Today's Insight
2025/5/16 11:40作成
5月RBAプレビュー:先行きの慎重姿勢は維持しよう
■ 5月理事会で政策金利は3.85%へ引き下げられる見通しだが、金融市場では既に織り込み済
■ RBAは(1)豪州は物価と雇用が良好な状況、(2)米関税措置の影響は軽微、との見方を示そう
豪中銀(RBA)は5月19、20日に理事会を開催する予定。市場予想では、政策金利を4.10%から3.85%へ引き下げる見通しが優勢である。RBAは5月理事会で金融政策報告(SMP)の公表と合わせて今後の政策姿勢を明確にするとみられ、市場の注目は高い。ただ、今理事会での0.25%の利下げ決定自体は既に織り込み済で、金融市場の反応は乏しいだろう。
4月30日に公表された1-3月期の豪消費者物価指数(CPI)では、RBAがコアインフレ率として注目するトリム平均CPIの前年比上昇率は4月理事会時点でRBAが予測した通りに2.9%へ鈍化し、2021年後半以来初めてRBAの物価目標(同2-3%)内に戻った。豪短期金融市場でも、同指標発表以降に5月理事会での利下げ観測が一段と高まっていた。
今回の理事会でも、RBAは積極的な利下げ姿勢を打ち出さないとみている。4月理事会の開催は米「相互関税」の詳細が公表される前だったが、議事要旨では少なくとも積極的な利下げ方針は確認されていなかった。そのうえで今回のポイントは、(1)物価や労働市場の動向が概ねRBAの予想通りで良好な状態にあること、(2)米関税措置を巡って深刻化する可能性が低下したこと、の2点とみている。(1)2月雇用統計は不振な結果だったが、3月と4月の同統計は市場予想を上回る改善をみせた。そのため、2月の不振が一時的とのRBAの見方は妥当である可能性が高い。また、昨年10-12月期の豪実質GDPは前年比1.3%増へ回復するなど、豪景気はプラス成長を維持している。(2)豪州はもともと対米貿易赤字を抱えるため、米政権からの直接的な圧力は弱いと想定されていた。加えて、5月10-11日の米中閣僚級協議を経て米中貿易摩擦への警戒が大きく後退。4月理事会時点でRBAが示した「豪GDP成長率とインフレ率への影響は比較的軽微」の可能性が高まっていると言える。
以上から、RBAは現時点で豪景気動向が概ね見通し通りと評価したうえで、米政権の関税政策による影響を見極める方針から利下げへ慎重姿勢を維持と予想する。豪州では13日にアルバニージー政権(2期目)が発足し、米国との交渉が本格化してこよう。今回の利下げ決定を含め年末までに政策金利が0.75%程度引き下げられるとの見方は変わらない見込み。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登