Today's Insight

2026/9/24 11:00作成

中国:内需低迷で表れつつある経済構造改革の歪み

■ 8月の主要経済指標では国内経済活動が一段と低迷し、復調の兆しもみられない
■ 10代、20代の失業率からは経済構造改革が雇用創出につながっていないことがうかがえる

 中国では先週15日に8月の主要経済指標が発表された。鉱工業生産(前年比5.2%増)は2カ月ぶりに増勢を強めたものの、小売売上高(同0.4%増)、サービス業生産指数(同4.1%上昇)の増加・上昇ペースは鈍化し、固定資産投資(農村部除く、年初来同7.2%減)の減少率は一段と拡大した。国内経済活動に復調の兆しはみられず、4-6月期に続いて7-9月期も政府目標である4.5-5.0%を下回る成長率となる可能性が高まっている。その一方で、ハイテク分野を中心に輸出(同25.0%増)、輸入(同28.2%増)の大幅な増加が続いており、世界的なハイテク需要拡大の恩恵を受けて生産は前年比5%前後の増加が続き底堅さが保たれている。外需に支えられ経済全体では緩やかな成長減速にとどまるものの、一段と偏った成長となろう。

 国内経済低迷の背景には、長期化する不動産不況の影響が指摘される。8月の主要不動産指標は不動産開発投資(年初来前年比19.9%減)、不動産販売(床面積ベース、年初来同12.1%減)ともに減少率が拡大し、不動産市場では投資や売買などの活動が大幅に縮小している。主要70都市住宅価格(新築:前月比0.1%低下、中古:同0.3%低下)も新築・中古ともに低下し、不動産価格は持続的に下落している。不動産市場の調整長期化は実体経済にも影響が波及しつつある。都市部調査失業率(31大都市、5.3%)は5カ月ぶりの高水準となり、若年層(16-24歳、18.9%)を中心に上昇した。中国では例年、大学・専門学校の卒業期直後の7、8月に卒業生の求職者数が増加し若年層失業率が急上昇する季節性があり、9月以降は低下していくことが見込まれる。8月の水準としては前年と同水準で雇用情勢の変調を示している訳ではないが、25-29歳の失業率(7.5%)も5カ月ぶりの高水準となり、10代、20代の新規雇用を満たす規模の労働需要が創出できていないことも示唆している。国内経済低迷が間接的に反映され、消費・投資の低迷が労働市場に波及しつつあることがうかがえる。中国政府が育成に努める人工知能(AI)などの先端産業の多くは構造的に資本集約的であり、新たに創出される雇用は、政策的に調整を進める不動産、建設など労働集約的な産業で失われる雇用を下回ることが想定される。これらの業種間では求職者の技能と先端企業の高度化する職能要件のミスマッチも大きいため、生産性の高い産業への労働移動は容易ではなく、労働市場では中国政府が急速に進める経済構造改革の歪みが表れやすい。労働需給の悪化が直ちに危惧される状況ではないが、この不均衡は今後も持続的に拡大していくと考えられる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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