Today's Insight
2025/12/22 11:30作成
日本:12月日銀金融政策決定会合レビュー
■ 日銀は政策金利を0.75%へ引き上げ、声明文では追加利上げに前向きとの観測も高まった
■ 総裁記者会見では慎重な利上げ姿勢、円安が進めば早期利上げ観測が高まる可能性も
日銀は12月18、19日に金融政策決定会合を開催し、政策金利を約30年ぶりの高水準となる0.75%への引き上げを決定した。利上げ自体は事前に織り込み済だったことから、金融市場の注目は今後の利上げ実施ペースとその最終到達点を巡る植田日銀総裁の発言だった。
結果発表当初は、公表された声明文を受けて日銀が追加利上げに前向きな姿勢に変化したとの観測が高まった。具体的に(1)利上げ決定が全会一致だったこと、(2)物価見通しに対して2名の審議委員が反対したこと、(3)今回の利上げを実施後も実質金利は「きわめて低い水準にある」と評価されたこと、(4)今後も「金融緩和の度合いを調整していく」姿勢を維持と示したこと、の4点を確認したことがその背景とみる。そうしたなかで、結果発表から総裁記者会見までの間は円安進行が抑えられていた面もあった。
一方で、総裁記者会見での発言内容を踏まえると、日銀は慎重な利上げ姿勢を維持との解釈が広がった。金融市場では上記(2)から、日銀が推計する中立金利のレンジ下限を引き上げたと総裁が言及するとの見方が浮上。しかし、植田日銀総裁は中立金利について「今後必要に応じて再推計を試みる」と述べ、従来見通しからの修正は示されなかった。また、今回の利上げへつながったポイントの一つとして、来年の企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低下したため、などとした。したがって、追加利上げ決定には2026年春闘の実現性の確認が必要との見方から、今後は賃金関連の統計への注目度が高まりそうだ。
印象的だったのは、植田日銀総裁が記者会見に臨むスタンスは従来と同じく「不確実な点に言及しなかった」点である。日銀が意識しているであろう金融市場との円滑な対話では、2026年も金融市場と真正面から向き合う正攻法の姿勢を保つと解釈する。そうしたなか、今後の円安進行は輸入物価上昇を通じて基調的物価の上昇につながりやすいと複数の日銀審議委員から意見もあったと、総裁は言及した。総裁記者会見終了後から円安が進行し、ドル円は11月高値(157円89銭)へ接近している。来年前半にかけてドル円が円安主導で2024年高値(161円97銭)付近まで近づけば、金融市場では早期利上げ観測が高まりやすくなろう。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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