Today's Insight
2026/3/16 10:30作成
中国:経済的自立を志向する五カ年計画
■ 中国は新たな五カ年計画で、1人当たりGDPの向上など成長の質を重視した目標を設定
■ 経済的自立に向けた不可逆的な戦略の布石として「質の高い経済発展」を最重視
中国の全国人民代表大会(全人代)は、2026-2030年の新たな五カ年計画となる第15次五カ年計画(「十五五」)などが採択され12日に閉幕した。中国共産党は、創立100周年となる2021年の「小康社会の全面実現」を経て、中華人民共和国建国100周年にあたる2049年の「社会主義現代化強国の全面実現」を次の長期目標に定めている。「十五五」は、その中間目標である2035年の「社会主義現代化の基本的実現」の基礎固め期間と位置づけられている。
新たな五カ年計画となる「十五五」では、「質の高い経済発展」を中心的な課題に据えており、成長の質の向上やその実現に向けた経済構造の最適化が重視される。20項目の指標目標が設定された。過去の五カ年計画で掲げられていた成長率目標の具体的な水準は示されず、前回の五カ年計画に続いて「合理的な範囲を維持」して各年の状況に応じて目標を設定する方針とされた。2035年までに1人当たりGDPを2020年時点から倍増させ中等先進国水準に到達することを中期目標に定めており、この目標達成への基礎固め期間となる今後5年間はGDP成長率よりも1人当たりGDPの向上を意識した経済政策運営が見込まれる。「経済発展」以外の分野での主な定量目標では、「イノベーション駆動」でデジタル経済中核産業の付加価値総額がGDP比12.5%(前回計画:同10.0%)へ引き上げられ、研究開発投資は年平均7%増加の前回計画の目標値が保たれている。
「重大戦略任務」には、「質の高い経済発展(科学技術の自立自強や技術革新・重要技術強化など)」、「国内大循環の強化(内需拡大や国内統一市場の構築など)」、「共同富裕の推進(雇用、所得、社会保障などの民生向上)」、「発展と安全の統合的推進(エネルギー、食糧を含む国家安全保障)」の4項目が挙げられた。また、これらの達成に向けて6分野109項目の重要プロジェクトが提示され、ハイテク、デジタル、グリーン分野での新産業育成や市場創造を通じた内需主導の経済構造への転換、安全保障強化などを目指していく方針が確認された。「強大な国内市場構築」を筆頭に掲げた2026年の「政府工作任務」と対照的に「質の高い経済発展」が「国内大循環の強化」よりも上位に据えられた点から、中国政府が中長期的には経済構造改革を最重視していることが示唆される*1。米国とのデカップリング(経済的分離)、供給網の再構築、自国中心の経済圏形成に向けた不可逆的な戦略の布石と考えられる。
*1 2026年の目標はPRESTIA Insight 2026.03.10「中国:成長減速を容認して経済構造改革を加速」
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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