Today's Insight

2025/11/14 11:00作成

米国株:7-9月期決算 中間レビュー

■ AI需要の拡大期待により、S&P500のEPSは前年比16.8%増と事前予想を大幅に上回る見込み
■ AI関連の過剰投資懸念がくすぶるが、需要拡大期待は強く、S&P500は上昇基調を維持しよう

 S&P500構成企業のうち446社が先週末までに7-9月期決算発表を終えた。来週には小売大手に加え、19日に半導体大手の決算発表が控えており、今四半期のクライマックスを迎える。金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計によれば、このうち83%の企業が市場予想を上回る一株あたり利益(EPS)を公表した。EPSは前年比16.8%増(発表済み企業は実績、未発表企業は市場予想)と、決算発表直前にあたる10月初めの市場予想(同8.8%増)を大きく上回ると見込まれ、セクター別では、情報技術(IT、同22.2%増→28.5%増)、金融(同12.4%増→25.0%増)、不動産(同18.3%増→22.8%増)、などが事前予想を上回った。7-9月期EPS成長率(16.8%)に対するセクター別寄与度をみると、ITセクターが6.4%ポイントとなったほか、ITを除く10セクターが10.4%ポイントと高い伸びを示しており、7-9月期決算は良好な結果と評価されよう。ハイテク大手の決算では人工知能(AI)関連需要の拡大期待が保たれた一方、一部企業による巨額のAI関連投資の収益性に対する懸念が再燃した。これを受けて足元の株式市場ではハイテク・半導体大手を中心に売りに押される展開となっている。

 市場では10-12月期のEPSが前年比8.0%増と予想されるほか、米連邦準備理事会(FRB)の利下げにより米経済の軟着陸(ソフトランディング)期待が保たれるなかで、向こう1年予想EPS成長率は高水準が維持されている。各年の予想EPS成長率に対するセクター別寄与度をみると、2025年が12.5%のうち5.4%ポイントを、2026年が13.8%のうち5.7%ポイントを、それぞれITセクターが占める。ハイテク・半導体セクターの業績拡大に市場の関心が集中する構図は当面変わらないと思われる。

 向こう1年予想株価収益率(PER)は23.3倍と、ITバブル期の1999年7月(24.5倍)の水準に接近しつつある。ITセクターは31.8倍と2000年4月(48.3倍)の水準を大きく下回り、ITバブルほどの過熱感はないものの、足元の株価は割高感が非常に強い。AI関連投資の収益性に対する市場期待が調整され、株価が下落する局面は当然に想定される。それでも、AIの社会実装が進展するなかで、決算発表などを通じてAI関連の需要拡大を確認しながら株価は上昇基調をたどるとみる。S&P500は当面高値圏で上下動し、その後は緩やかな上昇基調を想定しており、来年後半にかけて7400-7600ポイントまで上昇余地を拡大すると考えている。


投資調査部長
山口 真弘

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