Today's Insight
2024/9/6 11:50作成
日本株:二番底を警戒も、底割れには至らないとみる
■ 米景気悪化懸念と米半導体大手を巡る不透明感で、日本株は二番底が警戒される地合いに
■ 内需関連株は相対的に底堅く、ドル円が大幅下落とならない限り、底割れには至らないとみる
今週に入り、日本株は二番底が警戒される値動きとなっている。3日に公表された8月の米ISM製造業景況感指数が前月から改善(46.8→47.2)したものの市場予想を下回り、サブインデックスのうち新規受注や生産などが悪化したことで、米景気減速懸念が再燃したことがきっかけとなった。こうしたなか、4日に公表された7月の米求人労働異動調査(JOLTS)で求人件数が前月から大幅に減少(791.0万件→767.3万人)し、失業者一人当たりの求人件数が1.07件と新型コロナ禍前を下回る水準まで低下した。労働需給の緩和が進み利下げ幅の拡大観測が強まったことは株価を下支えした一方、米景気減速懸念を強める内容となった。
足元までのTOPIXの値動きを振り返ると、8月の急落後の反発局面(8月5-16日)では、電機・精密や機械などの半導体関連、自動車・輸送機などの輸出関連といった外需関連株に加え、銀行や金融(除く銀行)などの上昇が目立ち、7月11日に過去最高値を付けた上昇局面と同様の物色動向であった。その後、2700ポイント付近で上値重く推移する局面(8月16日-9月3日)では、小売や情報通信・サービスといった内需関連株がアウトパフォームし、物色動向に変化がみられた。今週の急落局面(9月3-5日)では外需関連株が下落を主導し、内需関連株は相対的に底堅く推移している。米国の景気減速懸念の再燃の影響が色濃いほか、人工知能(AI)関連投資の勢いが弱まり半導体企業の利益成長期待が弱まるとの思惑がくすぶる。米半導体大手が米司法省から反トラスト法違反の疑いで情報提供を命じられたとの報道も嫌気されている。これらの不透明感は根強く、日本株の不安定な状況はしばらく続くと思われる。
財務省が2日に公表した法人企業統計では、4-6月期の全産業(金融・保険業を除く)経常利益は前年比13.2%増の35.7兆円と、四半期ベースで過去最高となった。海外での販売やAI関連需要の増加を受けて輸送用機械や情報通信機械が好調で製造業は同13.0%増の12.7兆円となったほか、インバウンドの恩恵などから非製造業も13.3%増の23.0兆円となっており、企業業績は拡大の裾野が広がり、底堅さを増している模様だ。TOPIXが二番底を探る動きになったとしても、8月5日の一番底(2200ポイント付近)を下抜けする底割れには至らないと思われる。予想株価収益率(PER)13倍程度の水準にあたる2500ポイント付近がいったんの下値メドと想定し、同水準を明確に下抜けしないか警戒したい。なお、同水準を日経平均に引き直すと35000円程度と想定している。
投資調査部長
山口 真弘