Today's Insight

2025/1/10 13:25作成

ポンド安:景気減速と財政悪化への警戒感

■ 英国債利回り急騰、ポンドドルは2023年11月以来、ポンド円は約1カ月ぶりのポンド安を更新
■ 英中銀の利下げペースは緩やかとなろうが、景気減速と財政悪化への警戒感から一段安も

 英国では8日に実施された30年国債入札が不調に終わり、同利回りは一時5.44%台と27年ぶり、10年国債利回りは一時4.92%台と2008年以来の高水準へ急騰した。昨年7月の総選挙で14年ぶりに政権復帰を果たした労働党が同10月に公表した秋季予算案では、国民医療制度など公共サービスの立て直しや経済成長に向けた投資財源確保のため、過去30年間で最大の増税計画が発表され、投資資金調達のための公的借り入れ枠拡大が認められた。2022年の保守党政権ではトラス元首相が財源の裏付けがない減税策を発表し、国債価格は急落。英中銀(BOE)は同10月に7400億円の緊急債券購入を実施した。

 市場では「トラス・ショック」再来との警戒感が強まったが、ブリーデン英中銀(BOE)副総裁は9日、国債利回り急伸やポンド下落は中長期的な財政悪化懸念や米金利上昇観測などを背景とした秩序ある動きとの認識を示し、市場介入に消極的な姿勢を示した。今後の金融政策については「最近のエビデンスは景気抑制的な政策を後退させる根拠を一段と裏付けており、BOEは今後も時間をかけて段階的に同政策を解除していくだろう」と指摘。同副総裁は追加利下げを支持したが、適切な緩和ペースを探るのは難しいと述べた。

 BOEが2月もしくは3月に追加利下げに踏み切るかどうか、15日公表の昨年12月消費者物価指数(CPI)や21日公表の同9-11月雇用統計が手掛かりとなる。BOEの利下げペースは緩やかとなろうが、財政悪化懸念を背景にポンドドルは1.22ドル台前半、ポンド円は193円台前半へ急落している。英景気減速感は強まっており、英国債利回りがさらに上昇した場合、リーブス財務相やBOEの政策対応が注視される。ポンドが一段安となれば、ポンドドルは2023年10月安値1.2035ドル、ポンド円は昨年12月安値188円01銭を意識する動きとなりそうだ。


投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

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