Today's Insight
2025/6/5 12:00作成
6月カナダ中銀レビュー:2会合連続の据え置き
■ カナダ中銀は政策金利を2.75%で据え置き、中立金利推計値(2.25-3.25%)の中央値にあたる
■ 次回利下げ実施時期は、対米貿易摩擦による影響と物価・雇用の動向を見極めへ
カナダ(加)中銀(BOC)は6月4日に今年4回目の金融政策会合で政策の据え置きを決定した。事前の市場予想では、5月中旬まで25bpsの利下げ決定が優勢だったが、5月20日に公表された4月の加消費者物価指数(CPI)と同30日に公表された1-3月期の加実質GDPの結果を受け、現状維持が優勢に転じていた。結局、直近の市場予想通りに政策金利は2会合連続で据え置きとなり、中立金利推計値(2.25-3.25%)の中央値にあたる2.75%で維持された。
声明などでは、今回の金融政策決定は米国の関税政策を巡る影響の見極めが理由と示唆された。それ以外でも、5月に公表された経済指標が強弱まちまちだったことや、次回7月の金融政策会合で四半期に一度の金融政策報告(MPR)の公表を控えることも理由とみている。
前回4月政策会合以降に公表された加経済指標では、5月9日公表の4月雇用統計で、失業率が6.9%と昨年11月以来の高水準へ悪化していた。5月中旬までみられた6月利下げ観測は、この指標結果が背景とみていた。その後、4月CPI上昇率では、基調インフレ指標とされるトリムCPIが前年比3.1%とBOCの物価目標レンジ(同2-3%)上限をわずかに超える結果となった。ただし、総合が同1.7%と物価目標レンジの下限を割り込むなど、強弱まちまちである。また、実質GDPは、確かに1-3月期が前期比年率2.2%増で今年4月時点のBOC見通し(同1.8%増)を上回ったものの、5月22日にマックレムBOC総裁は4-6月期が「1-3月期よりかなり弱いと予想」としたうえで、今後の景気見通しは関税の範囲と見通しに左右されるとした。
マックレムBOC総裁は政策会合後の記者会見冒頭で、米国との貿易摩擦への警戒に加えて、加経済の動向については今後の景気下振れリスクを指摘し、利下げが必要となる可能性を指摘した。現時点でカナダは、米国からの「相互関税」こそ免除されているものの、6月4日に50%へ関税率が引き上げられた鉄鋼では対米鉄鋼出荷量の第1位であり、影響が大きい。つまり、今後確認されるデータ次第で、次回7月政策会合にMPRでの見通し修正と合わせて、3会合ぶりの利下げを決定する可能性は高いとみておきたい。それまでに、雇用統計は6月6日と7月11日に、CPIは6月24日と7月15日に、それぞれ5月分と6月分が公表される。米政権とカーニー政権の通商交渉の行方と合わせて、BOCが次回利下げに踏み切る時期について、注目が集まる。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登