Today's Insight

2026/3/27 11:00作成

米国債:イラン攻撃で何が織り込まれたのか

■ 物価や金融政策に対する中期的な見通しが修正され、米国債利回りは中期国債を中心に上昇
■ 一巡後は見通しの不確実性を反映して長期・超長期国債へ利回り上昇が波及か

 米国、イスラエルがイランへの攻撃を開始した2月28日以降、原油などのエネルギー価格の急騰に連動して国債利回りは世界的に大幅上昇している。石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の実質的な封鎖状態が長期化の様相を呈しつつあり、債券市場では、エネルギーや石油製品などの供給制約による物価高騰観測が経済活動停滞に対する懸念を上回っていることがうかがえる。

 米国債は2月27日時点と比べて全年限で利回りが上昇しているが、主要年限では残存2年から5年にかけての中期国債の利回り上昇が目立ち、イールドカーブはフラットニング(平坦化)している。背景には期待インフレ率の上昇と米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測の後退が挙げられ、いずれもエネルギー価格高騰の影響が長期・超長期よりも中期的に大きく表れると評価されている。物価連動国債に反映される期待インフレ率であるブレークイーブン・インフレ率(BEI)の期間構造をイラン攻撃直前の2月27日時点と比較すると、期間10年以降の長期・超長期ではわずかな上昇にとどまるが、期間5年程度までは上昇幅が相対的に大きく、期近ほど大幅に上昇している。また、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の期間構造は、2月27日時点では今後の利下げが織り込まれ右肩下がり形状であったが、3月26日の最新データでは非常に緩やかながら右肩上がり形状に転じており、利下げ織り込みは明確に修正された。

 イラン攻撃前までは関税率が引き上げられるなかでもインフレが比較的制御されていたため、労働市場の減速に対応してFRBが3.0%程度の中立金利水準まで段階的に政策金利を引き下げていくことでFRBと債券市場の見解は概ね一致していた。当面の物価見通しの前提が一変したことにより、エネルギー価格高騰の影響が見通せるようになるまでフォワードルッキングに(先を見越して)金融政策を調整する障壁は高く、FRB議長の交代後もこの状況は変わらないだろう。イラン攻撃後の初期反応では、主に中期的な物価や金融政策への影響が織り込まれたが、織り込み修正の一巡後は将来的な物価や金融政策に関する見通しの不確実性が高まったことが反映され、その対価であるタームプレミアムの拡大によって長期・超長期国債利回りにも上昇が波及していくと考えている。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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