Today's Insight

2026/4/3 12:10作成

日銀の利上げに向けた地ならしは進む

■ 3月の主な意見では、原油高による景気下振れよりインフレ上振れを指摘する意見が多かった
■ 日銀の物価コア指標、需給ギャップ、自然利子率の公表は、利上げへの地慣らしの進展を示す

 3月30日に公表された3月18、19日の日銀政策決定会合における主な意見(以下、「主な意見」)では、利上げに向けた意見が多くみられ、足元の原油高による景気下振れリスクよりもインフレ上振れリスクの大きさを懸念する委員が多いことを示唆する内容だった。物価に関するセクションでは、基調的なインフレ率を「まだ2%の手前にある」とする委員もいる一方、原油価格上昇が「広範囲での物価上昇につながる」とする意見や、「ショックの波及や二次的な影響」を懸念するなど、より多くの委員が上振れリスクの高まりを指摘していた。また、金融政策運営については、「金融政策によってまずは物価を安定させ、それによって、景気の下振れリスクを最小限に抑える」ことの主張や、「中立金利までまだまだ距離がある状況でビハインドザカーブに陥ると、急激かつ大幅な金融引き締めを余儀なく」されるリスクを指摘する意見などがみられた。こうしたなか、「主な意見」で利上げへの点検材料として挙げられた日銀短観3月調査(4月1日公表、調査期間3月31日まで)では、企業の景況感は広範に改善しており、先行きの見通しの悪化は限定的だった(大企業・製造業の業況判断DI:最近17、前回比1ポイント上昇;先行き14、最近比3ポイント低下)。今後、中東情勢緊迫の長期化を受けて景況感が悪化する可能性は残るが、景気の先行きに一定の安心感を与えるものだったといえる。一方、企業の1年後の物価見通し(全規模・全産業、前年比)は2.6%と11カ月ぶりの高水準を記録し、インフレへの警戒感を高めるものだった。

 さらに先週、日銀が新たに公表した(1)消費者物価指数(CPI)のコア指標、(2)需給ギャップ、(3)自然利子率といった指標や推計値は、今後の利上げを後押しする内容だったといえよう。(1)2月のコアCPI(除く生鮮食品)は前年比1.6%上昇と4年ぶりに2%を下回った一方、特殊要因(政府の価格抑制策など)を除いた新たなコア指標では同2.2%上昇と伸びが高くなる。また、(2)需給ギャップはこれまで、コロナ禍以降マイナス(国全体の供給力に対し需要が不足し、物価への下げ圧力となる)が続いたが、新たな推計値では2022年1-3月期から15四半期連続でプラス(国全体の供給力を需要が上回り、インフレ圧力となる)に大きく上方修正された。さらに、(3)6つのモデルに基づく自然利子率の推計レンジは、これまでの「▲1.0%程度から+0.5%程度」から「▲0.9%程度から+0.5%程度」へ見直された。インフレ目標の2%を踏まえれば、中立金利のレンジも「+1.1%程度から+2.5%」となり下限が0.1%ポイントと小幅に上方修正されたことになる。こうした一連の情報は、日銀の利上げに向けた地ならしといえよう。中東情勢による不確実性はあるものの、引き続き4-6月期の利上げが見込まれる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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