Today's Insight
2026/4/1 10:30作成
米国:消費環境への追い風が止まる
■ 所得の基調的な増勢鈍化、家計の購買力低下、資産効果低減により消費への追い風は止まる
■ エネルギー価格高騰は今後向かい風に反転させる要因となりうる
米国経済最大の需要項目である個人消費は昨秋から拡大ペースが徐々に鈍化している。最新データでは、1月の個人消費支出(名目:前月比0.4%増、実質:同0.3%増)はサービス品目を中心に増加したものの、物価上昇率を除くと昨年12月に続いて小幅な増加にとどまり、財消費は実質ベースでは2カ月連続で減少した。一因には個人所得の伸び悩みが挙げられる。1月の可処分所得(名目:同0.9%増、実質:同0.7%増)は社会保障給付の年次調整により大幅に増加したものの、昨年後半は実質ベースでは概ね横ばいで推移していた。所得増加を伴わない消費拡大により貯蓄率は昨年12月に2022年末後半の水準まで低下した。1月に一時的要因で増加した可処分所得の多くは貯蓄に流れ、基調的な所得が伸び悩むなか消費促進にはつながっていない。また、消費者信用残高のうちクレジットカードが含まれるリボルビングクレジット残高は2024年末以降伸び悩んでおり、借り入れによる消費も失速している。
消費者信頼感指数(3月:91.8)は2カ月連続で上昇したものの、「相互関税」の詳細が発表された昨年4月以来の水準で低迷している。特に現況指数の低下が顕著で、コロナ禍からの回復途上にあった2021年以来の低水準にとどまっている。3月に期待指数が低下し、家計部門の経済状況は今後一段と悪化していくことが見込まれる。エネルギー価格急騰で家計の購買力は一段と低下し、低中所得層の消費を抑制する要因となろう。
3月以降の金融市場の動向も間接的に個人消費の制約となることが見込まれる。インフレ懸念台頭により市場金利が上昇していることは住宅ローン金利などの水準を引き上げ、家計部門の金利負担増加につながる。またエネルギー価格高騰以前から、人工知能(AI)によるソフトウェアサービス事業代替への脅威やプライベートクレジット市場での流動性懸念などによって株式市場は調整局面に差し掛かっており、エネルギー供給懸念により株価調整が長期化する場合はこれまで高所得層の消費を促進してきた資産効果も弱まることが想定される。
今春にかけて予定される歳出・減税法(OBBBA)の税還付が家計部門の可処分所得の改善要因となる一方、所得の基調的な増勢鈍化、家計部門の購買力低下懸念、資産効果の低減によってフロー、マインド、ストックの面でこれまで個人消費を促進してきた追い風はすでに止まりつつあり、エネルギー価格高騰は向かい風に反転させうる要因と考えられる。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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