PRESTIA Insight

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Today's Insight

2019/3/19 11:00作成

EU離脱問題は混沌としたままヤマ場を迎えた

■ EU首脳会議前に離脱協定案を可決させるというメイ首相のプランに大きな狂いが。
■ 短期の離脱延期は現実的でなく、長期も交渉が難航する可能性。「合意なき離脱」のリスクも。

 21、22日の欧州連合(EU)首脳会議を前に、メイ英首相は「離脱協定案が3度目も否決されれば離脱延期は長期になる」と主張し、再度の国民投票などで離脱自体が覆る可能性が浮上することを嫌う離脱強硬派の翻意を迫ることで支持獲得を目指していた。しかし、バーコウ英下院議長が18日、「2度にわたり否決されている同首相のEU離脱協定案を再採決することはできない」との見解を示したことで同首相のプランは暗礁に乗り上げた。今後の展開は不透明だが、いずれにせよ29日に迫る期限を延期できるか否かが焦点となる。

 EU側は、離脱延期を認めるには具体的な離脱案が必要とのスタンスを示しているが、英国のEU離脱計画を根本的に見直すには時間を要するため、トゥスクEU大統領は「長期の離脱」には理解を示している。しかし、仮にメイ首相がEUに「長期の離脱延期」を要請するならば、受け入れにはEU加盟27カ国全ての合意が必要となるうえ、5月23-26日に予定されている欧州議会選への参加の有無やEU拠出金負担、具体的な延長期間などの問題が生じるため、それらを巡って英国とEUの交渉が紛糾する可能性は小さくないだろう。一方、「短期の離脱延期」を目指すには、やはり英議会が同首相の離脱協定案を受け入れることが必須となる。バーコウ英下院議長は「首相が新たな提案、もしくは12日に否決されたものとは異なる内容の案を提出するのであれば問題ない」としているが、残された時間はわずかである。英議会が可決可能な新たな案にするには、離脱後から2020年末までの移行期間中に北アイルランドの国境管理問題が解決しない場合、英国がEUの関税ルールに無期限にとどまる可能性がある規定(いわゆるバックストップ条項)を大幅に修正する必要があろうが、それは現実的ではないだろう。

 よって、時間切れによる「合意なき離脱」のリスクは排除できないどころか、同首相のプランに大きな狂いが生じた分だけ可能性は高まったといえよう。29日の期限直前まで事態が二転三転し、金融市場においてリスク回避ムードが高まることも想定しておくべきではないか。



投資調査部
マーケットアナリスト
佐溝 将司

注目のチャート

2019/3/18 10:00

自動車関税が米大統領の関心事になりそうだが・・・

自動車関税が米大統領の関心事になりそうだが・・・

 トランプ米大統領が公約に掲げた通商関係の項目(1)北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、(2)環太平洋連携協定(TPP)からの脱退、(3)中国を為替操作国に指定、(4)不公正貿易を調査・終了させる、の4点のうち(1)(2)を終了、(3)は形を変えつつ大詰めを迎えている。米中通商協議の結末にも関わるが、次は(4)について確かな成果を挙げたいところだろう。こうしたなか2月中旬に米商務省が自動車関税に関する報告書で勧告した措置につき、大統領は90日以内に実施の是非を決定する必要がある。図表のように2018年の米国の自動車輸入台数は822万台と前年(827万台)から若干減少も高水準を維持。国別ではNAFTA加盟のメキシコ(266万台)とカナダ(加)(167万台)、日本(172万台)、欧州連合(EU、116万台)で9割を占める。
 批准はまだだが、NAFTAに代わる新協定(USMCA)では、米国への自動車輸出につき、台数は各260万台、部品は加が324億ドル、メキシコが1080億ドルまで追加関税の対象外とする救済措置が設けられている。自動車輸出台数は好況だった2018年並みのうえ、部品輸出額(2018年実績:加175億ドル、メキシコ594億ドル)には十分な伸びしろがある。今年は日本とEUの自動車輸出がトランプ大統領の関心事になりそうだが、同氏がちらつかせる最大25%の追加関税賦課が実現すれば、自動車価格上昇を招くのみ、との見方が大勢だ。最終的には、USMCAのようにさほど厳しい内容にならない可能性もありそうだ。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
白鳥 朋子

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