Today's Insight

2026/6/8 11:50作成

カナダ:現時点で利上げを急ぐ必要はないと想定

■ 加中銀は政策金利を2.25%で据え置くと予想、USMCAの影響と原油価格の動向に注目
■ 景気・物価動向を踏まえると、加中銀は利上げを急がずUSMCA協議を待つ姿勢と推測

 カナダ(加)中銀(BOC)は6月10日に理事会を開催し、市場予想では政策金利を2.25%で据え置く見通し。前回4月の議事要旨では、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しを含む対米貿易問題と、原油価格の動向を含む中東情勢へ注目する姿勢を示した。リスクシナリオとして、前者は加製品へ与える影響次第で利下げ要因、後者は原油価格の高止まり期間次第で利上げ要因、として評価。そのうえで、環境を巡る不確実性の高さと政策金利が中立金利推計レンジ(2.25-3.25%)の下限にある点を考慮して、政策金利を4会合連続で据え置いたとみる。今回も、この2点を巡る評価がBOCの政策姿勢を見極める最初のポイントとなろう。

 4月理事会以降の材料として、物価動向では5月19日に4月の消費者物価指数(CPI)上昇率が公表された。総合では前年比2.8%へ加速し、ガソリン価格の大幅上昇が主因とみられる。ただし、市場予想(同3.1%)やBOCの物価目標レンジ上限(3%)を下回ったうえ、コア指標の一つであるトリム値は同2.0%へ鈍化した。直近ではホルムズ海峡の航行正常化が見通せず原油価格は高水準で推移するが、リスクシナリオへの転換は時期尚早といえよう。

 景気動向では、1-3月期の実質GDP(速報値)が前期比年率0.1%減と、過去5四半期のうち3四半期がマイナス成長となった。しかしながら、金融市場の一部では過度に悲観的にみる必要はないとの解釈もある。速報値ベースでは6業種のプラス成長が確認されたうえ、政府支出と輸入に増加に伴う純輸出の落ち込みが影響しているためだ。また、5月雇用統計ではフルタイムを中心に雇用者数の増加が確認され、労働市場を巡りやや安心感も広がった。それでも、前回4月時点でBOCは、現行の政策金利を「景気をわずかに刺激する水準にある」と結論付けており、BOCは景気を支える必要性も意識している。景気・物価動向を踏まえるとBOCは、欧州中銀(ECB)、日銀(BOJ)などと異なり利上げを急ぐ政策姿勢はとらないと予想する。

 注目されるUSMCAの見直し協議を巡って、ルブラン対米貿易担当相は6月2日に「対米協議は前向き」と発言した。ただ、米国はメキシコとの協議を先行させ、カナダとの正式な交渉プロセス入りは未定のままだ。仮に米国主導で米加協議が進んだ場合、BOCが加景気への悪影響に対する懸念を強める可能性は高く、当面は政策金利据え置きが続くと想定する。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

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