Today's Insight
2024/11/1 11:15作成
日本株:政治的不透明感が重しとなるか
■ 野党の財政拡大策への要求を与党が受け入れるとの見方から、短期的には円安株高に作用
■ 政治的不透明感が長期化すれば、株価下押し圧力に
10月27日の衆院選で与党が過半数の議席を獲得できず、週明けから与野党ともに新たな政権の枠組みを探る展開となっている。石破首相の選択肢は(1)連立政権の拡大、(2)政権交代、(3)少数与党での政権継続、の3つである。
議席数を勘案すれば国民民主党と日本維新の会の動向が注目されるが、両党とも連立を拒否しており、(1)については現時点で可能性が低いとみられる。また、(2)について、野党第1党の立憲民主党は分配重視の財政拡張路線から野田代表のもとで財政健全化路線に転換しているほか、インフレ目標ゼロ%以上を掲げるなど金融政策正常化に前向きとみられる。金融緩和継続を志向する国民民主党とは相容れないと思われ、可能性は低いだろう。
(3)が最も蓋然性が高いと考えられ、与党は法案成立に向けてその都度、野党の賛同を得る必要がある。両党とも減税など財政拡大を求めているほか、国民民主党は金融所得課税の強化を行うとしており、与党は法案成立のためにこうした主張を受け入れる必要があるだろう。金融市場では財政拡張への期待が高まり、短期的には円安・株高に作用しているようだ。一方で、政策決定までの時間がかかるとみられ、来年7月の参院選に向けて政治的な不透明感が高まり、時間の経過とともに海外投資家の日本株に対する信認が低下する可能性がある。
総選挙の結果を受けて、石破首相は続投の意向を示しているが、党内での求心力は大きく低下している。ただ、自民党総裁選で石破氏と争った高市氏も、総裁選の際の推薦人だった衆議院議員および旧安倍派議員の過半数が総選挙で落選しており、党内基盤が揺らいでいる。そのため、足元で自民党総裁交代を求める声は強まっていない模様だ。今後内閣支持率が低下していくようであれば、自民党総裁交代への勢いが強まり、政治的不透明感が株価を下押しする可能性があり警戒したい。
投資調査部長
山口 真弘