Today's Insight

2019/9/18 10:15作成

原油価格は急騰も急落も金融市場に悪影響

■ 目先の原油需給ひっ迫懸念は回避された見込み
■ 中東情勢の行方を警戒。原油価格は急騰も急落も金融市場に悪影響

 サウジアラビアの石油施設への攻撃を受けて、原油先物価格(WTI)が急騰した。先週末13日は1バレル54.85ドルで引けたが、週明け16日は62.90ドルで取引終了。前週末比14.6%上昇と2008年12月以来の上昇率となった。翌17日にサウジのエネルギー相が記者会見で、月内には攻撃を受ける前の供給体制に復旧するとの見通しを表明したことで供給懸念が後退し、WTIは前日比6%安の1バレル=59.34ドルで取引を終えた。トランプ米大統領が必要に応じて戦略石油備蓄(約6.45億バレル)の放出を承認していることも相まって、当面の原油需給のひっ迫懸念は回避されたとみられる。

 しかしながら、イランの最高責任者、ハメネイ師は17日、「政府のどのレベルにおいても米国とは対話しない」と述べたと伝わった。トランプ米政権が模索するロウハニ大統領との首脳会談を認めない考えで、米国とイランの対立が続くとの見方がくすぶる。各国によるイランへの報復姿勢が強まれば、石油施設への新たな攻撃や、原油・石油製品が日量2100万バレル通過する輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖に至り、原油価格が急騰する可能性がある。一方で、ボルトン米安全保障担当補佐官が解任されたことを受けて、対イラン政策が柔軟化し原油需給に関する不安が和らげば、原油価格が急落する恐れもある。

 原油相場は急騰しても急落しても、金融市場に強い悪影響を及ぼしうる。米連邦準備理事会(FRB)は利下げを正当化する条件として、(1)貿易問題での緊張を巡る不確実性、(2)世界経済の先行き不透明感、(3)インフレ期待の低迷、の3つを挙げている。原油急騰は物価全般を押し上げて(3)を緩和し、利下げ観測を後退させる一方で、(1)、(2)に関しては一段と不透明感が強まるように作用し、利下げへの思惑を強めると思われ、金融政策のかじ取りは一段と難易度が高まるだろう。反面、原油急落にも警戒したい。米シェールオイル採掘企業による債券発行が活発化、米ハイイールド債指数と原油価格の連動性が高まっており、原油急落に伴いクレジット市場が動揺すれば、信用収縮に発展する恐れがある。原油相場が急変すれば、投資家のリスク選好低下につながる可能性がある。原油相場はひとまず小康状態となったように感じられるが、中東情勢の変化により急変する懸念はくすぶっており、警戒姿勢を維持する必要があるだろう。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
山口 真弘

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