Today's Insight
2024/12/9 10:30作成
日本株:経常増益基調に陰り
■ ドル円下落の影響が大きく、7-9月期の全産業の経常利益は7四半期ぶりに減益となった
■ 日本企業の業績見通しは期が進むごとに上方修正される傾向、ただ今期の修正幅は限定的か
全産業(金融・保険業を除く)の売上高(前年比2.6%増)は安定的な増加基調にあり、企業の価格決定力が保たれているほか、設備投資(同8.1%増)も省力化投資などで堅調な伸びを示している一方、変動費増加を主因に製造業の売上高経常利益率が前年から大きく低下(8.6%→7.1%)し、全体の経常増益基調に水を差した。それでも経常利益総額は23.1兆円と7-9月期としては過去2番目の大きさであり、高水準を保っていると評価されよう。なお、経常利益を資本金の規模別でみると、大企業(資本金10億円以上)は同4.1%増だった一方で、中堅(同1-10億円)は同4.2%減、中小(1000万-1億円)は同22.1%減といずれも減益に転じた。全体として賃上げ余力は残っているものの、中堅・中小企業の賃上げ余力は縮小していると解釈される。連合が11月28日の中央委員会で承認した2025年春闘の闘争方針には、賃上げ率(ベースアップと定期昇給の合計)を全体で5%以上、中小企業で6%以上と盛り込まれており、こうした構想が実現可能か見極める必要があろう。
日本企業の業績見通しは期初には相当に保守的に置かれ、期が進むごとに上方修正される傾向が強い。企業の想定よりドル円レートは高い水準で推移しているものの、大幅な上方修正には至らないと思われる。インフレ定着による増収や本邦企業の資本効率改善など、国内の好材料は引き続き意識されやすいものの、来年前半にかけて米次期政権の関税引き上げや移民抑制による直接的・間接的な悪影響が警戒されるおそれがあり、企業業績面からは日本株の上値は重いとみるべきか。13日に公表される日銀短観の結果を精査したい。
投資調査部長
山口 真弘