Today's Insight

2025/10/21 13:30作成

BOC:10月も2会合連続で利下げの公算

■ 労働市場が軟化し、インフレ圧力とインフレリスクの低下を背景に9月は4会合ぶりに利下げ再開
■ 景気先行きに不確実性を伴うなか緩和姿勢継続、10月会合は来年以降の政策指針を見極めへ

 カナダ(加)統計局が10日に公表した9月の雇用統計では失業率が7.1%と前月と同水準、就業者数は前月比6万人増と正規雇用者が急増し、前月(同6.6万人減)から大幅な増加に転じた。労働参加率は65.2%へ上昇するなど、総じて市場予想と比べて堅調であることが確認された。だが、失業率はコロナ禍の時期を除けば2016年5月以来9年ぶりの高水準を維持。7月は若年層(15-24歳)に雇用減少が集中するなどして、正規雇用者数は8月まで2カ月連続の減少となった。加中銀(BOC)が20日に発表した7-9月期の企業調査によれば、需要の弱さと貿易摩擦の不確実性が企業の投資意欲を抑制し続けており、大半の企業は人員増を計画しておらず労働市場の減速はくすぶる。

 インフレ動向を把握するうえで、BOCが重視する正規雇用者の平均時給は9月に前年比3.6%上昇へ伸びが高まった。こうしたなか、市場予想では今晩公表される9月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比2.3%と前月(同1.9%)から加速する見通し。また、コアインフレ指標の一つとされるCPI中央値が同3.0%上昇へわずかに伸びが鈍化、CPIトリム値は同3.0%上昇と前月並みの水準となる見込み。

 BOCは9月に4会合ぶりの利下げを決定。マックレム総裁は利下げの理由に、労働市場の軟化やインフレ圧力とインフレリスクの低下を挙げた。米関税政策に伴う多数の報復関税が撤廃されインフレリスクは低下しているが、加・米・メキシコ協定の見直しなど不確実性は依然として高いとの認識である。9月会合の議事要旨では加景気の弱さは米貿易政策に伴う構造変化との認識を示し、金融政策での対応の難しさも指摘している。4-6月期の実質GDPは前期比年率1.6%減と7四半期ぶりにマイナス成長に落ち込み、景気先行きへの懸念は払しょくされていない。10月会合では金融政策報告書も公表され、来年以降の政策指針を見極める手掛かりとなるだろう。なお、短期金融市場では10月29日の会合で政策金利を2.5%から2.25%に引き下げるとの織り込みが86%超とほぼ確実視されている。


投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

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