Today's Insight

2024/4/23 10:30作成

日本株:日銀短観は企業の業績見通し慎重化を示唆

■ 日銀短観と市場の利益見通しが乖離しており、株価の重しとなるおそれ
■ 日米半導体・ハイテク大手の決算内容が株価調整一巡の手掛かりとなるか

 日銀短観3月調査では、大企業・全産業ベースの2024年度売上高は前年比0.9%増と、前年度(同2.3%増)から伸びが鈍化し、小幅な増益見通しが示された。また、経常利益は同3.7%減、純利益は同3.8%減と減益見通しが示された。このうち、増益見通しとなったのは概ね内需業種であり、本決算で示される期初会社計画も輸出企業を中心に減益見通しとなる公算が大きい。輸出企業(大企業・製造業)の想定為替レート平均値は、ドル円が140.40円、ユーロ円が151.07円となっており、輸出企業が実勢よりも保守的な為替前提の元で業績見通しを慎重化している模様だ。一方、TOPIXの2024年度予想一株当たり利益(EPS、LSEG I/B/E/S集計、19日時点)は9.8%増と想定されている。企業業績見通しについて、日銀短観と市場参加者の間で乖離がみられ、今後本格化する主要企業の本決算および2024年度の業績ガイダンスを通じて市場のEPS見通しが下方修正されれば、株価の重しとなるだろう。

 TOPIXの向こう1年予想株価収益率(PER)は2012年以降、概ね12倍から16倍を上下限として高下しており、このレンジの中間にあたる14倍を境に、12-14倍の割安レンジと14-16倍の割高レンジの間を行き来している。19日時点で14.3倍と、3月下旬(15.3倍)から調整しつつあり、割高感は薄れてきている。これまではPER上昇の持続性を欠き、割安レンジに舞い戻る動きを繰り返してきたが、今回は割高レンジで持続的に推移する期待を抱かせる材料がある。本決算を通じて、各企業が「株価などを意識した経営への取り組み」を本格化させ、株主資本利益率(ROE)の改善につながれば、PERの水準の切り上がりは妥当と解釈される。また、賃金と物価の好循環に伴う企業業績の拡大期待もPERの押し上げに寄与するとみられる。

 TOPIXの向こう1年予想EPSをもとに割高レンジの水準を試算すると、PER14倍はおよそ2570ポイント、PER16倍は2933ポイントとなる。現在のNT倍率14.2倍をもとに日経平均に引き直すと、それぞれ36447円、41653円となり、これらの水準を当面の上値・下値メドと引き続き想定している。半導体セクターを中心にハイテク大手が市場予想を上回るEPSと業績見通しを示し、利益成長への市場の期待が正当化されてきたこれまでの流れが継続すれば、株価調整が一巡する手掛かりとなるだろう。今週から来週にかけて公表される日米半導体・ハイテク大手の決算発表を注視したい。


投資調査部長
山口 真弘

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