Today's Insight
2025/8/8 9:45作成
米国:銀行は融資需要の鈍化を報告
■ 米銀が信用リスクの高まりを警戒する様子はうかがえない
■ 融資需要の鈍化は経済活動の停滞を示唆する可能性も
米連邦準備理事会(FRB)は4日に、最新のシニア・ローン・オフィサー・オピニオン・サーベイ(SLOOS)を公表した。これはFRBが米金融機関の融資担当者に対して3カ月前と比較した融資基準や資金需要などの変化について四半期ごとに聞き取り調査を行うもので、調査対象となる金融機関は6月18日に調査票を受け取り、7月2日までに回答した。
大・中企業(年間売上高5千万ドル以上)向け商工業ローンの融資需要DI(全回答に占める需要増加の割合-需要減少の割合)はマイナス28.6と、前回の4月調査(マイナス20.3)からマイナス幅を拡大し、融資需要の継続的な減少が示された。個別行の回答内容をみると、過去3カ月間で融資需要がやや減少したとの回答数が増加し、設備投資や企業の買収・合併(M&A)への意欲が低下した模様である。また、融資基準DI(全回答に占める厳格化の割合-緩和の割合)は9.5と、前回調査(18.5)から低下したものの厳格化領域を保っている。厳格化したと回答した金融機関は理由として、経済見通しの不透明感に加え、法規制の変更や監督行動の変化などを挙げており、米政権の政策を巡る不確実性が影を落としている。
家計向けの融資需要DIに関しては、ジャンボローン(富裕層向け大型住宅ローン、マイナス7.5→マイナス11.5)で減少幅が拡大したほか、クレジットカード(マイナス14.8→マイナス12.5)では新型コロナ禍以降でマイナス幅が最大となった前期からやや回復したものの、家計向け融資需要の弱さが示された。融資基準DIでは、ジャンボローン(7.5→ゼロ)などで厳格化傾向が一巡した一方、クレジットカード(5.6→10.4)では再び厳格化方向に転じた。1-3月期の新規延滞率は住宅ローン(3.61→3.71%)で前期比上昇となった一方、自動車ローン(8.08→7.99%)、クレジットカード(8.96→8.75%)で低下し、2024年後半から上昇基調が一巡している。
企業向け、家計向けともに、融資基準は厳格化領域を保つなか、融資需要が総じて減少したことが示された。4-6月期の米実質GDPで個人消費や設備投資が軟化したことと整合的な結果となった。金融機関が信用リスクの高まりを警戒して融資を絞っている様子はうかがえないものの、融資需要が鈍化しているとの回答からは経済活動の停滞が示唆される。7-9月期の米景気減速を警戒すべき回答結果だったと判断される。
投資調査部長
山口 真弘