Today's Insight

2024/7/24 11:15作成

原油:目先は需給が引き締まりやすい地合いに

■ 目先は原油需給が引き締まりやすい地合いにあり、WTIは下支えされよう
■ 米大統領選の行方により原油需給が変化するとの思惑が変化し、WTIに影響を及ぼす見込み

 国際機関による7月時点の世界原油需給見通しが出揃った。世界の原油需要の伸びに関して、石油輸出国機構(OPEC)は引き続き底堅い経済成長を見込み、2024年を日量225万バレル増(2023年:1億221万バレル→2024年:1億446万バレル)、2025年を同185万バレル増(1億631万バレル)と、それぞれ予想を据え置いた。米エネルギー情報局(EIA)は2024年を同111万バレル増(2023年:1億180万バレル→2024年:1億291万バレル)に下方修正した一方、2025年を同177万バレル増(1億468万バレル)に上方修正した。国際エネルギー機関(IEA)は2024年を同100万バレル増(2023年:1億210万バレル→2024年:1億310万バレル)に、2025年を同90万バレル増(1億400万バレル)にそれぞれ下方修正した。緩やかな需要拡大との見方は一致しているが、OPECが中国・インドの経済成長を背景に相対的に楽観視している一方、IEAは中国の内需低迷やエネルギー効率の改善、電力源の電動化などを背景に原油需要の伸びが緩やかになるとの見方を維持している。

 世界の原油供給の伸びについては、EIAはOPECプラス*¹が6月の閣僚級会合で協調減産の枠組みを2025年末まで継続すると決定したことを受けて、2024年を同64万バレル増(2023年:1億179万バレル→2024年:1億243万バレル)に下方修正した一方、2025年を同217万バレル増(1億460万バレル)に上昇修正した。IEAは2024年を同80万バレル増(2023年:1億220万バレル→2024年:1億300万バレル)に、2025年を同180万バレル増(1億480万バレル)にそれぞれ据え置いた。これらに基づけば、世界原油需給に関して、2024年は需要超過が見込まれ、2025年はEIAが小幅な需要超過、IEAが供給超過を想定していることとなる。

 市場では、8月1日に開催されるOPECプラス合同閣僚監視委員会(JMMC)で現行の生産方針の変更を勧告する公算は小さいとみられており、自主減産は10月以降段階的に縮小される見込みである。目先は夏場の休暇やハリケーンなども相まって需給が引き締まりやすい地合いにあり、原油先物価格(WTI)は下支えされよう。なお、トランプ前大統領が再選された場合、世界的な脱炭素化の流れから離脱し、米国の原油供給量が増加することが想定され、OPECプラスの減産を巡る歩調が乱れる可能性がある。一方、減税等による米景気回復期待が高まれば、原油需要増への思惑が強まることとなろう。米国の要因で原油需給を巡る思惑が左右される展開となる可能性があり、警戒したい。

 *¹ OPECプラス=石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織


投資調査部長
山口 真弘

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