Today's Insight

2026/5/7 11:45作成

6月ECB理事会に向けての情報整理

■ ECBは6月理事会に向けて中東情勢およびデータを整理し、利上げの有無を判断する見込み
■ 短期インフレ期待が上昇も、長期はまだ比較的安定。今後は消費関連データの弱さも懸念される

 4月28、29日に開催された欧州中銀(ECB)理事会では、政策金利が据え置かれた。声明文ではインフレ加速、および景気減速への警戒を高めていることを示す文言が並んだが、ラガルドECB総裁は会見で、「決定は全会一致であったが、利上げの可能性も長時間かつ詳細に検討した」と述べるなど、インフレ加速をより強く懸念し、利上げに向けた議論が進んでいること示唆した。ECBは、次回6月10、11日に予定される理事会までの今後5週間で中東情勢およびデータを整理し、利上げの有無を判断することになりそうだ。

 インフレに関するデータをみると、エネルギー価格が一段高となり、総合インフレや短期インフレ期待は上昇したものの、インフレの基調や長期インフレ期待はまだ比較的安定している。4月のユーロ圏消費者物価指数(HICP速報値、前年比3.0%上昇)は前月から0.4%ポイント伸びを高めた一方、エネルギー・食品・酒類・タバコを除くコアHICP(同2.2%上昇)は2カ月連続で伸びが鈍化した。ただし、コアインフレのモメンタム(3カ月移動平均後の3カ月前比年率を計算)をECBが公表する季節調整系列から確認すると、コアHICP(3月:2.1%上昇→4月:2.5%上昇)に加え、内訳のコア財(同0.8%上昇→1.3%上昇)・サービス(同2.8%上昇→3.2%上昇)ともに伸びが高まった。通常エネルギー価格がコアに転嫁されるまでには半年程度の比較的長いラグがあるとみられるが、エネルギー以外の品目でもモメンタムが強まっている点には警戒が必要だろう。インフレ期待のデータをみると、ECBの企業の資金調達状況に関する調査では、企業のインフレに関連する予想は比較的落ち着いていており、賃金予想は前年比2.8%上昇へと3カ月前から0.3%ポイント低下し、3年先と5年先のインフレ期待(中央値)は3.0%で横ばいとなった。一方、消費者調査では、家計の3年先のインフレ期待が3.0%へと大幅に上昇した。5年先は0.1%ポイント上昇の2.4%にとどまったが、2022年8月のデータ収集開始以来の最高水準に戻っており、5月末の次回調査も注目される。

 経済活動に関しては、1-3月期の実質GDP成長率(1次推計値・前期比年率0.6%)の伸びは鈍化した。ただし、中東情勢の緊迫に伴う経済活動への悪影響が支出データで確認できるのはこれからだ。PMI(確報値)などの企業への調査では、エネルギーショックの悪影響が製造業(52.2)よりもまずサービス(47.6)に強く波及する結果となっており、こうした部門間の違いは、エネルギー価格の急騰で実質所得が圧迫される家計部門の弱さが主導している可能性がある。今後は消費支出への悪影響が強く出ることも懸念されよう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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