Today's Insight

2026/7/23 10:30作成

中国:消費主導型経済への転換を図る五カ年消費計画

■ 中国国務院は消費主導型経済構造への転換に向けて2030年までの消費計画を公表した
■ 小売売上高60兆元到達やサービス消費比率上昇を目標とし、安定的な経済基盤構築を目指す

 中国国務院は、3月に採択された2026-2030年の第15次五カ年計画の目標に掲げた消費主導型経済構造への転換に向けて、国家発展改革委員会(発改委)と商務省がまとめた具体策を承認し、13日にその概要(以下、「消費計画」)を公表した。

 第15次五カ年計画では、「内需拡大や国内大循環の強化」が「質の高い経済発展」に次ぐ重要任務に位置付けられ、「巨大な国内市場」の活用や国民一人当たり所得の増加などにより、これまでの投資・輸出主導の成長から消費中心の経済構造への転換が図られる。「消費計画」には、(1)サービス消費市場の拡大と質的向上、(2)ハイテク製品普及など財消費高度化の促進、(3)デジタル、グリーン、体験、インバウンドなど新たな消費市場の創造、(4)所得・雇用・社会保障の強化による家計部門の消費能力の向上、(5)消費インフラ整備や対外開放、(6)不合理な制度・規制改革の6分野に関する具体的な施策が記され、計画最終年である2030年に小売売上高を60兆元前後に到達させることが数値目標として掲げられた。2025年の50兆元強から5年間で約20%の市場拡大に相当する目標で、拡張的な政策を伴わず政府目標程度の成長で実現可能な現実的な水準が設定された。また数値目標は明記されなかったが、消費支出に占めるサービス消費比率の上昇を目指す方針も打ち出されている。

 6分野にわたる具体的施策は第15次五カ年計画などで従前から言及されてきた内容が中心であった。ただし、サービス消費市場の拡大が筆頭に挙げられた点や小売売上高の数値目標が設定された点からは、先進国のような国内消費中心の経済を構築するためにはサービス消費の市場規模を拡大させる必要があるという課題認識や外部環境に影響されず安定的な経済成長を目指していく中国政府の意向がうかがえる。米国を中心に西側諸国との通商摩擦や地政学的な対立が強まるなか、経済的分断への備えを急ぐ姿勢も反映されていると考えられる。半面、これまでの投資主導の高成長で蓄積した余剰生産能力や過剰資本ストックに関しては直接的な言及はなく、消費促進の制約となることが想定される不動産市場の調整に関しても、従前より掲げられてきた政府による保障性住宅の供給を含む賃貸住宅市場の拡大、住宅積立金制度の改革などの施策に限られた。経済構造転換の副作用として見込まれる資本ストック調整に能動的・積極的に対応する様子はうかがえず、家計の消費能力向上や国内消費拡大を間接的に抑制することになろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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