Today's Insight

2026/9/7 12:15作成

ユーロ圏:経済は底堅く、インフレは粘着的

■ 経済指標は域内経済の底堅さとインフレの粘着性を引き続き示す
■ 9月ECB理事会での利上げは確実視されるが、追加利上げの姿勢が明確に示されるか注目

 先週公表された経済指標では、ユーロ圏経済の底堅さとインフレの粘着性が示された。8月のPMI改定値(52.0、前月比変わらず)は、速報値からは小幅に下方修正されたものの、3カ月連続で好不況の境目である50を上回った。製造業(52.7、同0.9ポイント上昇)、サービス業(51.6、同0.1ポイント低下)ともに50を上回り、エネルギー高や異常高温という逆風にもかかわらず、企業活動は底堅さを維持している。特に製造業が2022年5月以来の高水準となり、ユーロ圏経済を支える。また、7月の消費者物価指数(HICP、速報値、前年比3.3%上昇)は、原油や天然ガス価格の上昇を背景に、前月から0.4%ポイント伸びを高めた。異常高温が続くなかでも、食品価格の伸びは横ばいだった。一方、エネルギー・食品・酒類・タバコを除くコアHICP(同2.4%上昇)は前月から0.1%ポイント伸びが鈍化した。欧州中銀(ECB)の6月時点でのスタッフ予測では、7-9月期の総合HICPは同3.4%上昇、コアHICPは同2.5%上昇となっており、総合・コアともに想定の範囲内の結果といえよう。コアの内訳をみると、財価格(同1.2%上昇)が前月から0.3%ポイント伸びを高めた一方、サービス価格(同3.0%上昇)の伸びが0.3%ポイント鈍化し、コアHICPの伸び鈍化に寄与した。内訳の詳細は17日まで公表されないが、国別では、ドイツとイタリアにおいて、夏季休暇関連のサービス価格の低下が指摘される。エネルギー価格の二次的波及も足元限定的なようだが、総合・コア指数ともに2%をしっかりと上回る状況が続いている。エネルギー高の継続や長期化した熱波による食品等への価格上昇圧力を踏まえれば、ECBの警戒は依然として高い状態が続いているだろう。

 回復力のある経済成長、目標を大幅に上回るインフレ率、継続的なエネルギーショックの組み合わせを踏まえれば、今週9、10日開催予定のECB理事会での利上げはほぼ確実とみられる。焦点は先行きのさらなる利上げをECBが示唆するかどうかであり、ラガルド総裁の記者会見でのメッセージと今回アップデートされるスタッフマクロ経済予測に注目だ。足もとでは中東における混乱が再び拡大しており、ホルムズ海峡の正常化の遅れから、域内の経済・物価への影響が特に大きい天然ガス価格が6月のメインシナリオの想定を上回って推移している。エネルギー価格の再上昇や予想を上回る堅調な成長は追加的なインフレ圧力となる。新たに公表されるスタッフのマクロ経済予測では、成長率の予測が上方修正され、コアインフレ率は2028年末でも2%を上回る水準にとどまる見通しとなるとみられ、タカ派的(利上げに積極的)な内容が示されるだろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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