Today's Insight

2020/9/16 12:15作成

原油相場の動向にも要注意

■ WTIは底堅い展開が続くとみるものの、当面、40ドル台では伸び悩む公算が大きい
■ 米実質金利の低下に歯止めがかかることで、リスク資産への資金流入が弱まる可能性があろう

 原油先物価格(WTI)は、4月に一時1バレル=マイナス40ドル台まで急落したが、世界的な経済活動正常化の動きに伴い需要環境は最悪期を脱したとの見方が広がったうえ、石油輸出国機構(OPEC)に非加盟の主要産油国を加えた「OPECプラス」による協調減産(5、6、7月:日量970万バレル、8月:同770万バレル)もあり、8月末には、3月上旬以来となる43ドル台まで上昇した。しかし、9月に入り、およそ3カ月ぶりに36ドル台まで急落し、その後も36-38ドル台でのもみ合いが続いている。
  
 WTI急落の背景としては、(1)サウジアラビアによるアジアと米国に対する原油の公式販売価格(OSP)引き下げ、(2)季節要因(夏のドライブシーズンが終わり、例年、需要が低下する)、(3)米ハイテク株の急落に端を発したリスク回避の動き、(4)米追加経済対策を巡る与野党協議がこう着し、米景気回復ペースの鈍化懸念が強まったこと、などが挙げられる。これだけの悪材料が重なったことを踏まえれば、むしろWTIは底堅い印象で、中長期的には世界的な景気回復に伴う需要増が下支えになるだろう。しかし、景気回復のペースは不透明感が拭えないうえ、カンザスシティ連銀のEnergy Survey(調査期間:2020年6月15-30日)によれば約6割の米産油業者が41-50ドルで生産を再開すると回答しており、40ドル台では需給が悪化する公算が大きい。当面は8月末の高値を明確に上抜けるのは難しいとみられる。

 足元では、米期待インフレ率の上昇が一服し、米実質金利(名目金利-期待インフレ率)の低下に歯止めがかかっている。期待インフレ率を押し上げる要因は原油高に限定されるわけではないが、その影響度は小さくない。つまり、原油価格が伸び悩むうちは、米実質金利も低下しづらいといえよう。仮に、米実質金利の低下に歯止めがかかったとしても、同金利がマイナス圏にあるうちは、預金などからリスク資産への資金流入が続くと考えられる。ただ、その勢いが弱まる可能性があるため、原油相場の動向にも注意を払う必要があるだろう。



投資調査部
シニアマーケットアナリスト
佐溝 将司

ご登録はこちら