Today's Insight
2025/4/16 11:20作成
日米株:値幅拡大リスクをはらみつつ、底値固めか
■ 日本株には割安感が台頭、米国株は水準調整の余地を残す
■ 企業業績の下方修正が進展する局面に移行し、株価は底値固めの展開か
トランプ米大統領が2日に表明した相互関税は市場の想定を大きく上回る関税率となり、日米株価は水準を切り下げた。TOPIXは3月27日の取引時間中に付けた直近高値(2821.90ポイント)から4月7日の同安値(2243.21ポイント)まで20.5%下落した。同期間に予想株価収益率(PER)は大きく低下(13.9倍→11.1倍)し、TOPIXの割安レンジ(12-14倍)の下限と目される12倍を大きく割り込んだ。PERを一定とすれば、予想一株当たり利益(EPS)が20%減少することを織り込んだ計算となり、相応の割安感が感じられる水準まで株価調整が進んだと評価される。10日には相互関税のうち国・地域別の上乗せ関税については90日間延期することが伝わったほか、自動車関税を巡る救済措置や相互関税から電子関連製品を除外するなど、関税関連報道に伴う投資家のリスク許容度低下は一巡しつつあるとの見方から、株価はやや持ち直し小康状態となっている。こうしたなか、赤澤経済再生担当相が16-18日に訪米し、ベッセント財務長官やグリア通商代表と関税協議を行う。関税、非関税障壁、為替政策、政府補助金を巡る議論の行方が注目される。また、為替政策については、来週23-24日に開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議にあわせて加藤財務相とベッセント財務長官が会談を行う可能性もあり、ドル円の下落に伴う株安に対する警戒姿勢を緩められない。
一方で、米国株の水準調整は依然として不十分に感じられる。S&P500は3月25日の取引時間中に付けた直近高値(5786.95ポイント)から4月7日の同安値(4835.04ポイント)まで16.4%下落し、予想PERは同期間に低下(21.0倍→17.5倍)した。割高レンジ(19-22倍)は脱したものの、割安レンジ(16-19倍)の下限にはまだ距離を残しており、株価水準の調整余地があるとみておくべきだろう。米国株が一段と調整した場合、割安感のある日本株もつれ安となる可能性があり、警戒しておきたい。
ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事は昨年末時点で3%未満だった平均関税率が相互関税によって25%程度に上昇すれば、労働市場の悪化に対して利下げを行う必要があるとした。一方、関税協議により10%程度にとどまれば、金融政策での対応は限定的にとどまるとの見方を示した。市場では、一律関税10%は維持され、上乗せ関税率が当初発表より引き下げられたとしても、企業業績に下押し圧力がかかると警戒されている。株価の水準調整は一巡しつつあるなか、今後は企業業績見通しの下方修正が進展する局面に移行しよう。株価は関税協議に伴う上振れ・下振れリスクをはらみつつ、底値固めの展開になるとみる。
投資調査部長
山口 真弘