Today's Insight
2025/8/26 11:20作成
欧州株:4-6月期決算レビュー
■ 4-6月期は3四半期ぶりに減収の一方、5四半期連続で増益が見込まれる。
■ 割高な領域にあるうえ、業績拡大期待が高まりにくく、当面の株価上昇余地は限られよう
金融情報会社LSEGの集計(19日時点)によれば、ストックス欧州600指数構成企業のうち、四半期売上高を発表予定の382社の4-6月期売上高は前年比1.5%減と、3四半期ぶりに減収となる見込み。全10セクターのうちエネルギー(同11.7%減)、一般消費財(同4.5%減)など4セクターが減収となり、不動産(3.5%増)、金融(同3.3%増)など6セクターが小幅に増収となるとみられる。また、四半期一株当たり利益(EPS)を発表予定の320社の4-6月期EPSは前年比4.6%増と、7月中旬(同0.8%減)には減益が見込まれていたが、決算発表では事前予想からの上振れが相次ぎ、5四半期連続増益となる見込み。情報技術(IT、同25.4%増)、ヘルスケア(同18.2%増)など4セクターが増益となる一方、一般消費財(同27.7%減)、不動産(同22.6%減)、エネルギー(同20.5%減)など6セクターが減益になることが予想されている。
市場では、ストックス欧州600指数の2025年通年の予想EPSは2.2%減と、4月初め(5.8%増)から下方修正が進展し、減益見通しに転じている。全セクターで下方修正が進展しているが、一般消費財(9.3%増益→22.9%減)、エネルギー(0.3%増→15.3%減)、素材(7.8%増→11.9%減)など、景気動向の影響を受けやすいセクターの下方修正が目立つ。米政権による関税政策の不確実性の高まりが影を落とすなか、2022年のエネルギー、2023年の金融など、指数全体のEPS成長を牽引するセクターが見当たらない。向こう1年予想EPSに関して、アナリストが過去1カ月間に予想を上方修正した銘柄数の比率から下方修正した銘柄数の比率を差し引いた「リビジョン・インデックス(RI)」は先週末時点でマイナス2.7%となっており、市場の利益見通しは悪化基調が継続している。米国と欧州連合(EU)は21日に関税協議の合意内容を明確化する共同声明を発表し、基本関税率が4月に提示された20%より低い15%で決着したほか、分野別(自動車、医薬品、半導体、木材など)の関税率が上限15%に定まった。これにより、欧州主要企業の業績見通しの下方修正の一部が巻き戻されるか、税率が定まったことにより企業業績の先行き不透明感が和らぐか、などが注目される。
ストックス欧州600指数の向こう1年予想株価収益率(PER)は14.3倍と、2018年以降の平均水準となる14.0倍を上回る割高な領域にある。欧州中銀(ECB)の利下げ観測や米国株からの資金シフトによりPERの上昇の勢いが強まる公算は小さいとみる。ドイツを中心とした財政拡張による国防・インフラ関連の業績拡大期待は株価に相応に織り込まれているうえ、実現するまでには時間がかかるとみられ、当面は同指数の上昇の勢いは強まりにくいだろう。
投資調査部長
山口 真弘