Today's Insight

2025/7/3 10:40作成

日本株:輸出企業の業績見通しに不透明感が強まる

■ 日銀短観6月調査では、2025年度の経常利益見通しは前回調査から下方修正
■ 株価水準は割高圏に差し掛かり、企業業績の先行き不透明感が株価の重しに

 1日に日銀短観(6月調査)が公表された。大企業・全産業ベースの2025年度企業業績見通しについて3月調査→6月調査の順に確認すると、売上高(前年比0.9%増→1.8%増)は2024年度実績(3.5%増)から伸びが鈍化するものの、前回調査からは上方修正された。一方、経常利益(同0.4%減→4.9%減)は2024年度実績(4.2%増)から減益に転じ、減益幅は前回調査から拡大した。大企業・非製造業(同1.0%減→1.3%減)に大きな変化はなかったが、大企業・製造業(同0.2%増→8.4%減)は大きく下方修正された。売上高経常利益率(9.57%→9.31%)は2024年度実績(9.97%)から低下が見込まれ、インフレによる増収、原材料・人件費などコスト高に伴う利益率の低下、関税の影響に伴う輸出企業の利益見通しの悪化、などが確認された。なお、輸出企業(大企業・製造業)の2025年度想定ドル円レート(147.35円→145.87円)は若干円高方向に修正されたものの、ドル円レートが現状付近で推移すれば為替要因による業績下振れが生じることとなる。

 日銀短観では会社計画は期初に相当に保守的に置かれ、期が進むごとに上方修正される傾向が強い。2024年度の経常利益は期初の3.7%減から実績では4.2%増まで上振れした。金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計(6月27日時点)によれば、TOPIX構成企業の2025年度の予想一株当たり利益(EPS)成長率は前年比3.7%増となっているが、米関税政策を巡る不確実性が継続する限り、増益期待の高まりによる株価押し上げを期待し難い。

 投資部門別株式売買状況(東京・名古屋2市場合計、現物)をみると、海外投資家は4月第1週から12週連続で、累計で約4.1兆円買い越してきた。ただ、金額ベースでは6月第2週からペースダウンしており、海外投資家の日本株への資金シフトは一巡しつつあるとみられる。6月中旬以降、日経平均オプションと先物の特別清算指数(SQ)算出後に株式需給が改善するなか、配当金再投資への期待が株価を押し上げてきたが、7月に入り上場投資信託(ETF)による分配金捻出のための換金売りや、株主総会後に事業法人の買い越し額が減少する季節性などにより、株式需給は悪化に転じる見込みである。TOPIXの向こう1年予想株価収益率(PER)は14.2倍まで上昇し株価水準は割高圏に差し掛かるなか、企業業績の先行き不透明感が重しとなり、株価上昇の勢いが強まるとは想定し難い。TOPIXの向こう1年予想EPSをもとに試算すると、中立水準であるPER14倍は2784ポイントとなり、NT倍率を2022年以降の平均水準である14.1倍をもとに日経平均に引き直すと39256円となる。当面はこれらの水準を中心に高下する相場展開を想定する。


投資調査部長
山口 真弘

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