Today's Insight

2025/12/23 11:30作成

欧州株:2026年の相場観

■ AI関連の高い利益成長による株高期待は相対的に高まりにくく、割高感はさほど強くない
■ 各国の財政拡張や復興基金の景気押し上げ効果が持続し、株高基調は継続しよう

 2025年のストックス欧州600は春の大幅調整から回復し、最高値を更新する展開となった。米国株に割高感が漂うなか、国防・インフラ関連の投資拡大期待を背景に欧州株に投資資金が流入する流れとなり、同指数は年初の500ポイント付近から2月末には557ポイントまで上昇し最高値を更新した。米政権の関税政策が二転三転するなか4月に相互関税が発動され、中国が報復措置に出たことで一時460ポイント台まで大幅下落に転じた。その後は米政権が打ち出す極端な政策が最終的には実現しないとの見方が強まったほか、7月下旬に米欧通商協議で合意に至ったことで、8月以降は最高値更新をうかがう展開となった。ドイツで2026年予算案がまとめられ、国防・インフラ投資への前向きな姿勢が示されたことなども好感され、19日には587ポイントと最高値を更新した。22日時点の年初来上昇率は15.6%と、日本(TOPIX 22.2%)に及ばないものの、米国(S&P500 17.0%)に迫っている。

 金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計(16日時点)によれば、同指数構成企業の2026年の一株当たり利益(EPS)成長率は前年比11.8%と予想され、セクター別の寄与度では一般消費財(3.6%)、資本財・サービス(1.7%)など国防・インフラ投資の恩恵が及びやすいセクターや、財政拡張に伴う金利上昇が追い風となる金融(3.3%)などが主導するとみられている。また、欧州委員会が2035年にエンジン車の新車販売を原則禁じる目標を撤回する案を発表したことも、米政権の関税引き上げにより打撃を受けた欧州自動車メーカーの支援材料になるだろう。一方で、世界的に高い利益成長が期待される情報技術(IT、0.7%)による恩恵は限定的で、同指数はAI関連の好材料に伴うPERの上昇による株高が生じにくい利益構造となっている。その結果、向こう1年予想株価収益率(PER)は14.6倍と2018年以降の平均(14.1倍)をやや上回る水準にとどまり、割高感はさほど強くない。

 ドイツ連邦議会(下院)は2026会計年度(26年1-12月)の予算案を可決し、近く上院も通過する見込みとなっている。歳出規模は5245億ユーロと前年度から約4%拡大し、国防費は冷戦終結後の最大規模となる。その恩恵は関連セクターの利益成長に織り込み済みとみられるが、2021年に運用が始まった欧州連合(EU)の復興基金は資金の引き出し期限が2026年末に設定されており、スペインなど南欧諸国の景気押し上げ効果は持続するとみられる。財政拡張が同指数を下支えするとみて、2026年の年末予想値は620ポイント、上値余地は640ポイントと見通している。なお、ロシアとウクライナが停戦合意に至れば、復興需要が欧州株の立ち位置を一変させる可能性があり、引き続き注視したい。


投資調査部長
山口 真弘

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