Today's Insight

2026/6/17 10:30作成

中国:外需主導の歪な景気回復が継続

■ 中国は5月に生産や輸出が増勢を強める一方、消費や投資は一段と低迷した
■ 世界的なAI需要を追い風に景気回復が続いているが、内需低迷への対応の必要性も高まる

 昨日、中国で5月の主要経済指標が発表された。供給を示す鉱工業生産(前年比4.5%増)、サービス業生産指数(同4.4%上昇)の増加・上昇ペースが加速し、需要を示す小売売上高(同0.6%減)、固定資産投資(農村部除く、年初来同4.1%減)は減少した。9日に発表された貿易統計では、世界的な人工知能(AI)投資需要の増加を背景としてレアアース、集積回路(IC)などを中心に輸出(同19.4%増)が大幅に増加しており、コンピュータ・通信・その他電子機器などのハイテク分野を中心とした海外需要拡大によって国内の生産活動が支えられている。イラン紛争による原材料・輸送費の高騰、国際供給網の停滞を受けて世界的に備蓄需要が強まっていることも中国の生産・輸出活動への追い風となっていると考えられる。その一方で内需は一段と低迷し、前月比では小売売上高(前月比0.38%減)、固定資産投資(同1.91%減)はいずれも3カ月連続で減少した。消費、投資ともにすでに昨年後半から低迷していたが、イラン紛争勃発以降、悪化度合いを強めている。

 10日発表の物価統計にも原材料・輸送費高騰の影響は表れており、採掘、原材料など生産の上流工程を中心に生産者物価指数(前年比3.9%上昇)は上昇ペースが加速した。ただ消費者物価指数(同1.2%上昇)の上昇は抑制されており、最終製品への価格転嫁は浸透していない。経済全体の総需要が総供給を下回るデフレギャップを抱えるなか、エネルギー関連費目を除けば製品需給により物価上昇は抑制され、緩やかなインフレが続くと考えられる。

 5月のPMIをみると、民間公表値(製造業:51.8、サービス業:54.4)が基準の50を大幅に上回る一方、政府公表値(製造業:50.0、サービス業:50.1)は50付近に位置している。政府公表値は国有企業、民間公表値は民間新興・中小企業の構成比率がそれぞれ相対的に高く、企業活動は民間企業を中心に拡大していることがうかがえる。一国全体でみれば、年明け以降景気は上向いており、政府目標(4.5-5.0%)の上限相当の成長となった1-3月期(前年比5.0%、前期比1.3%)以降も景気回復が続いていることが示唆されている。ただしハイテクなど特定分野に偏った外需主導の不均一な回復であり、内需低迷は深刻化している。特に債務問題に波及しうる固定資産投資に対しては政策対応の必要性が高まっており、経済構造改革と相反する課題に対して中国政府がどのように調整や安定化を図るのかが焦点となろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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