Today's Insight

2025/7/2 11:40作成

新興国通貨:4-6月期も東アジアと東欧を中心に堅調

■ 4-6月期の新興国通貨は、米ドル安に加えて投資家の行動や政治的な懸念の後退が支えた
■ 中東情勢や米相互関税が波乱とならなければ、中南米を中心に新興国市場への注目は維持へ

 本稿では4-6月期の新興国通貨市場の動向を簡単にまとめたい。アジア(中国、韓国、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア)、中南米(ブラジル、メキシコ)、東欧(ハンガリー、チェコ)、その他主要国(南アフリカ、トルコ)の12カ国を確認する(データは全て6月末時点)。4-6月期は、米ドル安地合いの継続や、米政権が多数の貿易相手国に対して相互関税のうち一律関税(10%)と品目別関税(自動車など)以外の部分を7月9日まで一時停止としたことで、多くの新興国通貨は堅調な推移をみせた。そうしたなか、上記12通貨のうち対米ドルで下落したのは、トルコリラ(マイナス4.9%)とインドルピー(マイナス0.3%)の2通貨にとどまった。

 それ以外の10通貨は対米ドルで上昇したが、なかでも台湾ドル(プラス10.9%)、チェココルナ(プラス9.1%)、ハンガリーフォリント(プラス9.0%)、メキシコペソ(プラス8.4%)、韓国ウォン(プラス8.1%)の5通貨がプラス8%以上となっている。台湾ドルは米政権から米ドル高是正を求められたとの報じられた5月上旬に、2日間で6%超も上昇する局面があった。ただ、台湾中銀が自国通貨売りの介入を実施していると伝わるなど、当局による監視は続く。韓国は6月3日に実施された大統領選挙以降で主要株価指数が13.8%上昇するなど、海外からの資金流入が支えとなった模様。また、同じ東アジアで半導体の輸出に特化する台湾との共通点が多く、台湾ドル高につれた面もあった。チェコとハンガリーは、信用格付け(チェコ:AA格、ハンガリーBBB格)が異なるものの、輸出をドイツと自動車産業に頼る点は共通している。財政支出拡大方針を受けたドイツ景気回復期待の高まりが、両通貨の堅調さを支えた。メキシコは、米政権との交渉継続のなかで相互関税が免除されていることが通貨高につながったとみる。

 4-6月期の新興国通貨は米ドル安やリスクセンチメントの持ち直しに加えて、台湾と韓国、チェコとハンガリーのように輸出品目上位や地域など共通点のある通貨がともに上昇した点から、投資家による資産分散や為替ヘッジなどの行動が影響したと解釈している。足元では引き続き米ドル安基調が継続しており、中東情勢が収束し、かつ米政権が相互関税の一部停止期間を延長した場合、新興国市場への高い注目は続こう。7-9月期は、金利面で相対的に優位である中南米地域に注目したい。一方で、4-6月期の好調さは政治的な懸念の後退も大きかったことから、今後は個別国の政治情勢次第で選別が進む可能性もありそうだ。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

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