Today's Insight
2026/1/13 12:00作成
欧州経済:底堅い成長と目標近辺のインフレが続く
■ ドイツの国内製造業受注は上向きはじめ、財政出動のプラスの波及効果が出始めた可能性
■ 底堅い景気と目標に近いインフレからECBは政策維持の姿勢を当面継続しよう
ユーロ圏では緩やかな景気の拡大基調が維持されている。欧州委員会統計局(ユーロスタット)が6日公表した昨年11月のユーロ圏の小売売上高(前月比0.2%増)は予想を上回る増加となり、10月分も上方修正(同変わらず→同0.3%増)された。これにより売上高の水準は2021年11月に記録した既往ピークを更新。増加ペースは依然緩やかなものの、個人消費の回復基調が示される。国別では、フランス(同0.5%増)、イタリア(同0.3%増)、スペイン(同1.0%増)で堅調な伸びとなる一方、ドイツ(同0.6%減)は大きく減少した。もっとも、経済低迷が続くドイツにおいても、足元では明るい兆しがみられ始めている。8日に公表された昨年11月のドイツ製造業受注指数(同5.6%上昇)は3カ月連続で大きく上昇。大型受注(航空機など)を除いても同0.7%上昇とプラス基調が続く。内訳をみると、海外ではなく国内での受注が伸びた。ドイツの国内受注は依然として低水準だが、足元は上昇傾向がみられており、財政出動による産業へのプラスの波及効果が出始めた可能性がある。
インフレ率は、欧州中央銀行(ECB)のインフレ目標水準付近で概ね安定した伸びが続いており、底堅い経済成長との組み合わせから、ECBは当面政策維持の姿勢を継続することが見込まれる。6日公表のユーロ圏消費者物価指数(HICP、速報値)では、総合(前年比2.0%上昇)、エネルギー・食品・酒類・タバコを除くコアHICP(同2.3%上昇)はともに前月から伸びが0.1%ポイント低下した。コアの内訳をみると、コア財(同0.4%上昇)・サービス(同3.4%上昇)ともに伸びが0.1%ポイント鈍化した。コアインフレのモメンタム(ここでは3カ月移動平均後の3カ月前比年率を計算)をECBが公表する季節調整系列から確認すると、コアHICP(2025年前半:2.5%上昇→12月:2.1%上昇)は昨年前半から伸びが減速し、基調的な物価上昇圧力の緩和が示唆される。これは主にコア財価格(同0.6%上昇→0.2%低下)の低下からきており、既往のユーロ高と米中貿易摩擦に起因する中国製品の米国市場からの欧州市場へのシフトが大きな下押し圧力となっているようだ。一方、サービス価格(同3.5%上昇→3.4%上昇)は、賃金上昇圧力の強さから想定以上に粘着的だった。ECBの賃金トラッカーを踏まえると、妥結賃金の伸びは2024年の前年比4.5%、2025年前半の同3.3%から、2026年は同2.5-2.7%程度まで鈍化することが見込まれる。基本的には、財価格のディスインフレに加え、賃金の正常化に伴うサービス価格の鈍化により、基調的なインフレ率は中期的にやや2%を下回る程度まで伸びが減速するとみられるが、賃金の再加速によるインフレ上振れリスクは懸念材料の1つだろう。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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