Today's Insight

2025/12/24 10:10作成

中国:景気減速でも経済構造転換の方針は変わらず

■ 2026年は「穏中求進」の基本方針の下で需要創出と同時に供給側の経済構造改革を継続する
■ 短期的な成長追求よりも中長期的な潜在成長率引き上げを重視するが成果への逆風は強まろう

 中国では景気減速感が強まっている。昨日までに発表された11月の経済指標では、鉱工業生産(前年比4.8%増)、小売売上高(同1.3%増)、サービス業生産指数(同4.2%上昇)の増加・上昇ペースは鈍化し、固定資産投資(農村部除く、同2.6%減)の減少ペースが加速した。消費・投資活動の動向を示す小売売上高、固定資産投資は前月比で減少し、内需の不振が際立っている。また、不動産開発投資(年初来同15.9%減)や不動産販売(床面積ベース、年初来同7.8%減)の減少、主要70都市新築住宅価格(ロイター算出、前年比2.4%下落、前月比0.4%下落)の下落も続き、不動産景気指数(91.90、前月比0.52ポイント低下)は直近最低を記録した2024年4月以来の低水準まで落ち込んでいる。

 10、11日に開催された中央経済工作会議では2026年の経済政策運営の方針が示された。「穏中求進(安定の中で前進を追求)」の基本方針の下で、経済の質的向上と効率性の追求、既存政策と新規政策の相乗効果の発揮、マクロ経済ガバナンスの効率性向上などが方針に掲げられた。財政・金融政策では、今年に引き続き「より積極的な」財政政策と「適度に緩和的な」金融政策が推進される。財政政策では、財政赤字、債務残高、歳出額の必要な規模の維持、歳出構造の最適化、税制優遇・補助金による産業支援、地方財政支援など、金融政策では、預金準備率引き下げや金利引き下げなど多様な手段の活用、十分な流動性の維持、金融政策伝播の円滑化、科学技術革新や中小零細企業など重点分野への金融支援強化、合理的水準での人民元レートの安定などが列挙された。重点任務には、今年に続き、強固な国内市場創造に向けた国内需要拡大が筆頭に記され、消費刺激策、家計所得増加やサービス消費拡大の追求、地方特別債券を活用した投資促進などの施策が挙げられた。2点目以降には、技術革新、構造改革、対外開放とともに不動産、地方政府の重債務、「内巻(過当競争)」などへの対応が記され、需要創出と同時に供給側の経済構造改革も継続される。

 例年同様、様々な施策が総花的に掲げられているが、目的は国内需要の拡大、供給の最適化、経済の質の向上に集約される。毎年焦点となる成長率などの経済目標への言及はなく、一定の成長減速を許容し、中長期的観点で潜在成長率引き上げに向けて構造改革を重視する姿勢がうかがえる。ただし、構造調整圧力の累積により基調的な経済成長ペースは減速に向かうことが見込まれ、構造改革の成果に対する逆風は徐々に強まっていくと考えられる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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