Today's Insight
2026/7/6 10:00作成
債券:日本国債市場は効率的なのか
■ 日本国債市場は米国やドイツなどの海外国債市場との連動性が低下している
■ 日本の金融政策正常化の遅れが一因だが、経済ファンダメンタルズも反映されている
国債利回りは自国の金融政策、および潜在成長率や期待インフレ率などの経済ファンダメンタルズに基づいて水準が定まる。ただし、世界共通の景気変動要因やクロスボーダーでの相対価値取引に基づく裁定により、先進国のようにあらゆる情報が瞬時に価格へ織り込まれる効率的市場では国債利回りは世界的に連動して変動する傾向がある。ただし日本は大規模な資産購入や長期金利の低位誘導(イールドカーブコントロール)などの非伝統的金融政策を長期間継続したため、海外との国債利回りの連動が崩れている。金融政策正常化への転換後も米国やドイツ(独)との連動性は十分に回復していない。その一因には、国債市場における中央銀行の存在感が著しく高まり国債市場の流動性が低下したため国際的な裁定が働きづらい状況が続いていること、同時に国債市場の効率性低下を狙い投機を行う投資ファンドなどの海外ノンバンク金融仲介機関(NBFI)が取引シェアを拡大していることが指摘できる。
中東情勢が緊迫化した2月末以降、日本と米独の国債利回りの乖離はより明確となっている。今後2年程度の金融政策見通しを強く反映する2年国債利回り、潜在成長率や期待インフレ率など長期的な経済ファンダメンタルズに基づく10年国債利回りの両方で、日本は米独と異なる変動を示すようになっている。米独ではエネルギー価格高騰を受けて今後の利上げを織り込み2年国債利回りの上昇ペースが加速したが、日本の2年国債利回りの上昇ペースは2月末前後で大きく変わらない。対照的に、米独では10年国債利回りは2年国債利回りよりも小幅な上昇にとどまり、日本では2年国債を大幅に上回るペースで利回りが上昇し、4月末以降は日銀が推計する名目自然利子率(約1.1-2.5%)の上限を上回る水準に達している。この結果、米国やドイツでは2-10年国債利回り差が縮小に向かうなか、日本では2005年以来の水準まで拡大し、イールドカーブのベアスティープニング(利回り上昇と傾斜化)が際立っている。
2-10年国債利回り差の乖離に対する解釈は一様に定まるものではないが、筆者は日本の財政・金融政策への債券市場の懸念が表れていると考えている。2年国債利回りは物価高騰や円安でも日銀の金融政策が大きく変わらないことを織り込む一方、副作用として期待インフレ率の基調的な上昇、タームプレミアム拡大などを通じてより大幅な10年国債利回り上昇につながっているという整理である。背後には緩和的な金融環境での財政拡張による政府の「高圧経済」志向があり、実は国債市場はこれを効率的に織り込んでいるのかもしれない。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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