Today's Insight

2020/11/19 11:20作成

RCEP:メリットは大きいが、日本の立ち位置は難しい

■ RCEPは、現時点で世界最大規模の自由貿易協定(FTA)とされる
■ メリットの波及は数年単位となろうが、その間RCEP内の勢力バランスや米中対立の影響に注意

 本稿では、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)について考察する。11月15日にRCEP協定に署名したのは、日本、中国、韓国、ASEAN加盟国(10カ国)、豪州、ニュージーランドの計15カ国。2019年時点の世界銀行のデータでは、RCEP参加国の世界GDPに占める割合は29.4%、人口は世界全体の約3割(22.7億人)を占める。現時点では世界最大規模の自由貿易協定(FTA)であり、北米、欧州に次ぐ第3の軸として太平洋地域の経済的な結束を促す。

 日本のメリットは、貿易の円滑化と加盟国間でのサプライチェーンの連携強化にある。日本の貿易総額におけるRCEP参加国との貿易額が占める割合は約46%(2019年)。これは、米国と欧州を合わせた割合(約27%)を上回る。貿易面では、RCEP参加国と、工業製品から農林水産品に至るまで関税の撤廃などを通じて円滑化が図られるが、RCEP参加国全体の関税撤廃率は91%(品目数ベース)とされた。また、投資や知的財産、電子商取引などに関する規定を定めることで、効率的なサプライチェーンの構築が可能となる。既に人口減少に転じた日本は、海外の経済成長を取り込むことが今後一層重要となる。協定の詳細はまだ明らかでない部分も多いが、こうした課題を抱える日本にとっては重要な一歩となろう。

 デメリットとしては、RCEP自体が中国の支配的な役割を強化するシステムになる懸念が指摘できる。中国だけで、GDPはRCEP全体の約55%、人口は約61%を占めるうえ、従来から中国は東南アジア諸国への影響力が大きい。RCEPには中国と対立を深める豪州が参加しており、米中対立の動向次第で、RCEP内の主導権争いが激化する可能性もある。対米、対中外交のバランスに苦心する日本にとっても、立ち位置の確保が難しい状況は続くだろう。

 金融市場の観点では、新型コロナ禍以降続くアジア市場への選好を後押しする材料になる見込み。ただし、RCEPのメリットは、詳細を詰めていくに従って、数年かけて段階的に顕在化すると思われる。当面の注目はインドの動向だろう。インドは、2019年11月の第3回RCEP首脳会議以降に交渉を脱退した。だが、協定発効後18カ月を経過すればRCEPへの加入は可能と定められた。世界第2位の人口を抱えるインドが加入すれば、RCEP内の消費市場の拡大や中国への牽制につながり、勢力バランスの均衡に作用しよう。



投資調査部
マーケットアナリスト
合澤 史登

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