Today's Insight

2025/9/17 11:40作成

9月ブラジル中銀、南アフリカ中銀プレビュー

■ ブラジル中銀と南ア中銀は、9月の金融政策会合でともに政策金利据え置きの方針を示すとみる
■ 両国は米関税を巡る不確実性の高さ、通貨高、政府との対立など、直近の状況で共通点が多い

 9月15日から19日の間に、米連邦準備理事会(FRB)、カナダ中銀(BOC)、イングランド銀行(BOE)、日銀(BOJ)などの主要先進国中銀が金融政策会合を開催する。また、同じ期間に主要新興国でも複数の中央銀行が金融政策会合を開催する予定であり、本稿ではそのなかでブラジル中銀(BCB)と南アフリカ(南ア)中銀(SARB)の金融政策会合について、整理しておきたい。現地時間でBCBは9月17日、SARBは9月18日に決定を発表する予定だが、政策金利の市場予想では、BCBは15.00%、SARBは7.00%でともに据え置く見通し。なお、対ドルでブラジルレアルはプラス14.2%、南アランドはプラス8.0%(9月16日終了時点、年初来)と堅調さを維持しており、現時点では両中銀とも通貨安への対処は不要な状況にある。

 BCBは、前回7月の金融政策委員会(COPOM)で昨年9月以降の利上げサイクルを停止し、声明文で米国との関税交渉とルラ政権の財政政策への注視に言及した。米政権がブラジルからの輸入品に対して最大50%の関税を課すなか、ルラ政権は世界貿易機関(WTO)へ紛争解決手続きに基づく協議を要請しているが、米政権は国家安全保障の問題だとして主張は平行線をたどる。また、財務省は7月16日に公表した財政見通し報告書で、ルラ大統領の任期最終年である2026年にかけて公的総債務の対GDP比は82.3%まで拡大する見通しを示している。こうしたなか、BCBはブラジル景気に対する不確実性の高さを理由に、当面は政策金利を据え置く方針を示す公算が大きいとみる。

 南アでは、前回7月の金融政策会合以降、政府が今後の電力供給を楽観視するなかで4-6月期の実質GDPが前期比0.8%増となるなど、足元で景気の底堅さが確認されている。そのうえ、7月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、コアCPIが前年比3.0%と約4年ぶりの低水準圏で落ち着いている。他方で、米政権は南アからの輸入品に対する関税率を30%と設定し、ブラジルと同じく先行きの景気に対する不確実性は高い。また、物価目標を現行のレンジ(3-6%)の中央値である4.5%から下限である3.0%へ引き下げたいSARBにとって、利下げを急ぐ理由は乏しいと言えよう。物価目標の現状維持を希望する政府との対立も、続く可能性がある。したがって、SARBは7月に示した「景気・物価見通しに対するリスクは均衡」との評価は変えないまま、当面の政策金利据え置きを示唆するとみておきたい。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

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