Today's Insight
2026/4/13 11:50作成
新興国通貨:中東での停戦合意前後の状況について
■ 2月末以降、原油輸入国の多いアジア新興国通貨が不振だったが、概ね想定された展開に
■ 4月8日の停戦合意後の楽観論は2国間協議不調で抑制も、過度な悲観論は抑えられる見込み
本稿では、中東情勢緊迫化を巡る2月末以降の新興国通貨動向を整理しておきたい。米・イスラエルとイランの対立激化に伴う原油価格高騰を受けて、「エネルギー輸出国買い・輸入国通貨売り」が進んだ。4月8日(日本時間)に2週間の停戦合意が伝わった後、投資家心理の改善などが新興国通貨の買戻しにつながっていたものの、11日と12日に実施された米国とイランの直接協議は不調と伝わり、協議進展か対立再激化か、様子見ムードが広がる見込み。
まず、2月末から4月7日までの対米ドル騰落率で新興国通貨市場の傾向を確認すると、中国人民元(プラスマイナス0.0%)を除き新興国通貨は全面安となった。特に、エネルギー輸入国通貨である南アフリカ(南ア)ランド(マイナス5.4%)、タイバーツ(マイナス4.6%)、韓国ウォン(マイナス4.3%)などが軟調に推移。概ね想定の範囲内ではあったが、南アランドは主要貿易品目である金価格の軟調推移につれた影響が大きく、アジア新興国通貨は構造的に中東に原油輸入を頼っていた痛手が大きかったとみる。他方、中国人民元は、原油輸入国だが電力構成上で石炭火力が約60%、水力が約15%と、相対的に中東からの原油輸送の目詰まりの影響は受けづらいことや、3月物価指標の伸び加速が、元安進行を抑えたと推測する。
8日の米・イスラエルとイランの停戦合意報道を受けて、いったん2月末以降の流れは逆回転していた。具体的に、南アランド、タイバーツ、韓国ウォンなどで買い戻しが優勢となったほか、資源国であり相対的に高い実質金利が好感されたブラジルレアルや、16年ぶりの政権交代へ向けた動きが好感されたハンガリーフォリントが、急上昇している。そうしたなか、11日と12日にパキスタンで実施された米国とイランの停戦協議では進展がなかった。また、次の協議日程が公表されなかったうえ、13日(現地時間)から米海軍がイランの港湾を海上封鎖するとの報道から、金融市場における投資家心理の楽観的な見方は抑えられる見込み。アジアを中心とした新興国通貨の買戻しは、一服する可能性が高い。ただし、当初から2国間の隔たりが大きかった点や再度の直接協議の可能性は残る点から、過度な悲観論も抑えられて新興国通貨が直ちに一段安へ向かう展開は想定しづらいだろう。新興国通貨は上値が重いなかで、米・イラン間で事態がエスカレートしないか、状況を見極める時間帯となる。地域別の強弱では、アジア新興国が弱い一方、中南米は資源国通貨を中心に比較的底堅いと見込む。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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