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Today's Insight

2019/8/20 9:30作成

株高回帰の鍵を握るのは財政政策

■ 今週の注目イベント、ジャクソンホール・シンポジウムのテーマは「金融政策の課題」
■ ただ、金融政策による株高は見込みづらく、鍵を握るのは財政政策であろう

 今年も米ワイオミング州ジャクソンホールにて、カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウムが22-24日の3日間の日程で開催される。7月31日には米連邦準備理事会(FRB)が2008年12月以来、およそ10年半ぶりの利下げに踏み切ったが、同日にはブラジル、その後、今日に至るまでインド、タイ、ニュージーランド、フィリピン、メキシコも利下げを実施。7月初めまで遡れば、オーストラリア、南アフリカ、韓国、インドネシア、トルコなどがFRBに先んじて動いており、まさに各国中銀による利下げ競争の様相を呈している。こうしたなか、今回のシンポジウムのテーマは「金融政策の課題」となっており、主要国中銀幹部の見解に注目が集まる。

 なかでも、23日(日本時間23時)に行われるパウエルFRB議長の講演は市場参加者の関心が高い。同議長は7月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、「長期の利下げ局面の始まりではない」と述べ、市場の行き過ぎた利下げ織り込みをけん制した。ただ、その後に通商や為替を巡って米中対立が一段と激化したうえ、米国債券市場では逆イールド(長短金利の逆転、今回は2年物と10年物)が発生したことで景気後退への警戒が高まったことなどを踏まえれば、景気下支えを理由にハト派的な内容となる公算が大きい。しかし、金利先物市場では既に、年内にあと2回の利下げは9割超、3回でも6割近く織り込まれていることを踏まえれば、明確な株高基調に回帰するための材料にはならないだろう。むしろ、過去の利下げ局面に比べれば遥かにその余地は小さいことから、市場の織り込みよりは利下げに慎重な姿勢が示され、改めて株安が進行するきっかけとなることを警戒しておきたい。

 上述したように、世界的に中銀の利下げが相次いだにもかかわらず株価は下落していたが、先週末はドイツで財政出動観測が浮上したことで欧米株が上昇した。この事実に鑑みれば、今後、株式相場の浮沈の鍵を握るのは金融政策よりも財政政策であろう。仮に、ドイツのみならず米国や日本などにも財政出動の機運が広がれば、市場心理は一変するとみている。



投資調査部
マーケットアナリスト
佐溝 将司

注目のチャート

2019/8/15 11:30

近づく景気後退の足音

近づく景気後退の足音

 チャートは、米国の2つの長短金利差(10年-2年国債利回り差、10年国債利回り-政策金利差)である。米景気先行指数の構成指標の1つであり、今年3月に「10年国債利回り-政策金利差」がマイナス圏に沈み、景気後退シグナルが点灯した。ただしもう一つの長短金利差である「米10年-2年国債利回り差」は3月以降もプラスを維持していた。1985年以降、「10年国債利回り-政策金利差」がマイナスとなったのは6度目であり、過去5度を見ると、景気後退に陥らなかった2度(図表の数字2、3の局面)は「10年-2年国債利回り差」のマイナス水準は定着せず、景気後退に陥った3度(図表の数字1、4、5の局面)は明確にマイナス圏に沈んでいる。足元(図表の数字6の局面)では、「10年-2年国債利回り差」が8月14日に一時マイナスを記録した。
 米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測の浮上以降、いわゆる「予防的利下げ」により景気後退が回避されるとの見方が強く、米イールドカーブの形状もそれを肯定する状況にあった。だが、8月1日に米国が対中制裁関税第4弾発動を表明すると「10年-2年国債利回り差」が急速に縮小し、景気後退が織り込まれ始めた。「10年-2年国債利回り差」がマイナスに転じたことにより、過去30年余りで的中率60%だった「10年国債利回り-政策金利差」の景気後退シグナルに対する信頼性が一段と高まったと考える。実際の景気後退期までには時間差があるものの、景気後退が現実味を帯び始めるなか、本格的な備えが求められる局面に差し掛かっている。


投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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