Today's Insight
2025/10/16 13:30作成
ポンド円:当面は200-205円をメドにもみ合い継続へ
■ 英国は雇用悪化と物価上昇の狭間で、利下げペースは緩やかになるとの見方が根強い
■ 秋季予算案に向けて財政悪化と政治不信が再燃すれば、ポンド売りが加速する展開も
14日公表の6-8月の失業率は4.8%へ上昇し2021年5月以来の高水準、平均賃金(ボーナス除く)の伸びは前年比4.7%と2022年5月以来の低水準を付けた。就業者数は前月比9.1万人増となったものの、英歳入関税庁によれば9月(速報値)は同1.0万人減となるなど雇用悪化が確認された。この日、ベイリー英中銀(BOE)総裁は労働市場の減速に懸念を示したが、「中銀目標を上回るインフレとの相反するリスクが、次の利下げ時期を巡る不透明感を高めている」として追加利下げに慎重な構えをみせた。また、金融政策委員会(MPC)で最もハト派とされるテイラー委員は「英国経済はハードランディングのリスクが高まっている」として内需低迷が景気後退を招く可能性があると警鐘を鳴らした。
国際通貨基金(IMF)は最新経済見通しで、英国の消費者物価指数(CPI)上昇率を2025年は3.4%、2026年は2.5%と予測。主要7カ国のなかでは物価上昇圧力が際立っており、追加利下げは極めて慎重であるよう求めた。8月のCPI上昇率は前年比3.8%と食品価格の上昇を背景に1年半ぶりの高水準にとどまり、中銀目標(2.0%)を11カ月連続で上回る。21日公表の9月のCPIはBOEの政策判断を見極める手掛かりとなるが、短期金融市場では11月6日の次回MPCでの利下げ織り込みは15%、年内最後の12月18日でも40%程度にとどまる。
今週、ポンド相場はドル安を支えに対ドルは1.32ドル台前半で下げ渋っているが、対円では日本の政局混迷に伴う円安急伸の反動もあって201-203円台でこう着感を強めている。日銀の早期利上げ観測後退によって英日金利差を意識したポンド高、円安が続き、目先のポンド円は6日安値200円14銭を下値メド、8日高値205円31銭を上値メドにもみ合い継続を予想している。だが、11月26日に公表予定の秋季予算案に向けて、リーブス英財務相が増税と歳出削減の双方を検討していると報じられ財政健全化に努めるが、財政悪化と政治不信が再燃すればポンド売りを招く可能性もある。ポンド円は前述の6日安値を下抜ければ、2日安値197円39銭をメドに一段安の展開もあるとみている。
投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子