Today's Insight
2026/3/3 10:30作成
米国:「レートチェック」実施の裏事情
■ 1月の「レートチェック」は米国の判断で実施された模様で米長期金利の抑制が目的と推測される
■ その後の米国債市場の変動性を高めうる米国政府の行動に対する予防措置の意味合いも
2月19日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(1月28、29日開催分)で、NY連銀が米財務省の要請で1月に為替介入の前段階とされる「レートチェック」を実施していたことが明らかとなった。また同24日の一部報道で、これが米国主導で実施されたものであり日本からの依頼に基づいて実施されたものではなかったと複数の米政府関係者の話として伝えられた。ベッセント米財務長官が1月20日の世界経済フォーラム(ダボス会議)での取材で日本国債の利回り急上昇や急速な円安が世界の金融市場へ波及することに懸念を示していたことから、報道内容が事実だとすると、世界的な国債利回り上昇やシステミックリスク(金融システムリスク)への事前対応を目的として米国の判断で「レートチェック」が実施されたことになる。
衆院選実施を控えて政治的空白を迎える日本の市場変動性の抑制を企図したとされるが、米国の動機として、1月以降、世界的に国債利回りが上昇基調を強めていた点が挙げられる。11月の米中間選挙に向けてアフォーダビリティ政策推進のために住宅ローン金利を抑制したいトランプ米大統領や長期国債利回りの安定を重視するベッセント米財務長官の従前からの意向を踏まえると、米国債市場の急変動を促す可能性があった日本国債利回りの急上昇を和らげる試みであったと推測される。「レートチェック」実施直後こそ米国では「トリプル安(ドル安、株安、債券安)」の反応が示されたものの、次第に世界的な長期国債利回り上昇やイールドカーブの傾斜化に歯止めがかかり、事後的には米国の目論見通りに推移している。後講釈をすれば、「レートチェック」以降、米国政府は1月30日の次期米連邦準備理事会(FRB)議長候補の指名、2月20日の米連邦最高裁の「相互関税」に対する違憲判断への対抗としての新たな関税措置の導入、同28日のイラン攻撃など、米国債市場の変動性を高めうる行動を続けており、これらに対する予防措置が奏功していると評価することもできる。
2月8日の衆院選で自民党は絶対安定多数議席を獲得し安定的な政権運営が可能となった。高市政権の現実的な財政政策への軌道修正が期待されていたが、同16日の植田日銀総裁との会談で高市首相が早期利上げに難色を示したことや同25日に提示された日銀審議委員候補の人選から、金融市場では高圧経済政策を志向する姿勢が改めて懸念されている。米国債市場は安定を取り戻しつつあり、イラン攻撃長期化などで再び不安定化しない限り、円安抑制のための日本の政策介入に対して米国の理解が得られる可能性は低いだろう。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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