Today's Insight

2026/5/28 10:30作成

中国:逆風下でも工業部門の業績は復調

■ 4月の工業部門企業利益は二桁増益を維持し、売上高利益率は同時期では4年ぶりの高水準に
■ 生産・投資活動の失速、および原材料調達難やコスト増加の影響は今後遅行して反映か

 中国で昨日発表された4月の工業部門企業利益(年初来前年比18.2%増)は3カ月連続で増勢を強め、年初から二桁増益が続いている。すでに発表されている4月の鉱工業生産や固定資産投資で明らかとなった企業の生産・投資活動の失速とは対照的に、工業部門の業績は復調傾向にある。経済取引の動向をより反映する企業売上高(年初来同5.2%増)も2024年半ば以降の増加ペースが保たれており、両指標から求められる売上高利益率(5.43%)は同時期として4年ぶりの高水準となった。エネルギー価格急騰やホルムズ海峡封鎖に伴う原材料調達難とコスト増加に直面するなかでも企業活動は4月まで好調に推移していることがうかがえ、工業部門の収益性も向上している。

 企業業績復調の一因には中国政府の「反内巻」政策による過当競争の制限や過剰供給能力の縮減が挙げられるものの*1、原材料調達コスト増加の影響が徐々に強まることが見込まれ、今後は工業部門の業績を制約することになろう。売上高についても、人工知能(AI)投資ブームによる世界的な半導体需要の急増や国際供給網混乱に備えた海外からの備蓄需要などの外需拡大によって輸出企業を中心に工業部門の売上高が支えられている面があり、一巡後の持続性には懸念が残される。中国国家統計局は4月の主要経済指標発表後の声明にて、国内で需要低迷や供給超過が続いていることを認めており、内需中心の経済構造への転換や産業高度化による付加価値向上(すなわち企業の収益性向上)が現時点で道半ばの状況であることを示唆している。中国国家統計局の現状認識は、中国国内の需要不足を補う観点での公的需要創出や民間需要刺激の布石であるとも考えられる。

 5月14、15日に開催された米中首脳会談では、米中共同声明の発表は見送られ、レアアースなど重要テーマの大半では特に明確な進展はみられなかった。ただし両国の融和が演出され、「貿易委員会」、「投資委員会」の設立など両国の戦略分野以外の通商問題を協議する枠組みが整えられた。昨年の米中首脳会談での合意により米国の対中関税の大半は今年11月まで停止されており、当面の米国の対中通商政策の不確実性が低下したことに伴って中国では国内政策が推進されることが見込まれる。企業業績には経済活動に遅行して影響が表れる傾向があるため、内需低迷がより明確となり今年の成長率目標である「4.5-5.0%」を下回る懸念が広がる場合は景気下支えの観点で需要創出策が打ち出されることになろう。

*1 詳細はPRESTIA Insight 2026.05.13「中国:デフレ脱却と「内巻式競争」の是正」


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

プレスティア インサイトについて

マーケット情報