Today's Insight

2020/11/18 13:10作成

ワクチン開発進展により金融相場が増長する可能性も

■ 新型コロナワクチン「普及」のハードルは非常に高く、現時点での市場の反応は時期尚早
■ しかし、景気見通しにおける主要中銀と市場参加者のかい離が、金融相場を増長させる可能性

 11月に入り、新型コロナウイルスワクチンの開発期待が急速に高まった。9日には米製薬大手と独バイオ医薬ベンチャーの共同開発によるワクチンが臨床試験で高い有効性が確認されたと伝わったうえ、16日には米バイオ医薬大手からも同様の発表があった。ワクチンが普及すれば景気回復が早まるとの期待から米株式市場では景気敏感株を中心に買いが広がり、NYダウは10月末から一時13%超上昇し、3万ドルの大台に迫る場面があった。

 しかし、例えば季節性インフルエンザと違い、新型コロナ感染症では無症状病原体保持者が少なくない割合で存在する。つまり、感染と発症が直結していない。そのうえ、厚生労働省によれば、症状が明らかになる前から感染が広がるおそれがあるとされている。したがって、ワクチンを接種するためにクリニック等に人が集まることで、集団感染を発生させてしまうことになりかねない。安全性や供給量などは指摘するまでもないが、それ以外にも様々な問題があり、ワクチン「普及」のハードルは、「開発」よりもはるかに高いといえよう。

 欧州中銀(ECB)が12日に開催したバーチャル会議のパネル討論会では、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が新型コロナワクチンの良好な臨床試験結果について、「自信を持って短期的な(経済への)影響を評価するのは早すぎる」と述べ、ECBのラガルド総裁や英中銀(BOE)のベイリー総裁もそれに同調した。一方、今後もワクチン開発の進展が伝われば、株式市場では多少なりとも景気回復ペースの加速を織り込んでいくと想定されよう。つまり、景気見通しについて、主要中銀と市場参加者の見方は次第にかい離が大きくなることが見込まれる。現時点で、景気回復の早期化を見込んで景気敏感株を物色する動きは時期尚早とみる一方、両者のかい離によって金融相場がさらに増長する可能性があると筆者は考える。こうした点を踏まえ、今後、主要中銀が景気を見通すうえで、どの段階で、どの程度、ワクチン開発の進展を織り込むのか、非常に困難な判断であり、注目しておきたい。



投資調査部
シニアマーケットアナリスト
佐溝 将司

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