Today's Insight

2025/12/17 10:00作成

欧州諸国:12月政策会合では金利据え置き予想が多数派

■ スイス中銀を皮切りに、欧州中銀、スウェーデン中銀、ノルウェー中銀は政策金利据え置きへ
■ 英中銀は先行きの物価押し下げ圧力と足元の景気減速の見込みから、利下げを急ぐ恐れも

 12月の欧州では11日のスイスを皮切りに、複数の中央銀行が金融政策会合を行う。18日には主要10カ国(G10)のうち、欧州中銀(ECB)、英中銀(BOE)、スウェーデン中銀、ノルウェー中銀と、4つの中銀による結果発表が集中する。ゼロ金利を維持したスイス中銀に続き、ECBは2.00%、スウェーデン中銀は1.75%、ノルウェー中銀は4.00%で政策金利を据え置く公算が大きい。対して、BOEは政策金利を3.75%へ25bps引き下げると見込まれている。

 BOEの利下げ観測は、前回11月の金融政策委員会(MPC)直後から強まった。11月MPCの政策金利据え置き決定は5対4の僅差だったが、ベイリーBOE総裁は11月MPC後に「現在の市場の織り込みは私の立場の的確な説明に近い」と指摘した。その後、11月26日に公表された秋季予算案の影響について、ロンバルデリBOE副総裁(利下げ反対派)が2026年4-6月期から年間インフレ率が0.4-0.5%ポイント程度押し下げられると発表。加えて、8-10月の実質GDPは前期比でマイナス成長に陥っており、先行きの物価押し下げと足元の景気減速に対する懸念から、ベイリーBOE総裁は12月MPCで利下げ賛成に回ると見込まれる。12月MPCで来年の利下げペース加速まで言及された場合、ポンドは一段と押し下げられる可能性もある。

 一方で、残る3つの中銀を取り巻く経済環境は比較的落ち着いており、次の政策決定のヒントを待つ。ECBはシュナーベル専務理事が次の政策変更が利上げになる可能性に言及したが、ラガルドECB総裁を含むECB高官からは、当面の政策変更が視野に入っていない様子がうかがえる。今後の景気・物価動向を踏まえて、次の金融政策変更を巡る議論まで言及するか、注目される。残る2カ国の景気・物価動向では、ノルウェーは11月の消費者物価指数(CPI)上昇率が総合(前年比3.0%)とコア(同3.0%)ともに鈍化のうえ、7-9月期の実質GDP成長率は前期比1.1%へ伸びが加速した。11月時点でバーチェ総裁は利下げを急がず、今後1年以内での利下げ方針を示した。12月政策会合で金利見通しが更新されるが、現時点で金融市場では来年央の次回利下げ実施を見込む。スウェーデンも11月CPI上昇率(総合)が前年比0.3%まで鈍化のほか、7-9月期の実質GDP成長率が前年比2.6%に伸びが加速。前回11月政策会合では声明で「政策金利は当面、この水準にとどまると予想」としていた。これら3つの国・地域の通貨は、目先ドル安や円安が進んだ場合、恩恵を受けやすいのではないか。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

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