Today's Insight

2020/2/20 11:30作成

金融相場色が強まるJ-REIT市場

■ 国内不動産市場では、オフィス、住宅賃料の上昇基調が続いている
■ 東証REIT指数の上昇はそのペースを大きく上回り、徐々に割高感が強まっている面は否めない

 国内不動産市場では、オフィス、住宅賃料の上昇基調が続いている。

 三鬼商事が公表する最新1月の全国主要都市のオフィスビル市況調査によると、東京(平均空室率:1.53%、平均賃料:22,448円、前年比6.8%上昇)をはじめ、主要7ビジネス地区(札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡)で大規模オフィスビルの平均空室率の低位安定と平均賃料の上昇傾向が続いている。最近の特徴としては、賃料上昇が東京から地方都市にも波及し、全国的な現象になっている点が挙げられる。
オフィス市場に比べると緩やかだが、住宅市場でも賃料上昇が確認できる。東京カンテイが公表する最新1月の分譲マンション賃料は、供給物件の築年数の変動などによる短期的な変動はあるものの、東京都(3,517円/㎡、前年比5.1%上昇)、大阪府(2,081円/㎡、前年比3.1%上昇)を中心に上昇基調を保っている。販売価格の高騰に伴い新築マンション販売は伸び悩んでいる一方で、住宅賃貸市場に限れば、堅調推移が続いている。

 東証REIT指数は2019年以降26.4%上昇し、上記のオフィス、住宅賃料の上昇ペースを大幅に上回っている。一因には、世界的な金融緩和の影響で金利先高観が乏しいことが挙げられる。10年国債利回りが低位に抑えられている結果、イールドスプレッド*1は3.4%程度あり、現在よりも価格が低かった2013-16年頃(2.5-3.4%程度)よりも高い水準にある。反面、J-REIT全体の純資産(NAV)倍率*2は約1.24倍と2019年9月以降、1.2倍を上回る状況が続いている。NAV倍率自体は2013-16年頃(1.2-1.6倍)の方が高かったが、当時は日銀の大規模な金融緩和政策により国債利回りが大幅に低下し、不動産価格の上昇を織り込む価格形成が正当化される状況であった。現在、金利低下に起因する不動産価格の上昇余地が限られていることを踏まえると、割高感が強まっている面は否めないだろう。昨今の東証REIT指数の上昇が賃料上昇に基づいていることは確かであり、引き続き安定的な分配金収入を期待できる対象と考えられるが、そのペースが速いこともあり、同じペースでの持続的な価格上昇には黄信号が点灯しているようにみえる。

*1 イールドスプレッドは、J-REITの分配金利回りと、リスクフリーレートである10年国債利回りとの差
*2 NAV倍率は、投資口1口当たり実質純資産(純資産に時価評価した保有不動産の含み損益を加えたもの)に対する投資口価格の倍率、保有不動産を時価評価した実質的な持分価値に基づく評価の尺度

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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