Today's Insight

2025/8/28 14:00作成

SNB:フラン高は続くが、マイナス金利導入に慎重

■ 7月のインフレ率は2か月連続で伸びが高まったが、スイスフラン高を背景に低水準が続く
■ SNBはマイナス金利導入に慎重だが、対米交渉が続くなか金融・通貨政策は困難を極める

 スイス中銀(SNB)は前回会合の6月19日に0.25%の利下げを実施し、政策金利は0.00%と2022年9月にマイナス金利を解除して以来3年ぶりの低水準となった。声明では、景気先行きは不透明で海外情勢が主要なリスク要因として、マイナス金利も辞さない姿勢を示した。その後発表された7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.2%上昇と2か月連続で伸びが高まったが、スイスフラン(CHF)高に伴う輸入物価の低下を背景に低水準が続く。

 米政府は7日、先進国のなかでは最高水準となる39%の関税率をスイスに発効した(医薬品や一部品目は対象外)。機械・電気産業1100社以上を束ねる国内最大の業界団体スイスメム工業会が26日に公表した会員企業385社対象の調査では、機械及び電気工学系企業の31%が事業合理化と欧州連合(EU)への事業移管計画を進めているという。米関税による企業の労働調整は避けられないとして、政府は従業員の労働時間を減らし賃金低下分を失業保険で補う操業短縮制度を活用するなど、国内企業の規制面における負担軽減を図る。

 本日、4-6月期の実質GDPは詳細が明らかになるが、暫定推計では前期比0.1%増と前期(同0.8%増)から大幅に減速する見込み。サービス部門の生産拡大に対し製造業の生産縮小が響くとみられるが、7月のPMIはサービス業が41.8と製造業の48.8を大幅に下回り、7-9月期以降は景気が一段と減速する恐れがある。また、9月4日に公表される8月のCPIが再び低下し、失業率が悪化傾向をたどれば、SNBが同25日の会合でマイナス金利を導入するとの警戒感は強まる。マーティンSNB副総裁は今月27日に地元紙のインタビューで、インフレ率が今後数四半期に急上昇するとの中銀予測を踏まえデフレを予想していないと指摘。マイナス金利導入は過去の経験から効果的だが、金利がプラス圏にあるなかでの利下げよりもハードルが高いと慎重姿勢を示した。こうしたなか、CHFは足元で上昇基調に戻りつつある。過度なCHF高が進めばSNBは為替介入を実施しCHF高を回避する可能性が高いが、関税率引き下げを目指し対米通商交渉が続くなかで金融・通貨政策は困難を極めることになろう。

投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

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