Today's Insight

2026/5/8 10:30作成

米国:年内の利付国債増発は見送りへ

■ 米財務省は最新の市場性資金調達計画と国債発行計画を発表し利付国債発行額を据え置いた
■ 今後の発行に関するガイダンスにも変化はなく、年内は現在の入札規模の維持が見込まれる

 米財務省は4日に最新の市場性資金調達計画(Marketable Borrowing Estimates)を発表した。4-6月期に1890億ドル、7-9月期に6710億ドルの市場調達を行う予定で、4-6月期の調達予定額は前回2月に示されていた1090億ドルから上方修正された。6月末の現金残高(9000億ドル)は3月末時点(8930億ドル)と概ね同水準に据え置かれる計画ながら、2月末以降のイラン攻撃により軍事費が2月の推計を上回り、資金需要が大幅に増加した。9月末の現金残高(9500億ドル)を6月末から増加させる計画で7-9月期の調達予定額は4-6月期から大幅に増加するが、納税による資金流入が見込まれる4-6月期は例年市場調達額が少なくなる傾向があり、7-9月の調達額としては2022年以来の低水準となる。

 6日にはこの計画に基づいて5-7月期の国債発行計画(Quarterly Refunding Statement)が示された。5月15日に満期を迎える約833億ドルの民間保有の米国債償還に向けて、11日から13日にかけて総額1250億ドルの米国債(3,10、30年)を発行する。また、7月までの利付国債の発行予定額は全年限で2-4月期から据え置かれる。将来的な利付国債の増発が意識されるなかでも声明のガイダンスは「財務省は、少なくとも今後数四半期(for at least the next several quarters)、名目利付債および変動利付債(FRN)の入札規模を維持する」で変わらず、ターム物の利付国債については8-10月期も同規模の発行が継続される。「短期国債の入札規模の変更を通じて、次の四半期における資金調達需要の季節的な変動や予期せぬ変動に対応する」としている。今後2四半期以上の入札規模の維持を示唆する「少なくとも今後数四半期」というガイダンスの表現が、いつ、どのように修正されるのかが焦点となっている。

 イラン紛争勃発によりインフレ加速が意識され、ターム物の米国債の需要が伸び悩む一方、米連邦準備理事会(FRB)の資産購入再開に伴いNY連銀の公開市場操作口座(SOMA)の米短期国債需要は増加が見込まれている。ベッセント米財務長官は米長期金利の安定や長期・超長期国債の発行比率引き上げを志向しているが、足元の米国債の需給バランスは短期国債の方が相対的に良好である。米国債やドルに対する海外投資家からの信認の低下が指摘されるなかで、米財務省が長期・超長期国債の増発を拙速に進める誘因は高くないだろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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