米財務省為替報告書の公表が待たれる

■ 公表予定の米財務省為替報告書では中国を含め、為替操作国認定はない見通し
■ 為替報告書、為替条項とも国際的な理解である「通貨の競争的な切り下げ回避」と理念は同じ

 米財務省は半期に1度、4月と10月の中旬に為替報告書を議会に提出する。①対米黒字が200億ドル以上、②経常黒字がGDP3%以上、③年間の市場介入額がGDP2%以上、の3点のうち2点以上該当すると、自国通貨安を誘導しているとして「監視対象国」に指定、全て該当すると「為替操作国」に認定され、是正が求められる。是正措置に従わない場合は高関税が課される可能性がある。4月時点では、日本、韓国、ドイツが①、②に該当したほか、スイスが②と③、インドが①と③で該当するとされた。一方、中国は以前に為替操作国に認定されたことがあるが、現在は2017年の対米黒字額が3750億ドルと突出して①に該当するのみである。報道によると、11日時点で米財務省のスタッフは「中国は為替操作をしていない」との見解をムニューシン米財務長官に伝えた模様。今回も為替操作国はなく、監視対象の顔ぶれも変更ない見通しだ。トランプ米大統領は選挙活動中から中国を為替操作国に認定することを公約に挙げており、ムニューシン財務長官に圧力を掛けてきたといわれるが、通商政策上の武器として為替報告書を利用するには、認定基準を変更するしかない状況か。為替報告書は15日を期限に公表されるため、公表の遅れは何らかの基準変更によるとの思惑はくすぶる。

 先週末にムニューシン財務長官が、日本など各国との貿易交渉に「為替条項」の導入を求めていくとも表明し、週初は円高が進む場面もあったが、麻生財務相がこれを否定し、足元は再び円安地合いに落ち着いている。為替条項は、市場介入を含む競争的な通貨切り下げを禁じる取り決めで、2国間協定で違反と認定された場合、追加関税が課される可能性もある。ただ、G20が共同宣言で掲げる「通貨の競争的な切り下げの回避」と根幹は変わらない。日本政府は2011年以降、市場介入は実施しておらず、日銀の緩和政策は為替操作を意図したものではないことが国際的に認められてきた以上、過度の警戒は必要ないだろう。


※本資料記載のマクロ経済見通しは、当行がライセンス契約を結んでいるCiti Researchの予測を参照しています。

投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
白鳥 朋子