Today's Insight
2025/6/27 10:30作成
原油:WTIが再度急騰するとの警戒感は色濃い
■ 中東情勢の緊迫化がなければ、原油需給は緩和しやすい地合いが継続
■ イラン・イスラエルの停戦が破られれば、WTIが再度急騰するとの警戒感は色濃い
国際機関による6月時点の世界原油需給見通しが出揃った。
2025年の世界の原油需要(日量)の伸びに関して、米エネルギー情報局(EIA)は79万バレル増(2024年:1億274万バレル→2025年:1億353万バレル)に、前月(97万バレル増)から下方修正した。国際エネルギー機関(IEA)も同様に、90万バレル増(2024年:1億290万バレル→2025年:1億380万バレル)に前月(100万バレル増)から下方修正した。世界経済の悪化懸念により需要が伸び悩むと見方が反映された。一方、石油輸出国機構(OPEC)は129万バレル増(2024年:1億384万バレル→2025年:1億513万バレル)との見通しを概ね維持した。
2025年の世界の原油供給(日量)の伸びについて、EIAは155万バレル増(2024年:1億280万バレル→2025年:1億435万バレル)に前月(138万バレル増)から上方修正し、IEAも180万バレル増(2024年:1億310万バレル→2025年:1億490万バレル)に前月(160万バレル増)から上方修正した。EIA、IEAともに2025年の世界原油需給が供給超過になるとの見方を維持している。なお、IEAはイランとイスラエルの軍事衝突について、エネルギー施設が攻撃対象とされ過去数十年で最も深刻な事態との認識を示し、ホルムズ海峡が封鎖されれば世界の原油・天然ガス市場に重大な影響を及ぼすと指摘した。一方で、大規模な混乱がない限り、世界の原油供給は十分な量が確保されるとの見方も示している。
原油先物価格(WTI)は、米国の軍事介入を受けて一時1バレル78ドル台まで上昇後、両国の早期停戦合意により65ドル台を中心に小康状態となっている。米国と主要貿易相手国との通商協議の期限が7月9日に迫り、原油需要への影響を見極めにくくなっている。供給面では、OPECプラス*¹が5、6月に続き、7月も日量41万1000バレルの増産継続を決定した。中東情勢の緊迫化がなければ原油需給は緩和しやすい地合いにあるものの、停戦が破られWTIが再度急騰するとの市場の警戒感は色濃い。米政権は来週にイランと核協議を開くと表明し、包括的な和平に向けた対話を進める方針と伝わっており、事態の進展を見極めたい。
*¹ OPECプラス=石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織
投資調査部長
山口 真弘