Today's Insight
2025/10/15 11:30作成
米国株:7-9月期決算プレビュー
■ S&P500構成企業のEPSは前年比8.8%増と予想され、実績が予想をどの程度上回るか注目
■ 株価は高値圏を維持しじり高を想定するが、株価調整が生じた場合は深度の見極めが重要に
米国では14日の金融大手を皮切りに、主要企業の4-6月期決算発表が本格化している。週内には米金融大手のほか、台湾の半導体受託生産大手、オランダの半導体製造装置大手も決算発表を予定している。第3週(20-24日)に米動画配信・半導体・電気自動車大手など、第4週(27-31日)には輸送・資本財・ハイテク・スマートフォン大手など、が決算発表を行い、ここまでに「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれるハイテク大手7社のうち6社が含まれ、決算発表はいったん山場を迎える。その後も11月第1週(3-7日)から第2週(10-15日)にかけて半導体・通信大手など、第3週(17-21日)に小売大手や19日にM7の残り1社の半導体大手の決算発表が予定されており、個別企業の決算発表から目を離せない。
金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計(10日時点)によれば、S&P500構成企業の7-9月期の一株当たり利益(EPS)は前年比8.8%増と予想されている。関税引き上げによる企業業績への悪影響は限定的とみられている模様で、向こう1年予想EPS成長率は13.3%と高水準が維持されている。S&P500の向こう1年予想株価収益率(PER)は22.3倍と、2018年以降の平均(19.1倍)を大きく上回り、割高感を強く警戒すべき株価水準にある。それでも、台湾の半導体製造装置大手の月次売上高は高い伸びを維持しており、人工知能(AI)関連需要の底堅さが意識されるなか、情報技術(IT)セクターがEPS成長のけん引役になることが見込まれている。また、9月に米連邦準備理事会(FRB)の利下げが再開され、米経済の軟着陸(ソフトランディング)観測が一段と強まったことも株価が下支えされる要因となるだろう。一方、AI関連投資の収益性や電気自動車の需要減少への懸念が強まる局面があり、利益成長期待を加味してもハイテク大手が含まれるコミュニケーション・サービスや一般消費財セクターの割高感は非常に強くなっており、M7のなかでも循環物色が生じにくくなっている。当面の株価は調整局面をこなしつつ高値圏で高下し、緩やかな上昇基調をたどるとみている。
なお、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は9月23日の講演で、資産価格はかなり割高に評価されているようだと指摘した。また、国際通貨基金(IMF)は10月14日に公表した国際金融安定報告書で4月に生じた短期的な調整局面の後、リスク資産の割高感が再び高まっていると評価したほか、世界的な財政赤字拡大による国債市場の膨張やノンバンク金融仲介機関(NBFI)の規模拡大により、金融市場が不安定化した場合には幅広い金融市場にこれまでより大きな悪影響が及ぶと警鐘をならしている。今後生じうる株価調整が水準訂正にとどまるものか、景気や企業業績に悪影響を及ぼすものかを見極めることが重要となるだろう。
投資調査部長
山口 真弘