Today's Insight
2026/10/14 11:00作成
中国:長期化する不動産不況の背景と原因(1)
■ 不動産不況長期化の主因には企業や家計のバランスシート調整が挙げられる
■ 自由主義国家よりも銀行部門への波及は限られる一方、特有の構造が早期解決の障害となる
筆者は9月24日のPRESTIA Insightにて、中国経済低迷の背景として長期化する不動産不況の影響を指摘した*1。その主因はバランスシート調整であり、調整が進むにつれて不動産市場の調整が家計や企業の財務悪化を通じて需要収縮へ波及するためである。本稿では、そのメカニズムを中心にこのように考える理由を補足したい。
バランスシート調整とは、資産価格の大幅下落により純資産が毀損した家計や企業などの資産保有主体が債務削減や財務体質の改善を優先して、借り入れ、投資、消費などを抑制する事象の総称である。個々の経済主体の行動としては合理的であるが、全体としては経済の収縮につながる「合成の誤謬」の一例である。このような調整は、資産価格の上昇局面で債務が積み上がった後、資産価格が大幅に下落することで生じる。中国は投資偏重の高成長が続いた2010年代までの債務急増と2020年代の経済構造改革に伴う不動産市場の調整によりこれらの条件がそろっていると考えられる。
主要70都市新築住宅価格(ロイター算出値)に基づくと、住宅価格は2021年後半のピークから持続的に下落し、直近までの累計下落率は約12%に達する。短期間に資産価格が急落すると経済の混乱などが早期に認識され政策対応が促されるものの、緩やかな資産価格の下落では経済活動への影響が段階的に表れるため、政策対応の必要性が認識されにくい傾向がある。現在の中国は後者の状況に近く、政府が経済構造改革を重視して不動産市場の緩やかな調整を容認するなか、経済への悪影響が明確になるまで政策対応は期待しづらい。価格下落が長期化するほど家計や企業の市況好転への期待は後退し、債務削減と経済収縮の悪循環を一段と強化する要因になると考えられる。
バランスシート調整は債権価値の毀損を通じて銀行部門にも波及する。中国の主要銀行は国有企業であり、政府の支援で不良債権処理や貸し渋りに迅速に対応することが可能であるため、自由主義国家に比べると信用収縮や金融危機への耐性は強く、銀行部門の行動を通じて景気の落ち込みが増幅されるリスクは抑制されている。その一方で、中国特有の社会経済構造が不動産不況の早期解決の障害となると考えられ、この点については近日中に改めて取り上げて考察する。
*1 詳細はPRESTIA Insight 2026.09.24「中国:内需低迷で表れつつある経済構造改革の歪み」
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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