Today's Insight

2024/10/22 12:00作成

ブラジルレアル:直近のレアル安は徐々に一服と予想

■ 直近のレアル安は、ドル高地合い、鉄鉱石価格の下落、株式市場からの資金流出などが影響か
■ 高水準の実質金利や格上げへの期待感などがレアルを支えようが、政権とBCBの対立は注意

 本稿では、直近のブラジルレアル(レアル)の動向を整理する。10月上旬以降に対ドルでレアル安が進み、8月30日安値(5.6931レアル)をうかがっている。背景は、米利下げ観測の後退に伴うドル高進行のほか、ブラジルが世界第2位の産出量を誇る鉄鉱石価格の下落が、レアル安に寄与しているとみる。また、株式市場ではボベスパ指数が8月28日につけた年初来高値から約6%下落しており、株式市場からの資金流出も影響している可能性がある。ただ、8月5日安値(5.8648レアル)まではまだ距離があるなか、ビッグイベントである11月初旬の米大統領選挙・議会選挙を無事に通過すれば、レアル安は徐々に一服へ向かうと予想する。

 ブラジル国内の要因に絞ると(1)ブラジル中銀(BCB)の利上げ再開、(2)良好な経済環境、(3)信用格付けのさらなる引き上げ期待、などをレアル支援要因として挙げたい。(1)BCBは9月の金融政策決定会合で政策金利を10.75%へ引き上げ、当面は利上げサイクル継続が見込まれる。物価上昇圧力は警戒されているが、9月の消費者物価指数(IPCA)は前年比4.42%上昇にとどまり、実質政策金利(名目政策金利-IPCA前年比上昇率)は6.3%台と高水準を維持。(2)9月3日公表の4-6月期実質GDPは、前年比3.3%増と良好な結果が確認されていた。そのうえ、9月27日公表の6-8月期失業率は6.6%と統計開始(2012年)以降で最低水準を記録し、10月14日公表の8月経済活動指数は前年比3.1%上昇へ上振れなど、経済環境はやや過熱感があるとみる。(3)米格付大手の一社は長期国債格付けを「Ba1」へ引き上げた。目前に迫った投資適格級への格上げが意識されれば、ブラジル国債への投資妙味が高まる見込み。市場のリスクセンチメントが悪化しなければ、これらの要因が意識されよう。

 ただし、今後も(1)と(3)に関連してルラ政権とBCBの財政支出拡大を巡る対立には注目が必要と考える。10月17日に独立財政機関(IFI)は、2026年までに一般政府総債務残高が一段と拡大するとの予測を公表した。10月8日にはルラ政権に近いとされるが現状は利上げを支持するガリポロBCB理事の次期BCB総裁就任が議会上院で承認されたものの、同政権がBCBへ利下げを求める姿勢は変わらないだろう。10月27日に統一地方選挙の決選投票が終了するため、再びルラ政権によるBCBへの圧力が強まる恐れがある。外部環境によりドル高地合いとなった場合、レアル安の流れが続く可能性もあり、注意したい。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

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