Today's Insight

2023/11/24 11:00作成

米国:カウンターシクリカル的コミュニケーション戦略

■ FRBはこれまでの金融引き締め効果の見極めへ政策姿勢を移行
■ ただし金融市場で利下げが織り込まれるほど、引き締め的な政策コミュニケーションに傾く

 21日に発表された10月31日、11月1日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、今後の政策を慎重に進め、毎会合、経済の見通しやリスクに対する今後の情報やそこからの示唆に基づいて政策判断を行っていく方針にすべての参加者が合意し、インフレが目標水準に向けて明確に鈍化するまでしばらくの間引き締め的な政策姿勢にとどめることが望ましいと考えていることが明らかとなった。利上げ見送りの一因とされた長期金利上昇に起因する直近数カ月の金融環境の著しい引き締まりに関しては、多くの参加者が、この状況が継続するのか、また金融引き締めやその他政策要因を反映したものなのか不確かであると認識していることも確認された。

 FOMC以降、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長などが引き続き追加利上げの必要性を示すなか、追加利上げを主張していたサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が利上げ見送りへ主張を改め、FRB高官の意見が分かれている。ただ、各々の主張に程度差がみられるなかでも全体的にFOMC議事要旨で明らかとなった見解に大きな変化はなく、引き続き、既往の金融引き締め効果の見極めが基本的な政策姿勢であることがうかがえる。また、FOMC後に発表された10月分の指標でもインフレ鈍化傾向や労働市場の軟化が確認されており、経済がFRBの見通し通りに推移するなかで、経済データもこの政策姿勢を肯定している。

 FOMC前後での最も大きな変化は、長期金利の低下によって金融環境の著しい引き締まりが和らいでいる点である。市場金利上昇による利上げ代替効果の大部分はすでに失われているため、市場金利低下がインフレ再加速や経済需給ひっ迫につながる兆しがみられる場合はFRBの政策対応を求められやすくなる。

 金融市場では、FRBの利上げ停止に加えて来年半ば以降の複数回の利下げが織り込まれ、FRBの方針との乖離が広がっている。金融市場で早期利下げが織り込まれるほど、実質金利低下を通じた金融引き締め効果は弱まるため、FRBは引き締め的な政策姿勢を堅持せざるを得ない状況となる。当面はカウンターシクリカル的(金利変動抑制的)な政策コミュニケーションが続くことが想定される。


投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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