Today's Insight

2026/5/29 11:00作成

米国株:1-3月期決算レビュー

■ 巨額の設備投資によるAI需要拡大を織り込み、関連セクターの利益成長見通しが大幅上方修正
■ S&P500はEPS見通しの上方修正で最高値更新、割高感は強くないが大幅調整リスクをはらむ

 S&P500構成企業のうち約94%にあたる471社が先週末までに1-3月期決算発表を終えた。金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計によれば、このうち約83%にあたる395社が市場予想を上回る一株あたり利益(EPS)を公表した。EPSは前年比29.0%増(発表済み企業は実績、未発表企業は市場予想)と、決算発表直前にあたる4月初めの市場予想(同14.4%増)を大きく上回る見込みとなった。セクター別では、情報技術(IT、同46.3%増→55.2%増)が高い伸びを維持し、コミュニケーション・サービス(CS、同2.4%減→50.9%増)、一般消費財(同1.9%増→40.4%増)、などの上振れが全体をけん引した。セクター別寄与度をみると、IT(12.9ポイント)、CS(6.2ポイント)に加え、金融(4.5ポイント)や一般消費財(3.0ポイント)などがけん引役となり、人工知能(AI)関連需要の強さが再確認された。

 大規模クラウド事業者(ハイパースケーラー)が巨額の設備投資計画を示したことで、AI半導体やメモリ・ストレージのほか、データセンターの建設やチップ、サーバー向け需要が急拡大すると期待される。また、投資効果は関連するAIインフラ企業(発電関連設備、光ファイバーなど)にも波及し、2026年通年のS&P500のEPS成長率見通しは決算発表を受けて大幅に引き上げられた(19.0%→24.5%)。セクター別寄与度をみると、AI関連の需要増加でIT(12.4ポイント)やCS(2.9ポイント)、原油高も相まってエネルギー(2.3ポイント)、など高い利益成長になると見込まれている。S&P500は4月に最高値を更新した後も水準を切り上げているが、向こう1年予想株価収益率(PER)は21.4倍と昨年10月の直近ピーク(23.3倍)を下回る。目先は高いEPS成長率見通しを織り込む動きが一巡し、株価は高値圏での定着を探る動きを見込むが、割高感は強まっておらず、EPS見通しの上方修正に沿った株価上昇が期待される。

 ただ、ハイパースケーラーの決算では出資先の新興AI企業の株式評価益を営業外利益として計上することでEPSが増幅している面もあり、利益成長期待の株価への織り込みが行き過ぎないか警戒したい。また、一部企業はフリーキャッシュフロー(純現金収入、FCF)が大きく減少する見通しとなり、負債調達の必要性が一段と強まれば投資家は設備投資がそれに見合った利益成長につながるかをこれまで以上に厳しく精査することとなろう。また、設備投資により大きな需要が生じても、資源調達や労働力などの供給制約により利益成長が抑制される可能性もある。負債依存度の高まりやFCFの悪化などの企業財務の悪化、AIの収益化の遅れなどが生じた場合には大幅な株価調整に至るリスクがあり、警戒したい。


投資調査部長
山口 真弘

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