Today's Insight

2026/7/13 12:00作成

日本:成長戦略と財政規律両立へ市場の警戒は続く

■ 緩やかな景気拡大下でも景気刺激的な財政・金融政策が継続し、市場の安定維持は困難に
■ 政府はメッセージを転換するが、成長戦略と財政規律両立見極めへの市場の警戒は続くだろう

 日本経済は緩やかな拡大を続けているようだ。先週の経済指標からは、底堅い所得の増加に支えられた堅調な個人消費が確認された。5月の実質消費活動指数(旅行収支調整済、前月比0.6%上昇)は、4月の大幅上昇(同1.7%上昇)のあと、2カ月連続で上昇。サービス消費の増勢が続いたほか、耐久消費財や非耐久消費財消費も堅調な伸びとなっている。賃金の増加に加え、株価上昇による資産効果が家計支出を支えているようだ。5月の毎月勤労統計では、現金給与総額(前年比3.2%増)および、基本給に相当する所定内給与(同2.9%増)も底堅い伸びとなった。政府の物価高対策による物価の伸び減速もあり、実質賃金(同1.4%増)も年初以降プラスが続く。2026年の春闘(最終集計)では、賃上げ率が5.01%となり、前年からやや鈍化したものの、高水準を維持した。春闘の結果は順次所定内給与に反映され、先行きの賃金の伸びを支えるだろう。

 潜在成長率を上回る成長が続くなかでも、財政は拡張的なスタンスが維持され、金融政策も依然緩和的だ。足元、こうした状況で市場の安定を維持することの難しさが浮き彫りとなっている。6月末には、政府がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案で、経済成長の実現に向けた「適切な金融政策運営」が非常に重要との文言が加わると報じられた。日銀の利上げへのけん制とみられる文言に対し、市場では財政拡張懸念に加えて、日銀の利上げがインフレに対してビハインド・ザ・カーブとなる(後手に回る)との思惑が広がり、長期金利上昇と円安圧力が生じた。中東情勢の再緊迫化による原油価格上昇もあり、10年債利回りは9日、一時1996年9月以来の高水準となる2.90%を更新した。

 こうした債券・為替市場の警戒感の高まりに対応し、政府は政策へのメッセージを転換している。「骨太の方針」では、上記の文言の代わりに、日銀の独立性を尊重することを明記する意向が示された。さらに片山財務相は10日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内資産の運用を増やす可能性に言及。片山氏の発言はGPIFが国内の株式、債券、不動産などへの投資拡大を意図していると受け止められ、急激な金利上昇は一服した。市場の不安定性に対し、政府は情報発信の調整を通じて対応する姿勢を示している。市場の動揺を踏まえ、14日頃に想定していた「骨太の方針」の各議決定を先送りして財政規律などへの文言を調整すると報じられるが、今後も成長戦略と財政規律の両立を見極めるための市場の警戒は続くだろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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