Today's Insight
2026/5/25 11:10作成
トルコ:政情不安からリラ安懸念が一段と強まる
■ トルコの裁判所は最大野党幹部の事実上の解任を決定、政情不安からトルコ資産が売られた
■ 中銀はリラ防衛姿勢が明確も、原油高と総外貨準備高の大幅減少懸念から一段のリラ安を警戒
トルコリラ(リラ)相場は一段安の懸念が強まってきた。先週末にリラは、対ドルで45リラ台後半、対円で3.42円台半ばを付けて、それぞれ過去最安値を更新。背景は、5月21日(現地時間)にトルコの裁判所が、2023年に行った最大野党である共和人民党(CHP)の党首選挙について無効の判決を下し、国民に人気の高いオゼル現党首を事実上解任したこととされる。そのうえで、2023年にエルドアン氏との選挙で敗れたクルチダルオール前党首の復帰を命じた。トルコの政情不安を招く懸念から、トルコ資産は株・債券・通貨のトリプル安で反応した。
こうした一連の動きは、昨年3月にCHPのイマモール氏(当時のイスタンブール市長)が逮捕された状況と重なる。現在も同氏の裁判は続き、昨年11月に検察当局は最大で2000年を超える懲役刑を求刑。逮捕当時から、2028年の次期大統領選挙へ向けたエルドアン大統領の政敵つぶしと解釈され、トルコ資産は売られた。この時、トルコ中銀(TCMB)はリラ安抑制のため、昨年5月初旬までで約394億ドルのリラ買い介入と政策金利引き上げ(42.5%から46.0%へ)を実施。そうしたなか、報道では今年5月21日だけでTCMBは約60億ドルをリラ買いの為替介入に投入したと伝わる。すでに過去最安値圏で推移するリラを支えるTCMBの意図は明確であり、2023年当時と同じく追加利上げでさらにリラ安抑制を狙う可能性は高い。
昨年3月当時と異なる注意点は2点あると考えている。(1)供給ショックに伴う原油価格高騰、(2)総外貨準備高の水準、である。(1)トルコでは2024年時点で輸入品目第一位が鉱物性燃料で、資源輸入国に分類される。今年4月の製造業PMIは45.7と2024年9月以来の低水準に落ち込むなど、原油価格高によるトルコ経済への悪影響が確認され始めた。トルコはウクライナと中東に挟まれる地理的な結節点にあり、多様なパイプラインを持つこともあって、今年3月にエネルギー相は中東産原油への依存度は総供給量の10%で、状況は管理可能とした。ただ、原油価格の1ドル上昇でトルコのエネルギー費用は約4億ドル増加すると述べ、原油価格高はトルコ経済へ打撃となる。(2)総外貨準備高は今年3月には前月比434億ドル減を記録して一時約553億ドルと減少が顕著となった。直近5月11日終了の週次データでは約612億ドルへ小幅増となったが、金融市場の一部ではTCMBが臨時会合で利上げを実施との思惑も浮上する。以上の注意点を踏まえると、当面はリラ安進行への警戒を怠れないと考える。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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