Today's Insight
2025/7/22 11:25作成
原油:国際機関は供給超過見通しを一段と強めた
■ 国際機関は世界原油需給が供給超過に傾くとの見方を一段と強めた
■ 原油需給は緩和しやすく、WTIに上昇圧力がかかりにくいなか、需給変動要因を注視
国際機関による7月時点の世界原油需給見通しが出揃った。
2025年の世界の原油需要(日量)の伸びに関して、米エネルギー情報局(EIA)は80万バレル増(2024年:1億274万バレル→2025年:1億354万バレル)で、石油輸出国機構(OPEC)は129万バレル増(2024年:1億384万バレル→2025年:1億513万バレル)で、それぞれ前月の見通しを据え置いた。国際エネルギー機関(IEA)は、70万バレル増(2024年:1億300万バレル→2025年:1億370万バレル)に前月(80万バレル増)から小幅に下方修正した。トランプ米大統領の関税政策の影響を受けて、新興国を中心に世界経済の悪化懸念により需要が伸び悩むとの見方が反映された。
2025年の世界の原油供給(日量)の伸びについて、EIAは181万バレル増(2024年:1億280万バレル→2025年:1億461万バレル)に前月(138万バレル増)から大幅に上方修正し、IEAも210万バレル増(2024年:1億300万バレル→2025年:1億510万バレル)に前月(180万バレル増)から上方修正した。OPECプラス*¹の有志国は5日、8月分の生産を日量54万8000バレル増やすことを決定した。5月以降続けてきた増産幅(同41万1000バレル)を一段と拡大することとした。原油市場での価格決定能力を維持するとともに、イランとイスラエルの軍事衝突による供給減に対応することを狙った模様だ。これらを受けて、EIA、IEAともに2025年の世界原油需給が供給超過になるとの見方を一段と強めた格好となっている。
原油先物価格(WTI)は上昇圧力が強まりにくい需給環境のなか、7月に入り、中東情勢が小康状態を保ったことで65-70ドルを中心として方向感なく推移した。ホリデーシーズンでガソリン需要が高まりやすい季節性があるものの、米国と主要貿易相手国との通商協議の期限が8月1日に迫り、原油需要への影響を見極めにくくなっている。供給面では、OPECプラスの増産の動向が引き続き注目される。また、米政権がロシアに対してウクライナとの停戦合意に至らなければ制裁を科すと発表したが、制裁発動までに50日の猶予期間が設けられている。世界原油需給が緩和しやすいとの見方が強まるなかで、これらの原油需給の変動要因の行方を注視したい。
*¹ OPECプラス=石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織
投資調査部長
山口 真弘