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Today's Insight

2018/12/11 10:20作成

「逆イールド」以外でも観測される米金利の変調

■ 「逆イールド」は、景気先行指数の構成指標である長短金利差の逆転につながるかが焦点
■ 米社債スプレッド拡大や住宅ローン金利の高止まりは、金融環境の引き締まりを示唆

 11月28日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を契機に、2019年以降の利上げ織り込みが低下し、米10年国債利回りは節目の3%を大きく下回っている。また、12月3日に3年国債利回りと5年国債利回り、翌4日に2年国債利回りと5年国債利回りが逆転し、2007年以来11年ぶりに「逆イールド」が発生した。純粋期待仮説*1に基づくと、先行き5年間の政策金利の平均水準が、先行き2-3年間よりも低くなる、と市場で評価されていることを意味する。利上げ打ち止め時期の前倒しに加え、その後の利下げが織り込まれ始めている状況といえる。「逆イールド」現象は、現時点ではイールドカーブ上の一部にとどまり、利下げが差し迫っている訳ではないが、今後、政策金利と10年国債利回り(長短金利差)の逆転につながるようであれば注意を要する。長短金利差は米景気先行指数の構成指標の1つであり、長短金利差の逆転は、利下げが間近に迫りつつあることを示唆しているためである。中央銀行による利下げは、大半のケースが景気減速下で行われ、債券市場がそれを先回りして強く織り込む過程で長短金利差の逆転が生じる。現在はその前段階といえる状況で、直ちに景気後退の有無を懸念するよりは、それに対する早期警戒シグナルととらえる方が有益だと考えている。

 米金利にみられる変調は「逆イールド」に限らない。10月以降、原油価格の急落に歩調を合わせて社債スプレッドが拡大しており、その動きはエネルギー関連セクター以外にも広がっている。また、米30年住宅ローン金利と米30年国債との利回り差の高止まりも続いており、すでに住宅市場の抑制要因となり始めている。これらの動きは、金融環境が引き締まりつつあることを示唆しており、今月実施が濃厚となっている25bpの利上げの影響も注目される。FRBが景気への影響を配慮し、2019年以降、利上げ打ち止めを決定した場合でも、社債金利や住宅ローン金利の高止まりが続けば、実体経済への恩恵は限定的となる可能性がある。これらの動きも、景気に対する早期警戒シグナルと考えることができるだろう。

*1 長期金利は、その期間の短期金利の期待値(具体的には幾何平均)のみに基づいて決まるとする仮説。同期間、長期金利で運用した場合と、短期金利で運用を繰り返した場合の収益率は等しくなるとの考え方に基づく。

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

注目のチャート

2018/12/10 9:00

「笛吹けども踊らず」の可能性も

「笛吹けども踊らず」の可能性も

 中国の実質GDP成長率(前年比)は1-3月期が6.8%、4-6月期は6.7%、そして7-9月期は6.5%と徐々に鈍化している。「市場化改革」や「過剰債務の圧縮(デレバレッジ)」が推進されたことも背景にあるが、対米貿易摩擦による下押し圧力が無視できないものになっており、中央政府は7月に経済政策運営の軸足を安定重視に移す方針を表明。減税拡大や財政支出のペース加速、十分な流動性供給などにより景気の下支えを強化する構えを示した。こうしたなか、中国の固定資産投資(除く農村部、前年比)は1-8月の5.3%増から1-9月は5.4%増、1-10月は5.7%増と底入れの兆しがみられる。市場では内需拡大が同国景気を下支えるとの見方が多い。

 ただ、こうした傾向が持続するかどうかは懸念が残る。10月の資金調達総額は729億元と9月の2168億元から大幅に減少。特に、地方政府特別債が9月の739億元から87億元へと9割近く減っている。来年の経済政策を決める中国共産党中央委員会第4回全体会議(4中全会)が、例年ならば10月に行われるにもかかわらず、未だに開催されていないことも踏まえると、共産党内で何かしらの対立があることが想定される。よって、地方政府は、上述したような政府の路線変更を信頼し切れず、インフラ投資拡大に二の足を踏んでいるとみられる。したがって、内需拡大が中央政府の思惑通りに進まず、景気が急減速する可能性はくすぶる。過度な楽観は禁物で、まずは今週発表される予定の11月の資金調達総額を注視しておきたい。

投資調査部
マーケットアナリスト
佐溝 将司