Today's Insight
2025/5/19 10:30作成
日本株:上値の重い展開が続く
■ 企業業績見通しの下方修正幅を見極めようと、株価は当面割安圏で推移か
■ 目先は関税協議の行方とあわせて為替協議が持ち出されるか注目したい
日経平均はトランプ米大統領が3月26日に、すべての輸入自動車に対し事実上25%の関税を課すと発表したことで、この日の終値3万8027円を起点に下落基調に転じた。その後、4月2日に相互関税の詳細が発表され、景気や企業業績への悪影響を懸念した売りが幅広い銘柄に広がり、この日の終値3万5725円から7日には一時3万792円まで下値余地を広げた。9日に相互関税が発動されたが、直後に上乗せ部分の90日間一時停止が発表されたことで、大幅反発となった。その後、トランプ米大統領がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任を否定したほか、日米関税交渉の進展期待や米中通商摩擦の激化懸念の緩和を受けて、投資家のリスク選好が回復した。さらに、米国が8日に英国と、12日に中国と関税の一部引き下げで合意し、5月13日には一時3万8494円まで上昇した。
株価は関税の影響を受けた急落前の水準を回復したものの、関税引き上げ以前と比較すると景気や企業業績の見通しは下方修正されるはずだ。金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計によれば、TOPIXの2025年度予想一株あたり利益(EPS)成長率は先週末時点で6.2%と、3月下旬(8.5%)から下方修正されてきている。ただ、同期間の予想株価収益率(PER)はさほど低下しておらず(13.8倍→13.2倍)、割安感が高まったようには感じられない。かねてより、TOPIXの株価水準に関しては、PER12-14倍が割安圏、14-16倍が割高圏との認識を示してきたが、企業業績見通しの下方修正幅を見極めようと、当面は割安圏での推移が続くとみておくべきであろう。なお、現在のNT倍率(13.78倍)から日経平均の割安圏を推計すると、3万3650-3万9250円となる。
3月期決算企業の2026年3月期の業績予想が概ね出揃い、TOPIXの純利益の合計は前期比で減益になることが見通された。米国の関税政策の影響が大きい景気敏感株の慎重姿勢が目立っている。米中間で関税の一部撤廃や大幅引き下げで合意に至ったものの、今後の通商協議の行方を見極める必要がある。また、目先は20-22日に開催される主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議にあわせて予定される日米財務相会談で為替が議題となるか、日米通商協議で相互関税や自動車・鉄鋼・アルミニウムなどの品目別関税について歩み寄りがみられるか、などが注目される。歩み寄りがみられない場合には、投資家のリスク許容度が再び悪化に向かう可能性があり、当面は株価下振れリスクを警戒しておきたい。
投資調査部長
山口 真弘