Today's Insight

2020/5/25 12:30作成

米国でマイナス金利導入の可能性は現時点では低い

■ FF金利先物の動きをみてマイナス金利導入の思惑が強いと判断するのは早計だろう
■ FRBは昨年から議論を重ねたうえで、マイナス金利導入を否定

 米国ではトランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)に対して日欧のようなマイナス金利の導入を要求し、市場ではそうした思惑が広がっている。FF金利先物市場では5月7日に、2020年12月限から2022年1月限までの限月の先物価格が100を超えた。こうした動きはいったん収まったものの、先週末時点では2021年6月限から2022年3月限が再び100を上回った。FF金利先物市場の建玉をみると、今年7月、10月、来年1月と四半期の初めの限月では20万枚前後と大きく積み上がっているが、FF金利先物価格が100を上回っている2021年6月限以降の限月では5万枚を下回っている。マイナス金利を示唆する水準までFF金利先物が取引されていることは確かだが、FF金利がほぼゼロ%にあるなかで建玉が少なく値動きが振れやすい期先物の動きをみて、マイナス金利の導入の思惑が強いと判断するのは早計だろう。

 最近では、パウエル議長をはじめ多くのFRBメンバーがマイナス金利導入を否定している。パウエル議長は「必要であればできることは何でもやる」姿勢を繰り返し示しているが、具体的な政策措置に関しては貸出プログラムの拡大や新設、資産買入れ政策の修正などを挙げている。マイナス金利に関しては、金融機関の収益悪化などを理由に挙げて導入を否定しており、FRBメンバーも同様の見解を示している。FRBは昨年7月以降、金融政策に関する議論を重ねてきた。同10月に行われた議論では、政策金利がゼロ金利制約に直面した際の金融政策ツールに関して検討されたが、そのなかでマイナス金利政策は参加者全員から否定された。その理由として、マイナス金利導入国で景気の押し上げなどの政策効果が不明瞭である点などが挙げられているが、導入国と米国では金融システムが大きく異なり市場機能や金融安定に及ぼす弊害がより大きくなりうる点も指摘された。FRBメンバーはこうした議論の結果としてマイナス金利の導入を否定していることから、金融経済環境が変化し弊害を上回る政策効果が期待できるようになったことが示されない限り、マイナス金利が導入される可能性は非常に低いと考えられる。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
山口 真弘

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