Today's Insight

2025/1/9 12:30作成

米国:政策判断可能な状況まで政策調整は見送りか

■ FOMC議事要旨で、多くの参加者から今後数四半期の政策判断を慎重に行う必要性が示された
■ 今後は利下げペース減速がメインシナリオだが、判断可能な状況まで政策調整は見送られよう

 8日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(昨年12月17、18日開催分)が発表された。同FOMCでは3会合連続の利下げ(0.25%利下げ)が決定されたものの、クリーブランド連銀のハマック総裁が政策金利維持を主張して反対票を投じ、反対意見の存在が確認されている。また、声明文では「政策金利の誘導目標レンジの追加的な調整の程度や時期を検討するにあたり」と従来の政策ガイダンスの表現が微修正された。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のFOMC後の会見では、様々な表現を用いて今後の政策調整をより慎重化させることが示唆され、上記の声明文の修正に関しても政策調整ペースを緩める段階に近づいていることを意図したものであると明言されていた。

 FOMC議事要旨では、すべて(all)の参加者が貿易や移民などに影響を及ぼす経済政策の不確実性が高まったと判断していることが確認された。多く(a number of)の参加者がある程度の仮定を見通しに反映させたが、見通しに反映していない参加者や態度を明らかにしなかった参加者も存在した。ほぼすべて(almost all)の参加者が物価見通しの上振れリスクが高まったと判断し、多く(many)の参加者が様々な要因から今後数四半期の金融政策決定に慎重なアプローチ(careful approach)が必要であると提言したことも明らかとなった。

 昨年12月に更新された「経済見通し概要(SEP)」では、参加者の2024-26年の物価見通しや見通し期間全般の政策金利見通しが昨年9月時点から引き上げられており、メインシナリオとしては今後利下げペースを緩めていく方針であることが読み取れる。ただし、各参加者の見通しの前提条件は一致しておらず、見通し自体の信頼性は必ずしも高くない。議事要旨で「経済活動や物価の見通しの変化を評価するために時間をかけられる」とFOMCの認識が示された点を踏まえると、今後は政策調整ペースを機械的に減速させるよりも、経済・物価に対する影響が見通せるようになり何らかの政策判断が可能な状況となるまで金融政策の追加調整が見送られる可能性の方が高いだろう。中立金利に相当するFOMC参加者の長期的な政策金利見通しは段階的に引き上げられており、今後の金融政策については、これまでのような利下げ継続を前提とした利下げ幅やペースの調整も含めて再検討されると考えられる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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