Today's Insight
2025/4/17 10:30作成
中国:米中通商摩擦激化以前の景気は底堅さを保つ
■ 3月の主要指標は総じて増加・上昇ペースが加速し、政策支援を背景に景気拡大が継続
■ 輸出、生産の低迷が見込まれるが、家計の所得向上策は遅れており、内需拡大の持続性を左右
中国では、16日に1-3月期の実質GDP成長率や多くの3月の経済指標が発表された。1-3月期の実質GDP成長率(前年比5.4%、前期比1.2%)は前期比では3四半期ぶりに成長ペースが鈍化したものの、前年比では2四半期連続で政府目標である5%を上回った。米国との通商摩擦が激化する以前の1-3月期は景気の底堅さが保たれていることを示す結果だった。
3月の主要指標は、鉱工業生産(前年比7.7%増)、小売売上高(同5.9%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同4.2%増)、サービス業生産指数(同6.3%上昇)の増加・上昇ペース加速した。内訳をみると、鉱工業生産ではハイテク製造業、装備製造業で大幅増産が続いた一方、非金属鉱物、医薬品などが伸び悩んだ。3月に米国が中国からのすべての輸入品に対する関税を20%に引き上げ、鉄鋼・アルミニウム製品に対して迂回輸出を含めて25%の関税が適用されたため、輸出向け製品では生産が抑制されたことがうかがえる。なお、14日に発表された貿易統計では輸出(同12.4%増)が大幅に増加し、4月に米国の「相互関税」発表を控えて輸出の駆け込みが増加したことが確認されている。小売売上高では家電・音声映像機器、通信機器などの買替支援対象品目や需要促進策が行われているスポーツ・娯楽などのサービス品目が前年比20%超の大幅増加となり、政策支援による消費拡大の勢いが一段と強まった。
3月までの経済活動は堅調で米中通商摩擦の影響は限られている。焦点は米中間の関税が大幅に引き上げられた4月以降の動向で、輸出、生産の勢いは明確に衰えることが見込まれる。関税引き下げに向けて交渉が進展しない限り、輸出、生産の停滞が続くことが想定され、長期化するほど国内経済への波及が広がり2025年の目標である「5%前後」の成長は難しくなろう。内需拡大を目指して中国国務院が3月に発表した「消費振興特別行動計画」の具体案の1つとして、4月7日に中国商務部など12部門共同で「健康消費促進特別行動計画」が発表され、スポーツ・娯楽・健康分野のサービス消費拡大や健康管理でのハイテク製品の普及が打ち出された。従前の政策同様、需要拡大と経済構造転換を企図する施策であり、中国政府の政策支援は家計部門の所得向上策よりも需要創出策が先行している。今後、米国の関税の影響が中国国内に及ぶ際は、家計部門の耐久力が内需拡大の持続性を左右しよう。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏