IMFは貿易摩擦への警戒感を強める

■ IMFは世界経済の成長率見通しを約2年ぶりに下方修正
■ 貿易摩擦の影響試算を7月時から上方修正し、来年以降のリスクシナリオとして警戒を強める

 国際通貨基金(IMF)は9日、最新の世界経済見通し(World Economic Outlook, WEO)を公表。2018年、2019年の世界経済の成長率見通しを引き下げた。引き下げは2016年7月以来、約2年ぶりとなる。2018年の下方修正は、主にユーロ圏、英国、一部の新興国などで、年前半の景気が春先の想定を下回ったことが理由に挙げられており、足元までの実績を踏まえた修正であることが示されている。ただし、2019年については、貿易摩擦が前回の見通し公表時(4月)の想定を超えて激化していることを理由に、米国、中国を含む多くの国・地域で見通しが引き下げられている。貿易摩擦の影響は、今年よりも来年から徐々に表面化することが含意されているのであろう。

 IMFは今回のWEOのなかで、貿易摩擦のマクロ経済への影響について、シナリオ分析を行っている。同様の分析は7月にも行っている*1。今回はそのアップデートとなり、7月以降に発動・公表された関税措置に基づいて、シナリオ内容が修正された。(1)トランプ米大統領が示唆している2670億ドル相当額の追加措置を含む通商法301条に基づく対中制裁関税、および中国による報復措置、(2)3500億ドル相当の自動車および自動車部品に対する25%の追加関税賦課、および貿易相手国による報復措置、など貿易摩擦の直接的な影響に加えて、(3)企業マインド、設備投資計画に影響を及ぼす場合、(4)金融市場が動揺し、企業の金融環境が引き締まる場合、の潜在的な影響が試算されている。最も影響が大きくなるシナリオ(4)では、2019、2020年にGDP(金額ベース)*2が、平時より最大で米国では約0.95%(2020年)、中国では約1.63%(2019年)押し下げられる。実体経済への影響は、金融市場に悪影響が波及する場合に最も大きくなる点は前回試算と同様であるが、他の国・地域への波及も含めて影響度は全体的に上方修正されており、IMFが来年以降のリスクシナリオとして、警戒感を強めていることがうかがわれる。

*1 “G-20 Surveillance Notes and Reports”, July 2018, International Monetary Fund
  PRESTIA Insight 2018年7月24日「貿易摩擦激化の経済的インパクト」にて概要を紹介している
*2 全ての試算値はGDP成長率の押し下げ幅ではなく、GDP総額の平時からの乖離率を示している


※本資料記載のマクロ経済見通しは、当行がライセンス契約を結んでいるCiti Researchの予測を参照しています。

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏