Today's Insight

2024/4/19 11:20作成

新興国通貨市場:2024年・ここまでの概要を整理

■ 1-3月期は景気悪化の可能性が低下し、新興国通貨では実質政策金利の高低が注目された
■ 4-6月期の新興国通貨は、地政学リスクに関連した投資家心理の動向がカギを握ると予想

 1-3月期の主要新興国通貨では、メキシコペソの上昇とトルコリラの下落が目立った。対米ドルの騰落率では、前者がプラス2.5%、後者がマイナス9.7%で、それら以外の多くの通貨はこの間の騰落率に収まった。新興国通貨の動向を確認する際は、個別国の要因として、国際通貨基金(IMF)データで確認する「対外債務の支払い能力」や、政権運営と選挙結果を踏まえた「政治情勢」など、注目すべき材料は多い。そうしたなか、1-3月期は世界的に景気悪化の可能性が一段と低下したことで、実質政策金利(名目政策金利-消費者物価指数前年比上昇率)の高低が、特に注目されたと整理しておきたい。冒頭の2通貨は、主要新興国通貨のなかで実質政策金利の上位2番目と下位1番目に位置付けられる。なお、主要先進国通貨でも、堅調だった米ドルと軟調だった円は、同様に実質政策金利の高低が明確な2通貨である。

 4月入り後は、為替相場全体で「米ドル一強」の様相が強まっている。これは(1)米国の利下げ実施の思惑が後退、(2)スイス中銀の利下げ実施などでの欧州通貨安観測の高まり、(3)イランとイスラエルの全面戦争開始への懸念、の3点が主な背景とみる。3月末以降の対米ドルの騰落率(4月18日時点)では、メキシコペソがマイナス3.3%、トルコリラがマイナス0.5%と、1-3月期の反動がみられる。一般的に新興国通貨は高リスク通貨と位置付けられ、(3)による投資家心理悪化に伴う売りや、投資家のポジション調整が主導している状況と推測する。今後も(3)中東地域全体へ戦闘拡大の思惑がくすぶるうちは、高リスク通貨である新興国通貨は全般的に軟調推移が続く見込み。ただ、4-6月期を見通した場合、早期に地政学リスクが後退し投資家心理が復調すれば、仮に米ドル高要因として(1)と(2)が残ったとしても、再び実質政策金利の高低へ注目が戻ると予想する。4月16日にIMFが公表した世界経済見通し(WEO)では、2024年と25年の実質GDP成長率見通しが、世界全体はそれぞれ3.2%、新興国全体はそれぞれ4.2%と、現時点で先行き景気悪化への懸念は低いとみられるためだ。

 目先は、新興国中銀による米ドル売り・自国通貨買いの為替介入が注目される。主要7カ国(G7)財務相・中銀総裁会議は、「過去のG7における政策対応に関するコミットメントを再確認」した。また、4月18日には日本と韓国が、米国へ自国通貨安懸念を伝えている。主要新興国では、インド、ブラジル、インドネシア、トルコなどがすでに自国通貨買いを実施しており、特にアジア新興国ではフィリピンやタイなど、今後も介入を実施する国が増える可能性もある。


投資調査部
マーケットアナリスト
合澤 史登

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