Today's Insight

2025/12/15 12:00作成

日本経済:日銀の利上げ継続を巡る示唆に注目

■ 日銀短観12月調査では、企業景況感や設備投資需要の底堅さが示された
■ 12月日銀会合での利上げは既定路線だが、利上げ継続に向けた総裁の示唆に注目が集まる

 本日公表の日銀短観12月調査では企業の景況感の底堅さが示された。業況判断DI(最近)は大企業・製造業(15、前回比1ポイント上昇)、大企業・非製造業(34、同変わらず)ともに高水準を維持。米関税政策を巡る不確実性の低下や底堅い内需、想定為替レートを上回る円安が企業収益を支えたことが企業マインドの支えとなった。先行きDIについては、大企業・製造業(15、最近比変わらず)が横ばいを維持した一方、大企業・非製造業(28、同6ポイント低下)は低下。同調査の非製造業の先行きDIは下方バイアスが強いものの、12月調査においては、日中関係の悪化に伴うインバウンド需要の落ち込みや人件費上昇への懸念が下押し要因となったようだ。また、2025年度の全規模・全産業の経常利益計画(前年度比2.7%減)や設備投資計画(含む土地投資額、同8.8%増)は上方修正された。人手不足が続くなか、省力化に向けた投資ニーズは旺盛だ。生産性の向上のためのIT関連投資需要の強さなどが下支えし、設備投資は増勢を維持することが見込まれる。

 日銀短観12月調査の堅調な結果は、今週12月18、19日に開催される日銀金融政策決定会合において、利上げを正当化する最終的な材料となるだろう。今回の会合での利上げはほぼ既定路線とみられ、日銀は政策金利を25bps引き上げて0.75%とするとみられる。今回もっとも注目されるのは、今後の利上げの道筋がどのように示されるかだ。日銀はこれまで、中立金利水準のレンジを1.0-2.5%と示してきた。今回の利上げが実施されれば、中立金利下限への到達が、あと1回の利上げで展望されることになる。日銀はこれまで、異例といえる長期間に渡り低金利政策を続けてきており、日本の中立金利がどこにあるかの不確実性は非常に高い。植田総裁は、中立金利の「推計の幅が狭まれば適宜公表」と発言しているものの、今回新たなレンジが示される可能性は低いだろう。ただし、日銀は中立金利の推計値の幅を強調することで、金融政策の正常化はこれからも続くシグナルを送るのではないか。 

 利上げは半年に1回がメインシナリオとみられるが、次の利上げにおいても、リフレ的政策を志向する政府との対話が今後も重要になるだろう。為替円安が継続すれば、対話を後押しする可能性もある。日銀は、「基調的インフレ率が2%に達する頃には、政策金利は中立金利(のどこか)まで引き上げられる」との見解を示してきた。植田総裁による「インフレ目標の達成が近づいている」との発言もみられるなか、政策金利は0.75%からは引き上げが続くことになる。今回の記者会見で、植田総裁がどういった道筋が示唆されるかが注目される。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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