Today's Insight

2026/6/9 11:00作成

米国株:半導体需要拡大の株価への織り込みは道半ば

■ 半導体売上高は今年の急増の後も高い伸びが継続すると見通された
■ 設備投資が進むほど、AIの収益化見通しや企業財務の動向を注意深く精査する必要がある

 主要半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)は半年ごとに世界半導体売上高予測を発表する。同予測にはマクロ経済の動向に加えて大手半導体メーカーによる予測が反映されるため、好不調の波が循環する半導体市況を見通すうえで注目される。過去を振り返ると、前年比で増加と減少を行き来するような循環が生じていた。2022年11月以降生成AIソフトが次々と発表され投資が活発化すると、2024年(前年比20%増)、2025年(同26%増)と増加基調が継続している。2日に発表された春季予測によると、2026年が1.51兆ドルと2025年秋季予測(0.97兆ドル)から大幅に上方修正され、前年(0.79兆ドル)から約90%増加すると見通された。また、新たに2027年が1.91兆ドル(同27%増)になると予測され、急ピッチでの需要拡大が一巡した後も高めの伸びが継続すると示唆された。

 世界半導体売上高とフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の向こう1年予想一株当たり利益(EPS)は高い相関性を示しており、前者を説明変数、後者を被説明変数として回帰分析を行うとSOX指数の予想EPSは2026年が657ポイント、2027年が862ポイントと導出される。2023年以降の予想株価収益率(PER)の平均(24倍)をもとにするとSOX指数は2026年が15777ポイント、2027年が20700ポイントと試算される。8日終値(12906ポイント)からの上昇余地はそれぞれ22%、60%と、需要拡大見通しの株価への織り込みは道半ばとみなされる。

 2026年4月には自律型エージェントAIが普及期に移行したほか、生産設備やロボットなどを制御するフィジカルAIが注目されるなど、様々な分野でAIが組み込まれる流れは続くだろう。米半導体大手の最高経営責任者は2030年のAIインフラ市場規模が年間3-4兆ドル水準まで大きくなると展望し、現在、約1兆ドル規模の市場が最大4倍近くに拡大することを示唆している。現在のAI投資は利益最大化のためではなく、競争から脱落しないために行われており、半導体のほかにも幅広いセクターに恩恵が及ぶとみられる。

 なお、設備投資を進めるほどに減価償却費の負担が膨らみ利益率が圧迫されやすく、AIの収益化見通しが株価の行方を左右しよう。また、巨額の設備投資により一部の大規模クラウド業者(ハイパースケ―ラー)のフリーキャッシュフローが急速に悪化しているほか、設備投資を継続するための資金調達に踏み切っており、企業財務の健全性も投資対象の選別の手掛かりとなるだろう。決算発表や経営陣の情報発信などを通じてもたらされるこれらに関する情報を注意深く精査したい。


投資調査部長
山口 真弘

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