Today's Insight

2020/11/20 10:00作成

看過できないサービスのデフレ

■ コロナ禍において、景気は底入れしたものの、物価下落圧力には歯止めが掛かっていない
■ ユーロ圏、日本でサービスの物価下落が顕著。購買力平価説では、物価下落は通貨高要因に

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、政府・中央銀行による巨額の財政・金融政策が奏功し、景気は底入れしたものの、物価下落圧力には歯止めが掛からず、先進国ではディスインフレ、デフレに対する懸念が強まりつつある。日米欧の消費者物価指数(CPI、ユーロ圏はHICP)の最新10月のデータを見ると、食品・エネルギー除くコア指数は、米国(前年比1.6%上昇)、ユーロ圏(同0.2%上昇)、日本(同0.2%下落)ともに3月以降、鈍化傾向が鮮明となり、いずれも中央銀行のインフレ目標を下回っている。

 一般的に景気後退期は、需要の急激な減少によりデフレギャップが拡大するため、物価下落圧力が強まる傾向がある。昨冬以降のコロナ禍においては、サービス価格に対する下押し圧力が強まっている点が特徴である。特に欧州、日本で顕著で、ユーロ圏(同0.4%上昇)では1997年の統計開始以来の最低値更新が続き、日本(同0.8%下落)ではリーマンショック時の最大下落幅(2010年5月:同1.2%下落)に接近している。ドイツの付加価値税率引き下げ(7月から12月までの暫定措置)や、日本の「GoTo」キャンペーンに代表される各国の観光支援策などの政策的要因も含まれるが、コロナ禍で需要が急減した宿泊、娯楽、外食などの品目で物価下落が目立っており、サービス需要の減少が間接的に示されている。前年比ベースでは、数値上、コロナ禍から1年経過する来年には物価下押し圧力は和らぐ見込みだが、サービス需要がコロナ禍以前の水準に戻る保証はなく、本格的な物価上昇は期待しづらい。

 ユーロ圏、日本での物価低迷は、構造的なユーロ高、円高を促し得る点に注意が必要だ。米国でも同様にサービス価格に対する下押しは観測されるものの、欧州、日本よりも物価上昇率は相対的に高いため、購買力平価説に基づけば、対ドルベースではユーロ、円の増価圧力として作用することになる*1。ユーロ圏、日本では、景気後退脱却後も自国通貨高が景気を抑圧し、いわゆる長期停滞(もしくは通貨高不況)に陥り景気低迷が長期化する素地が整いつつある。

*1 為替レートは2国間の通貨の購買力により決まるという考え方。この考え方に基づくと、物価上昇率が高い国ほどその国の通貨価値が減価するため、為替レートに対しては下落圧力が強まることになる

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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