Today's Insight

2026/2/18 10:50作成

中国:資本取引でも進行する海外との不均衡拡大

■ 海外資本の対中投資はロシアのウクライナ侵攻や中国経済低迷により2022年を境に減少
■ 中国の対外投資は急増し、グローバル化と異なるメカニズムで資本取引の不均衡拡大が加速

 先月のPRESTIA Insightにて、筆者は中国の金融収支における資産の変動に焦点を当て、中国の対外投資を取り上げた*1。このなかで、中国の対外投資の中心は直接投資から証券投資に移りつつあること、米中対立激化、諸外国の経済安全保障への懸念を背景に中国企業の海外進出が鈍化していること、などを指摘した。

 中国の金融収支では、中国への対内投資を示す負債の変動でも近年特徴的な変化が観測される。海外からの資本流入を意味する対内投資は、流入超過であれば黒字が計上されるが、2022年以降、赤字が計上される期間が増加し、海外への資本流出が観測されるようになった。内訳をみると、証券投資で赤字が目立ち、直接投資では2022年を境に黒字額が大幅に減少している。証券投資については不動産不況の深刻化など中国経済の低迷による海外投資家の期待収益率の低下に起因すると考えられる。その一方、直接投資については中国のカントリーリスクが海外企業から厳格に評価されるようになったことに原因が求められる。ロシアのウクライナ侵攻(2022年2月)以降、有事発生時に想定される西側諸国の経済制裁への対応や中国政府による資産没収のコストが意識されるようになったことが対中直接投資に影響を及ぼしていると推測される。証券投資と直接投資で要因や主体は異なるものの、西側諸国の対中投資は抑制され、資本流出が進みつつあることがうかがえる。

 以上のようなマネーフローの累積である対外資産負債残高(2025年9月末時点)は時価変動の影響を含むものの一貫して増加している。対外資産(11兆5073億ドル)は2010年代前半まで主に外貨準備が増加し、2010年代半ば以降は民間部門中心に積み上がっている。2010年代後半までは「一帯一路」構想を背景に直接投資やその他投資(主に貸付金)が伸び、近年は証券投資が増加している。直接投資、証券投資では持分(エクイティ・ファンド持分)投資が大幅に増加している。対照的に対外債務(7兆4597億ドル)は約50%を占める直接投資が2022年以降の資本流入鈍化に伴い伸び悩んでいる。この結果、対外純資産(4兆476億ドル)は2021年末から2025年9月末の間に約2倍に急増した。ロシアのウクライナ侵攻を契機に海外資本の中国離れや中国資本の対外持分投資が促され、従前のグローバル化とは異なるメカニズムで資本取引の不均衡拡大が加速している点は経済的分断の進行を象徴している。

*1 詳細はPRESTIA Insight 2026.01.28「中国:米中通商摩擦を経て不均衡は世界に拡散」


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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