Today's Insight

2026/1/19 10:30作成

米国:中間選挙に向けた政策シフト

■ 米政府は中間選挙に向けて家計支援へと政策の軸足を移行
■ 個人消費は拡大しているが、物価高騰、金利上昇を受け中間層の経済的余裕は低下か

 トランプ米大統領は1月7日に機関投資家の戸建住宅購入を禁止する法整備を進めるよう米議会に要求し、翌8日に米政府系住宅金融機関(GSE)2社に対して2000億ドルの住宅ローン担保証券(MBS)購入を指示した。また11日には金融機関に対して、大統領就任1周年にあたる1月20日から1年間クレジットカード金利の上限を10%に設定するよう求めている。背景には米国民のアフォーダビリティ(affordability)低下が指摘できる。米連邦準備理事会(FRB)に対する米政府の執拗な金融緩和要求もこれら一連の言動と整合する。

 アフォーダビリティとは経済的余裕を示す概念で、日常生活に必要不可欠な財・サービスを無理なく手に入れることが出来る状態を意味する。一般的には家計の世帯収入と財・サービスのコスト(価格)を比較して測られる。住宅アフォーダビリティを確認する指標として、全米不動産業協会(NAR)が公表している住宅取得能力指数(Housing Affordability Index、HAI)が存在する。HAIはサブプライム住宅ローン危機発生の兆しがみられていた2006年の過去最低値(100.4)を2022年に更新した。その後も最新値である2025年11月(108.4)まで目立った回復はみられておらず、現在も過去最低値圏で低迷している。HAIは、住宅価格、個人所得に基づいて、典型的な世帯の家計が住宅購入のための住宅ローン審査基準を満たすことが出来る所得を得られているのかを示す。説明変数には住宅ローン金利も含まれ、個人所得、住宅価格、住宅ローン金利の水準のバランスで住宅の「手頃さ」が表現されている。HAIの内訳をみると、家計所得(中央値)を上回るペースで住宅価格が高騰していることがHAIの低下につながっている。また、30年住宅ローン金利も直近ピークの7%台半ばからは低下したものの、依然として6%台前半で高止まりしていることが住宅ローン返済比率を押し上げる要因になっている。本文冒頭のトランプ米大統領の要求や指示は住宅価格や住宅ローン金利の低下を促し、住宅アフォーダビリティの改善を図っていると整理できる。

 米政府は家計支援へと政策の軸足を明確に移行させており、少なくとも11月の米中間選挙まではこの傾向は変わらないだろう。資産価格上昇の恩恵を受ける高所得層の寄与により経済全体では個人消費の拡大ペースに明確な陰りはみられていないものの、米政府がアフォーダビリティ政策を急いでいる点からは、所得格差拡大、物価高騰、金利上昇などにより、中間層でも家計の経済的余裕が低下していることがうかがえる。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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