Today's Insight
2026/3/2 11:30作成
中東情勢:事態は緊迫、長期化か、沈静化か
■ 米国とイスラエルは昨年6月に続きイランをミサイルで攻撃、今回は深刻な状況を招いている
■ 楽観シナリオは「ベネズエラ・ケース」の踏襲、悲観シナリオは紛争地域拡大と長期化を想定
2月28日に米国はイスラエルと共同でイランへのミサイル攻撃を実施した。本稿執筆時点で、地上部隊の派遣は確認されていない。同26日に米国とイランはオマーンのバドル外相を仲介役としてスイス・ジュネーブで3回目の核協議を実施したばかりで、1週間以内に4回目の核協議が行われる予定と伝わっていた。
週明け(3月2日)のアジア市場は、原油先物価格が急騰している。これは、世界の原油輸送量の約2割が通過するホルムズ海峡が、イラン海軍によって事実上封鎖されていると伝わったことが直接の引き金だろう。昨年6月21日に米国とイスラエルはイランの核施設に対してミサイル攻撃を行ったが、この時はイランから両国に対する報復が限定的にとどまり、ホルムズ海峡封鎖までは至らなかった。そのため、当時金融市場での懸念は2週間ほどで和らいだ。
今回、原油価格が大きく反応しているのは、米国とイスラエルがイランの体制転換までを狙っている点が従来と異なっているためと推測する。3月1日、米国とイラン双方の主要メディアはイランの最高指導者を含む複数の軍高官の死去を発表した。イラン国内では有力政治家のラリジャニ氏が臨時指導部を設置したと伝わるなか、トランプ米大統領はイラン国民に対して体制転換を扇動している。イランの現指導部が従来と異なる反撃を行う恐れもある。
今後の事態は流動的だが、現時点での大まかなシナリオを2つ示したい。楽観的なシナリオでは、現体制が親米派へ転換したうえで引き続きイラン国内を統治する状況を想定する。これは、今年1月に米軍がベネズエラ首都を急襲して当時のマドゥロ大統領の身柄を拘束した点と、その後の米国の対応に沿ったものだ。イランではすでに複数の軍指導者が不在のうえ、複数部族の集合体であるイラン国内の治安を維持するうえで有効な手段と米政権が考慮する可能性は高い。この場合、事態は沈静化へ向かうだろう。一方で、最も悲観的なシナリオでは現指導部の最終的な反撃として核戦力の使用までも想定される状況だが、そこまでエスカレートしないケースでもイスラエルを含む中東全域まで報復対象を拡大して事態が長期化する、というものが挙げられる。原油価格高止まりから世界的な物価上昇へ波及する点が懸念されるほか、最も悪影響が大きくなるのは、中国、日本、インドなどアジアの原油輸入国と考える。初期反応としてのリスク回避から景気動向まで影響を及ぼす状況に転じるか、に注目したい。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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