が相互関税の詳細を発表した4月2日以降、日米金利差が拡大するなか、ドル円は同日高値150円48銭から下げ基調が強まっていた。この値動きの背景は、直近の米国債利回り上昇を主導したのがタームプレミアム拡大だったためと推測する。一般的に国債利回りの変動要因は、政策金利見通しとタームプレミアムに分けられる。従来、ドル円と日米金利差の連動性が高かったのは、米国債利回りの変動に際して政策金利見通しの影響の方が強かったためとの認識している。さらに、米政権からの圧力で米連邦準備理事会(FRB)の独立性を損なう恐れが意識されたことで、タームプレミアム拡大とドル安の流れが連動したとみる。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータで一部投機筋の売買を反映するとみられる非商業部門を参照する。円買いポジションのみをみると、2月初旬に10万枚台へ乗せた後、最新4月15日終了時点で約19.8万枚まで一段と積み上がった。日銀が利上げサイクルに入ったとはいえ、現時点の日米政策金利差は約4%。そして、円買い・ドル売りのポジション保有は金利差の分、日々損失がかかるポジション(ネガティブ・キャリー)となる。現在の金利環境では、ドル円の値動きが小さければ円買いポジションは長期保有に適さないと解釈されてきた。
筆者は4月の為替市場を、米国債のタームプレミアム拡大とドル安がみられるなか、欧州通貨や円が受け皿として買われて(1)に逆行したドル円下落につながり、その結果として(2)に至ったと整理している。当面はタームプレミアムの動向がポイントとなろう。直近のタームプレミアム拡大につながった米政権の動向を巡る不透明感は早期の完全な払しょくが難しいため、タームプレミアム縮小とドル安の明確な反転はまだ時間が必要ではないか。また、現時点で投機筋が保有する円買いポジションの多くは、金利差分の損失を補うだけの含み益が相応にあると推測する。他方で、仮にタームプレミアムが縮小に転じれば、日米金利差とドル円の連動性が回復へ向かう可能性は高いだろう。ドル安が落ち着けばドル円下落の一服を通じて、ネガティブ・キャリーを嫌う投機筋が徐々に円買いポジションを解消するケースも想定できよう。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登