Today's Insight

2026/3/9 10:00作成

米国:FRBは難しいかじ取りを迫られるか

■ 労働市場が低水準ながら安定しているとの見方に疑義が生じたが、一時的要因の可能性も
■ 労働市場の悪化とインフレ圧力の高まりが同時進行すれば、FRBは難しいかじ取りを迫られよう

 米労働省が6日に発表した2月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比9.2万人減と、市場予想(同5.9万人増)や前月(同12.6万人増)を大幅に下回り、減少に転じた。過去3カ月平均では同6000人増と、前月(同5.0万人増)から伸びが大きく鈍化した。ダラス連銀は昨年10月に、労働市場の均衡を保つNFPの前月比増加幅を3万人程度との試算を示したが、2月のNFPは労働市場が低水準ながら安定的に推移しているとの見方に疑義を生じさせる結果となった。家計調査に関して国勢調査局がまとめた新たな人口推計値が含まれたことも影響し、失業率は4.4%と前月(4.3%)から上昇した。一方、医療関係者のストライキのほか、大雪など悪天候により建設業やレジャー・接客業などの雇用が悪化するなど、一時的な要因が強く影響している面もあり、今後の労働関連統計を慎重に見極める必要があるだろう。

 中東情勢の緊迫化により、多国籍の海軍助言機関である合同海洋情報センター(JMIC)は商業船舶のホルムズ海峡航行が「ほぼ全面的に」停止していると明らかにしている。トランプ米大統領がイランとの戦闘終結には無条件降伏が条件との見解を示したことで中東における軍事衝突の長期化懸念が高まったほか、湾岸地域の原油貯蓄が限界に達し生産国が減産を迫られるとの見方が強まり、2月末に1バレル67ドル台だった原油先物価格(WTI)は本日一時111ドル台まで急騰している。トランプ大統領は3日、同海峡の航行の安全性を確保するため保険の提供や米海軍による護衛を実施すると表明したが、複数の船主は乗組員の安全確保が最優先事項と指摘していると報じられている。同海峡が航行可能となる兆しがあればWTIが急落する可能性はあるものの、同海峡における軍事的緊張が緩和しない限り原油供給への懸念がくすぶるだろう。米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事は6日にガソリン価格の急騰が数カ月以内に解消されれば将来的に大きな影響が及ぶことはないと述べ、WTIの上昇によりFRBが金融政策の変更を迫られる可能性は低いとの見解を示している。市場では9月の米利下げが見通されているが、労働市場の悪化と同時にインフレ圧力の高まりが同時進行した場合、FRBは難しいかじ取りを迫られよう。


投資調査部長
山口 真弘

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