Today's Insight
2025/12/8 10:30作成
グローバル:2年国債利回りが示す各国の金融政策
■ 日米欧の2年国債利回りは方向性の乖離が目立つようになっている
■ 日本は中立金利下限超への利上げ、米国は利下げペース減速、ユーロ圏は利上げ再開を示唆
主要国の国債利回りは世界的に連動して変化する傾向があるが、直近半年間はこの傾向が崩れ、各国で異なるトレンドが生じている。一因には金融政策の差異が考えられ、金融政策の影響が大きい2年国債利回りからこの傾向を読み取ることができる。
日米欧の2年国債利回り*1は、いずれも米国が「相互関税」の詳細を提示した4月に大幅低下し、低下が一巡した5月ごろから方向性の乖離が目立つようになった。日欧では利回りの上昇基調が強まる一方、米国では短期的な変動を伴いつつ基調的な低下が継続している。金利決定理論のひとつである純粋期待仮説に基づくと、2年国債利回りは先行き2年間の政策金利見通しの平均値を示していると考えることができる。12月5日時点の2年国債利回り(日本:1.05%、米国:3.56%、ドイツ:2.10%)と政策金利の誘導目標*2(日本:0.50%、米国:4.00%、ユーロ圏:2.00%)を比較すると、日欧では2年国債利回りが政策金利を上回り、米国は2年国債利回りが政策金利を下回っている。現在の中央銀行の方針では、日本は利上げ、米国は利下げ、ユーロ圏は据え置きがそれぞれ志向されており、短期金融市場でも今月、日本で0.25%の利上げ、米国で0.25%の利下げの実施が概ね織り込まれている。
日本では今後2年間の政策金利の平均値が1.00%を上回り、日銀が推計している中立金利(1.0-2.5%)の下限を上回る水準への利上げ継続が債券市場で見通されていることになる。米国では2年国債利回りが0.25%利下げ反映後の政策金利を下回っており、さらなる追加利下げが見通されている。ただし10月ごろより米2年国債利回りは3.50%前後で基調的な低下が止まりつつある。現在の利回りは、9月の「経済見通し概要(SEP)」で示された米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通し(中央値)の政策金利経路に基づく水準に概ね一致する。ユーロ圏では2年国債利回りの上昇が続き、政策金利の水準を上回り始めている。現時点で今後2年以内の利上げの蓋然性が高まっている訳ではないものの、今後も2年国債利回りの上昇基調が続く場合は現実味を帯びるようになろう。日本では中立金利下限を上回る水準への利上げ継続、米国では利下げペース減速、ユーロ圏では利上げ再開を前提とした債券市場の価格形成が進んでおり、現在のトレンドが継続するのであれば金融政策の見方にも修正が迫られよう。
*1 本稿では、欧州国債利回りとしてドイツ国債利回りを参照している
*2 日本、米国は誘導目標の上限、ユーロ圏は誘導目標の下限(中銀預金金利)をそれぞれ参照している
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



Japanese
English


