Today's Insight
2025/8/7 10:20作成
中国:2025年後半も内需拡大と構造改革を推進
■ 2025年後半の経済運営の方針が示され、年間目標を含めて年初の方針を継続することを確認
■ 外部環境変化には内需拡大と構造改革で対応するが、持続的な新規需要創出の難易度は高い
中国では7月30日に中央政治局会議が開催され、2026-30年の第15次五カ年計画(十五五)を策定する中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)を10月に開催することを決定した*1。合わせて十五五に向けて経済状況を整えるべく、2025年下半期の経済運営の方針が示された。3月の全国人民代表大会(全人代)で採択された「穏中求進(安定を保ちつつ前進を求める)」の基本方針を継続し、「双循環(国内経済と国際経済の相互促進)」の推進、「5%程度」の成長率など今年の経済社会発展の年間目標の実現、計画最終年となる第14次五カ年計画(十四五、2021-25年)の完遂を目指すことが確認された。
2025年前半は前年よりも積極化したマクロ経済政策が奏功し、経済運営は安定していると評価された。目標達成に向けて年後半も「より積極的」な財政政策と「適度に緩和的」な金融政策を継続し、必要に応じて政策支援を強化する。経済指標は良好な状態にあると認識し、米中通商摩擦や国内の構造問題を念頭に、経済運営は多くの課題やリスクに直面していると指摘した。以上を踏まえ、死守すべき最低水準を定めつつ、「新質生産力」強化などを通じて潜在成長率向上や経済発展を志向していく指針を掲げている。
具体策では、景気減速への対応として、特別国債の発行と使途拡大、地方の「三保(基本民生、賃金、運営の最低水準の保証)」の確保など社会保障拡充、流動性供給による資本コスト低下などが挙げられた。同時に十五五の基盤を整えるため、技術革新(イノベーション)、消費拡大、中小企業支援、対外開放、企業の過当競争や重点産業の過剰生産の是正、隠れ債務を含めた地方政府の債務抑制、若年層・退役軍人・出稼ぎ労働者を中心とした就業支援などが構造改革の重点分野に掲げられた。3月の政府活動報告から大きな変更はなく、内需主導での成長への転換やサービス消費など新市場の需要拡大を図る方針が保たれている。
通商政策では、対外開放の拡大、貿易・外資の対中投資基盤の安定化、輸出還付税制の最適化、自由貿易試験区の建設などを挙げたが、供給網の見直しや代替輸出先の開拓などは示されず、通商交渉中の米国への配慮がうかがえる。外部環境の変化には内需拡大と構造改革で対応する方針だが、経済全体での過剰供給が続き、外需の水準が落ち込むなかで、需要の先食いにとどまることなく持続的に新規需要を創出していく難易度は高いだろう。
*1 慣例では、次期五カ年計画は中央委員会第5回全体会議(五中全会)で策定されるが、2023年の中央委員会第3回全体会議(三中全会)が2024年7月に延期された影響で、今回は四中全会で策定される
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏