Today's Insight

2026/9/25 10:45作成

ユーロ圏:家計のインフレ期待は再び上昇

■ 足もとの経済指標は強弱まちまちだが、9月PMIの力強い結果は底堅い景気回復の継続を示唆
■ インフレの2次的波及はまだみられないが、期待インフレ率の再上昇で警戒はより高まる

 9月半ばに公表されたユーロ圏の経済指標は強弱まちまちの結果だった。7月の鉱工業生産(前月比0.1%減)や小売売上(同0.6%減)など実体経済を表すデータは予想を下回った。ライン川の水位低下などを受けたドイツの弱さが足を引っ張り、7-9月期初め、生産の回復は足踏みしていたようだ。また、エネルギー価格急騰が個人消費の重しとなり始めた可能性もある。一方、今週公表された9月のPMI速報値(53.1、前月比1.1ポイント上昇)は、ここもとのエネルギー価格の急騰にもかかわらず上昇した。総合指数は好不況の境目である50を3カ月連続で上回り、2023年4月以来の高水準を記録。9月の上昇をけん引したのは、中東紛争開始以降、低調さが続いていたサービス業(53.0、同1.4ポイント上昇)であり、底堅さをみせてきた製造業(52.7、同変わらず)とのセクター格差も解消されている。内訳指数も良好な結果が目立った。新規受注の上昇が需要環境の改善を示し、雇用指数はここ数カ月の上昇後にほぼ横ばいとなり、雇用環境の安定化を示唆する。こうした点を踏まえると、ユーロ圏は底堅い景気回復が続いているとみてよいだろうが、その判断は慎重に行っていく必要がありそうだ。

 インフレに関しては、エネルギー価格上昇の2次的波及は限定的ではあるものの、引き続き警戒される。8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP確報値)では、原油や天然ガス価格といったエネルギーコスト上昇を受けて、総合指数(前年比3.2%上昇)が0.3%ポイント伸びを高めた。一方コア指数(同2.4%上昇)は伸びが小幅に鈍化し、エネルギーショックの影響はまだ大きくは表れていない。欧州中銀(ECB)による消費者期待調査(CES)で家計の期待インフレ率(中央値)をみると、中東紛争後に急上昇したあと、夏場にかけて一旦落ち着いたものの、8月には小幅ながら再び上昇した。インフレの現状認識(過去12カ月)は3.5%(前月比変わらず)で横ばいだったものの、期待インフレ率は1年先、3年先、5年先がそれぞれ3.0%(同0.1%ポイント上昇)、2.9%(同0.2%ポイント上昇)、2.5%(同0.1%ポイント上昇)とすべての期間で上昇し、5年先は過去最高値を記録した。家計は足元のインフレよりもショックの持続性をより懸念するようになっている可能性があり、この結果はECBの2次的波及への警戒感を強めるだろう。

 底堅い景気、インフレの高止まり、エネルギーショックの継続を受けて、当行は引き続き、ECBが12月の理事会で追加利上げに踏み切ると予想する。来年以降は当面据え置きを見込むが、利上げ実施の有無は今後の中東情勢や天然ガス市場の動向に大きく左右されよう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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