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Today's Insight

2019/7/16 10:30作成

中国経済:減速ペースには歯止めがかかる

■ 6月分の中国の経済指標では、米国の制裁関税第3弾の著しい悪影響はみられない
■ 今年後半には経済対策の効果が期待されるが、その兆候がみえるのはもう少し先か

 先週以降公表された中国の主な経済指標をまとめる。4-6月期の実質GDP成長率は前年比6.2%で、リーマンショック時に最も落ち込んだ2009年1-3月期(同6.4%)を下回り、四半期ベースでは1992年の統計開始以来、最も低い伸びとなった。6月の主な経済指標では、鉱工業生産(同6.3%増)、小売売上高(同9.8%増)が5月から大きく持ち直し、固定資産投資(農村部除く、年初来同5.8%増)の伸びも市場予想を上回った。小売売上高は数量ベース(同6.7%増)でも2カ月連続で改善しており、減速ペースに歯止めが掛かりつつあることがうかがえる。一方、輸出(米ドル建て:同1.3%減、人民元建て:同6.1%増)、調査失業率(5.1%)は5月より悪化した。米国は5月10日に対中制裁関税第3弾の税率を25%に引き上げ、6月15日より本格的な適用が始まっている*1。6月分の経済指標ではこの影響が一部含まれるが、指標を見る限り、中国経済に著しい悪影響が生じている様子は現時点ではみられない。

 世界的に製造業の活動が収縮するなか、中国でも製造業の景況感悪化や生産低迷が続いている。5月以降は米中対立激化や関税引き上げの影響など外部環境の不確実性が強まっており、企業の設備投資や家計消費など内需の減速ペースが速まる兆候が見え始めれば、先行きへの警戒を高める必要がでてくる。6月の生産者物価指数(前年比変わらず、前月比0.3%低下)で生産財の価格下落が目立っている点などを踏まえると、現状、設備投資需要は高まっていないと推測される。一方、中国政府は、外需落ち込みの影響を内需拡大で相殺すべく、投資、消費などの内需促進策を強化している。6月10日には地方政府の一部債券(専項債)の発行目的に資本金充当を認める通達を発令し、昨年末に決定した地方債の発行枠拡大と合わせて、インフラ投資促進に向けた金融支援策を拡充した。今後の米中対立の行方に大きく左右される面は否めないものの、今年後半には一定の効果が表れてくることが期待され、筆者は中国景気の底割れは避けられると考えている。ただ、政策効果の示現や春先にみられた景気底入れ観測が再び高まるまでにはもう少し時間がかかるだろう。

*1 5月10日以降に中国から輸出された商品が対象で、それ以前に輸出された商品については、当初6月1日から適用予定だったが、米通商代表部(USTR)は適用を6月15日に延期した

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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2019/7/12 11:40

アベノミクスの効果が消えつつある日本株市場

アベノミクスの効果が消えつつある日本株市場

 東京証券取引所が11日に発表した7月第1週(1-5日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株(東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計)と先物(日経平均先物・TOPIX先物のラージ・ミニ、JPX日経400先物、マザーズ指数先物の合計)を合わせて2613億円の買い越しとなった。しかし、5月第1週から6月第4週まで、8週連続で計2兆8558億円の売り越しだったことを踏まえれば、海外勢の「日本株売り」スタンスに変化があったとは言い難い。

 年間ベースでみると、2013年以降の累計では2017年までにおよそ12兆8500億円の買い越しであったが、2018年だけで約13兆2700億円の売り越しとなり、アベノミクス相場での累計が4200億円程度の売り越しに転じた。あわせて、東京証券取引所などが6月26日に発表した2018年度の株式分布状況調査をみると、外国法人等の2018年年度末の日本株保有比率は29.1%と3年ぶりに低下し、2012年度以来の低水準となっている。

 「PER(株価収益率)からみれば、日本株のバリュエーションは割安」との見方があるが、必ずしもPERの水準が是正されるとは限らない。むしろ、売買代金ベースで日本株市場の約6割を占める海外勢のスタンスがアベノミクス相場が始まる以前の状態に戻ってしまったことを踏まえると、現在のPER水準は適正とみるべきではないかと筆者は考える。


投資調査部
マーケットアナリスト
佐溝 将司

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