Today's Insight

2025/10/6 11:30作成

日本経済:高市氏が自民党新総裁に

■ 4日投開票の自民党総裁選では、財政・金融積極派で知られる高市氏が選出される
■ ただし施策やその規模は、今後の党役員人事、連立協議に大きく左右されよう

 4日投開票の自民党総裁選では、高市氏が新総裁に選出され、市場での織り込みも限定的であったことから大きなサプライズとなった。決選投票では、麻生派や茂木氏支持層が最終的に高市氏を支持したことで、優勢とみられていた小泉氏を高市氏が破る結果となった。今後のスケジュールとしては、週前半に党役員人事を固め、10月半ばころに国会での首班指名を経て、総理大臣に就任、高市内閣が発足する見通しとなる。少数与党である自民党にとっては、野党との連立拡大が安定した政策運営のために重要となり、高市氏も意欲をみせている。ただし、公明党が保守色の強い高市氏との連立に難色を示しているほか、国民民主党や日本維新の会との連立協議も、政策協調などに相応の時間を要するとみられる。そのため、首班指名や所信表明などのタイミングについてもまだ不確定な状況といえるだろう。

 財政政策に関しては、高市氏は選挙前の公約において「責任ある積極財政」を掲げ、候補者内で最も財政拡張的な姿勢を示した。しかし、現在の自民党が少数与党であることもあり、これまでの強い保守色や財政拡張路線はやや封印されている。総裁就任会見においては、物価高対策を最優先とし、ガソリンと軽油の暫定税率の早期廃止、課税所得の基礎控除引き上げ、給付付き税額控除、自治体向け交付金拡充(地方の中小企業への賃上げ支援)などを挙げた。減税策を中心とした財政拡張策の実施を目指すが、連立拡大となれば、政策協調での配慮が想定されることから、最終的な施策やその規模が明らかになるまでには、まだ時間がかかるだろう。また、総裁選において高市氏勝利の鍵となった麻生派を党役員人事での重要ポストに起用する方針とも伝えられる。麻生氏は財政規律を重視する立場にあるとみられ、自民党内外での協調が財政スタンスに大きく影響する可能性があろう。

 金融政策に関しては、昨年の総裁選での高市氏は日銀の利上げを痛烈に批判していたものの、足元の発言はマイルドなものになっている。ただし、利上げに慎重な姿勢は変わっていないとみられ、就任会見では「経済政策では政府と日銀が足並みを揃え協力する必要」や「財政・金融政策の責任を持たなければならないのは政府」などの発言がみられた。日銀が政権との対話を重視する場合、10月29、30日開催の政策決定会合で利上げを実施するハードルは高まったといえるだろう。日銀のスタンスを確認するに当たっては、会合前に内田副総裁(17日)や氷見野副総裁(21日)の講演などが予定されており、大きく注目される。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加 

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