米国の為替条項要求を受けた日本株安は行き過ぎ

■ 15日の日本株大幅安は行き過ぎ
■ 物品貿易協定(TAG)交渉の行方を冷静に見極める必要

 ムニューシン米財務長官は13日、日本との物品貿易協定(TAG)交渉で、通貨安誘導を封じる「為替条項」の導入を求める考えを示した。これを受けて15日、ドル円は112円台前半から111円台後半に小幅下落となったが、日経平均株価は12日終値から423円安と大幅下落となった。為替相場では、為替条項が対主要国通貨に対するドル安をもたらす実効性があるか疑問視された模様で、冷静な反応となった。しかしながら、為替条項の導入を見送る代わりに、輸出規制が強化されるとの警戒感が広がり、日本株の大幅下落が引き起こされたとみられるが、こうした市場の反応は行き過ぎだろう。

 冒頭で示したムニューシン米財務長官のコメントは記者からの質問への回答であり、日本への圧力を強めようと意図的に言及したわけではない。米国、カナダ、メキシコの新協定「USMCA」で導入された為替条項では「市場に基づく為替レートの達成と維持」「為替介入を含む競争的な通貨切り下げを自制する」などと明記されたが、これは国際通貨基金(IMF)協定に含まれており、強制力が強い内容とは思われない。確かに、通貨安誘導と認定する基準がはっきりとみえないことはこの先、相場の不透明感を強める方向に作用する恐れがある。また、為替条項をテコにして通商交渉を有利に進める狙いは明らかであるものの、市場には年明けから本格的にスタートするTAG交渉の行方を見極めながら織り込まれていくこととなろう。投資家には市場の過剰反応に過敏にならず、景気や企業業績などのファンダメンタルズの変化を冷静に見極める姿勢がいつも以上に求められる局面である。


※本資料記載のマクロ経済見通しは、当行がライセンス契約を結んでいるCiti Researchの予測を参照しています。

投資調査部
シニアマーケットアナリスト
山口 真弘