Today's Insight
2025/11/5 11:50作成
豪州:11月RBA理事会レビュー
■ RBAは11月理事会で政策金利据え置きを決定したが、今後の利下げ方針自体は継続へ
■ 当面の高インフレへの警戒を示し、金融市場では来年前半までの追加利下げ観測は後退
豪中銀(RBA)は11月3、4日に開催した理事会で、政策金利を事前の市場予想通りに3.60%で据え置いた。今回の注目点は物価と雇用の情勢評価と来年に向けた金融政策姿勢だった。合わせて発表された四半期金融政策報告書(SMP)で、景気・物価・雇用見通しの前提としてRBAは2026年に少なくとも1回の利下げを考慮したことから、利下げ方針自体は継続とされている。
声明では、物価情勢は「7-9月期の基調インフレの上昇の一部は一時的な要因によるもの」と評価された。RBAは足元のインフレを、多くの州での電気料金割引停止による「一時的な要因」とみなした。ただし、SMPでは、消費者物価指数(CPI)のうち、RBAが注視するトリム平均値が来年央まで、総合が来年末まで3%を超えて推移すると、見通しを上方修正した。これは、RBAの物価目標水準(同2-3%)からの上振れが続くとの解釈になる。この背景として、RBAは経済の供給圧力の高まりを指摘した。雇用では、「労働市場は依然としてややひっ迫していることを示唆」と、前回9月理事会後に公表した声明での見通しを維持した。失業率見通しは前回の4.3%から上方修正されたものの、4.4%で安定推移すると見通された。この背景として、RBAは引き続き低水準で推移するレイオフ率や、求人広告などの先行指標からうかがえる労働需要の堅調さを指摘した。
景気については、来年の経済成長率見通しを1.9%へ下方修正したが修正幅は小幅にとどめた。そのため、RBAは高インフレへの警戒から早期利下げ実施に慎重としたものの、目先の景気の底堅さから豪経済情勢の見極めを優先したと解釈している。こうした結果を受けて、金融市場では来年前半にかけての追加利下げ観測が後退した。
ただし、景気・物価・雇用を巡る見通しの不確実性は依然高いと評価された。なかでも雇用に注目したい。8月理事会議事要旨では、一部の委員が労働市場の緩和度合いが進んだ場合には若干急速な利下げが正当化される可能性があるとしていた。そのため、失業率が今後も上昇を続けた場合、金融市場では豪利下げ観測が再燃しやすいと想定する。11月18日に公表予定の11月理事会議事要旨では、雇用の下振れリスクを巡る議論の内容を注視する。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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