Today's Insight
2026/4/14 10:30作成
米国:エネルギー主導のインフレ加速と金融政策対応
■ 3月以降の物価関連データはエネルギー費目を中心に当面のインフレ加速を示唆
■ 天然ガス価格の安定、ドル高、景気抑制的な政策金利で米国の政策対応余地は他国より大きい
米国では3月以降の物価関連統計の発表が始まり、エネルギー価格急騰後の物価動向や期待インフレ率が明らかとなりつつある。3月の消費者物価指数(CPI)は総合(前年比3.3%上昇)、食品・エネルギーを除くコア(前年比2.6%上昇)ともに上昇ペースが加速した。ガソリン、燃料油などのエネルギーが急上昇し、総合指数は前月比で2022年6月以来の上昇率を記録した。ただし3月時点では、最大の構成項目である住居費をはじめ、多くの財・サービス費目の価格転嫁は限られており、基調を示すコアCPIの上昇ペースは相対的に緩やかだった。
サーベイデータでも当面はインフレが加速することが示唆されている。3月のISM景況感指数では、製造業、非製造業ともに仕入価格指数や入荷遅延指数が急上昇し、調達価格の上昇ペース加速やサプライヤーからの納期が長期化していることが示された。NY連銀が実施する3月の消費者期待調査では、3年先(3.1%)、5年先(3.0%)の期待インフレ率が2月時点から小幅な変化にとどまるなか1年先(3.4%)は明確に上昇した。4月のミシガン大学消費者調査(速報値)でも、3月以降の期待インフレ率の累積上昇幅は1年先(4.8%)の方が5年先(3.4%)よりも大きい。いずれも短期的なインフレ加速が予想されている一方で、現時点では中長期的な期待インフレ率に急激な変化はみられていない。クリーブランド連銀が公表しているナウキャスティング(4月13日時点)では、4月のCPIは総合(前年比3.58%上昇)の上昇ペースは加速すると推計されている一方、コア(同2.56%上昇)は3月とほぼ同じペースでの上昇が見込まれている。
米国の原油指標価格であるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は欧州、アジアの指標価格と同様に大幅に上昇しているが、天然ガス指標価格であるヘンリーハブ先物は欧州、アジアの指標価格が急上昇するなかでも安定している。エネルギー価格上昇は欧州やアジアよりも小幅となり、3月以降進行したドル高もインフレ圧力を和らげる効果が期待される。現時点でエネルギー価格高騰が基調的なインフレ率や中長期的な期待インフレ率の上昇に波及する状況には至っておらず、米連邦準備理事会(FRB)はエネルギー価格高騰の継続期間、価格転嫁、財・サービスの需給などを見極める姿勢を継続することが見込まれる。また、政策金利の誘導目標は中立金利を上回る水準に設定されており、物価動向を見極めるための余地はユーロ圏、日本よりも相対的に大きいと考えられる。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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