Today's Insight
2026/1/28 10:00作成
中国:米中通商摩擦を経て不均衡は世界に拡散
■ 2025年は米中通商摩擦が激化するなかでも、中国の貿易黒字は増加した
■ 証券投資を中心に中国の対外投資も増加しており、国際金融市場での影響力を高めつつある
2025年は、米国の対中関税の大幅引き上げにより中国の米国向け輸出が大幅に減少し、対米貿易黒字が減少した。ただし、全体では貿易黒字が一段と増加し、2025年の貿易収支(1兆1889億ドル黒字)は過去最大の黒字を更新した。輸入(前年比変わらず)はほぼ前年並みの水準だったが、米中通商摩擦が激化するなかでも輸出(同5.5%増)は増加した。通年では米国向け輸出(同20.0%減)が大幅に減少した一方で、東南アジア諸国連合(ASEAN)向け(同13.4%増)、欧州連合(EU)向け(同8.4%増)などでは輸出が増加した。ASEAN向けではベトナム(同22.4%増)の増加が目立ち、米国向けの迂回輸出も含まれると推測されるが、対米貿易の停滞が他地域への輸出を促したことを示している。米国の関税政策は米中間の不均衡是正に寄与したものの、世界的な貿易不均衡を一段と拡大させている。中国にとっては外需が内需低迷を補い景気安定化に寄与した反面、米国以外とも通商摩擦を強める要因となっており、特にEUとはバッテリー式電気自動車(BEV)や鉄鋼製品などの輸出を巡り対立が激化している。これまで主に米国と中国の間の問題だった通商摩擦は、世界的な拡散の兆候がみられる。
貿易黒字の増加と同時に、国内外の金融資産負債取引の状況を示す金融収支では赤字が急増している。金融収支は最新データである昨年7-9月期に2405億ドルの赤字を計上し、1998年の統計開始以来最大となった。中国の対外投資を示す資産の変動に着目すると、2023年後半から赤字が増加しており、対外投資を積極化させていることがうかがえる。対外証券投資で顕著に表れており、株式および投資信託受益権、債務証券の両方で赤字が急増している。なお、対外直接投資は2023年半ばまでは赤字が増加傾向だったが、直近2年余りは減少している。非金融部門で基調的に赤字が減少しており、米中対立激化、諸外国の経済安全保障への懸念を背景に中国企業の海外進出が鈍化していることを示唆する。
以上をまとめると、中国の貿易黒字増加は純輸出の拡大を意味し、中国の国内景気減速を和らげる緩衝材の役割を果たしている。同時に証券投資を中心に中国の対外投資も大幅に増加している。貿易不均衡が拡大し、国際金融市場で中国の影響が高まりつつあることは、経済安全保障の観点も含めて諸外国との新たな摩擦の火種となりうると考えられる。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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