Today's Insight
2025/10/3 11:20作成
新興国通貨:7-9月期は強弱まちまちな傾向に
■ 7-9月期の新興国通貨は、米ドル安基調の一服で対米ドル騰落率が上期より小幅に収まった
■ 東アジア通貨は軟調だったが、その他は実質政策金利の高さと政治面が通貨高のポイントに
本稿では7-9月期の新興国通貨市場の動向を簡単にまとめたい。アジア(中国、韓国、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア)、中南米(ブラジル、メキシコ)、東欧(ハンガリー、チェコ)、その他主要国(南アフリカ、トルコ)の12カ国で確認する(データはすべて9月末時点)。7-9月期の対米ドル騰落率は、12通貨全部がプラス2%台からマイナス4%台の間で収まった。また、上昇が8通貨、下落が4通貨とまちまちに。米ドル安基調が明確だった1-3月期(10通貨が上昇)や4-6月期(11通貨が上昇)より、傾向がつかみづらい時間帯だったと整理できよう。
そうしたなか、7-9月期は東アジア通貨が軟調だった。例えば、韓国(マイナス3.7%)と台湾(マイナス2.9%)はともに4-6月期にプラス8%以上だったが、7-9月期は上記の新興国12通貨のなかで騰落率がワースト3に含まれた。株式市場では世界的に人工知能(AI)に関連した半導体銘柄への資金流入が目立つなか、韓国と台湾は半導体を主要産業とする国であるため意外感もある。これら2通貨の7-9月期の軟調推移は、米国との通商交渉継続が背景の一つと考えている。韓国では、8月から対米輸出品の関税率が15%へ引き下げられたが、その条件とされる3500億米ドル(約51.4兆円)の対米投資合意の文書化が行き詰まっている。李大統領は、米政権が望む前倒しでの支払いを実現したら韓国は通貨危機に陥ると発言するなど、不穏な状況にある。また、台湾は半導体生産の半分を米国で行うとの協定に同意しないと伝わるなど、20%に設定された対米輸出品の関税率は当面続く見込み。とはいえ、対米ドルで韓国ウォンと台湾ドルはともに200日移動平均線(1413.41ウォン、31.237台湾ドル)を上回って推移しており、本稿執筆時点で通貨安が警戒されるほどではない。
対して、上昇率トップ3は南アフリカランド(プラス2.5%)、メキシコペソ(プラス2.3%)、ブラジルレアル(プラス2.0%)だった。上昇率トップで比較すると、1-3月期(ブラジルレアル:プラス8.7%)と4-6月期(台湾ドル:プラス10.9%)より上昇率の伸びが小幅だったのは、米ドル相場が7月に上昇、8月に下落とまちまちな展開だったためとみている。そうしたなか、7-9月期の上昇率トップ3は、トルコリラ(マイナス4.5%)やインドネシア(マイナス2.6%)ほど政治面での不安定感が嫌気されなかった点が堅調さにつながったのではないか。加えて、高水準の実質政策金利を背景に、これら3通貨への注目ドの高さは10-12月期も維持されると予想する。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登