Today's Insight

2026/4/10 11:10作成

ECBはエネルギーショックの二次的波及を注視

■ エネルギーショックによるECBのインフレへの懸念は強いが、データはまだ初期変動のみ示す
■ ショックの二次的波及を確認するため、4月会合では様子見姿勢をみせるだろう

 欧州中銀(ECB)は、先進国中銀のなかでも、特に足元のエネルギー価格上昇を受けた成長の減速懸念よりも、インフレ上昇への懸念を強く持っているようだ。ラガルドECB総裁は3月25日のスピーチで、金融政策対応の3つのケースを提示した。3つのケースとは、(1)据え置き:エネルギーショックの大きさが限定的で短命とみられる場合は、古典的な処方であるlook through(先を見越して何もしない)を適用、(2)段階的な利上げ:今回のショックがそれほど持続的ではないものの、インフレ目標の大幅なオーバーシュートを引き起こした場合、慎重な政策調整が正当化される、(3)大幅な利上げ:インフレ率が目標から大幅かつ持続的に乖離するとみられる場合は、強力または持続的な対応が適切、というものだ。7日に米・イラン間の2週間の停戦が合意されたが、合意の持続性や交渉の行方、さらに今後のエネルギー供給がどうなるかは不透明であり、いずれのシナリオに帰結するかを見通すことは難しい。

 今後の利上げの焦点は、エネルギー価格上昇の物価への二次的波及がどうなるか、インフレ期待が変化するかだろう。足元のデータを確認すると、中東での混乱に起因する動きがみられ始めた。インフレ関連では、3月のユーロ圏消費者物価指数(HICP速報値、前年比2.5%上昇)はエネルギー価格の上昇を受けて伸びを大きく高めたが、エネルギー・食品・酒類・タバコを除くコアHICP(同2.3%上昇)は伸びが鈍化するなど、基調的なインフレ率への波及まではみられない。3月のユーロ圏PMI確報値では、投入価格指数が3年ぶりの高水準を記録した一方、産出価格指数の上昇はまだ限定的だった。企業活動関連では、サービス業指数(50.2、同1.7ポイント低下)は低下した一方、エネルギー価格上昇の影響をより強く受けるはずの製造業(51.6、同0.6ポイント上昇)は上昇した。足元では財政支出に支えられたドイツの上昇がその他の国の低下を相殺している。しかし先行関連指標では、新規受注、先行きの企業景況感など軒並み低下しており、4月PMI(23日速報値公表)で製造業指数も低下に転じる可能性がある。企業活動および景気が大きく減速すれば、インフレには下押し圧力もかかる。        

 4月のHICP速報値はECBの政策発表と同日の30日に予定されるが、エネルギー価格の二次的波及やインフレ期待の見極めには時間が必要だ。タカ派(金融引き締めに積極的)とされるシュナーベルECB専務理事も3月27日の講演において、ECBにはデータを分析する時間があるとして、「急いで行動する必要はない」と述べている。4月会合ではECBが様子見姿勢を示す可能性が高いだろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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