Today's Insight

2018/12/7 9:00作成

逆イールドが発生した背景が過去とは異なる

■ これまで米長期金利の上昇が限定されてきたのは景気の減速や後退を見込んだものではない
■ 「逆イールド」=「景気後退のシグナル」との解釈するのは早計だろう

 2月と10月の株価急落の背景はいずれも米長期金利の上昇であった。しかし、4日の米国株式市場では、債券市場で中長期ゾーンの金利が軒並み低下し、2年債利回りが5年債利回りを上回るいわゆる「逆イールド」が発生したほか、2年債と10年債の利回り格差がおよそ10年ぶりの水準に縮小したことなどが嫌気され、NYダウが818ドル安を付ける場面がみられた。ここにきて、米長期金利の低下が景気後退を想起させ、リスクオフの地合いを招いている。

 過去数年において、米連邦準備理事会(FRB)の利上げに伴い短期金利が上昇する一方で、長期金利の上昇は限定的であった。その結果、足元では「逆イールド」が発生したが、重要なのは長期金利の上昇が限定された理由であろう。それについては諸説あるが、(1)ネット通販の拡大により企業の価格支配力が低下しており(小売価格の引き上げが困難)インフレ期待が高まらないこと、(2)中央銀行の量的緩和によりドイツや日本の国債利回りが著しく低位にとどめられており、相対的に利回りの高い米国債に資金が流入しやすいこと、などが有力だと筆者は考える。米中貿易摩擦が激化し、減税効果のはく落が見込まれることも相まって、来年以降の米景気ピークアウトが徐々に意識され始めたのは今春以降のことである。それ以前の2017年もFRBは3度、計75bpsの利上げを行ったものの長期金利はほぼ横ばい推移であったことを踏まえれば、少なくとも景気の減速や後退を見込んだものではないと考えられる。

 実際に、4日に発表された11月のISM製造業景況感指数は59.3と2004年以来の高水準を維持しているうえ、年末商戦も好調が見込まれる。来年を見通しても、実質GDP成長率は前年比2.6%*1と、今年の同2.9%*1からは減速するものの、高い成長率を維持すると市場では予想されている。過去の経験から「逆イールド」は景気後退を示唆しているとして株安が進むならば、それは投資家の過剰反応といえよう。今後は、経済データから米景気の底堅さが確認されるにつれて市場の認識が修正され、株価は持ち直すとみている。


*1 Bloomberg集計による市場予想の平均


投資調査部
マーケットアナリスト
佐溝 将司