Today's Insight

2026/8/19 10:30作成

原油:中東情勢の紆余曲折による不安定な値動きが続く

■ 世界原油需給は時間の経過とともに供給超過に転じるとみられ、WTIは下押しされやすいか
■ 米中間選挙後に米国の対中東戦略がどのように変化するか注目したい

 国際機関による8月時点の世界原油需給見通しが出揃った。2026年の世界原油需要(日量)に関して、国際エネルギー機関(IEA、前年比84万バレル減→104万バレル減)、石油輸出国機構(OPEC、同78万バレル増→58万バレル増)、米エネルギー情報局(EIA、同122バレル減→125万バレル減)はいずれも下方修正した。原油供給(日量)については、EIA(同423万バレル減→530万バレル減)、IEA(同370万バレル減→430万バレル減)がそれぞれ下方修正した。以上から、EIAは191万バレル、IEAは130万バレルの需要超過との想定となった。IEAは中東紛争の再燃とホルムズ海峡を通じた海上輸送の混乱により供給見通しを引き下げ、価格高騰により需要が縮小するとの見方を示した。2027年の世界原油需要(日量)に関して、OPEC(前年比194万バレル増→216万バレル増)、EIA(同203万バレル増→223万バレル増)、IEA(同200万バレル増→240万バレル増)はそれぞれ上方修正した。原油供給(日量)について、EIA(同795万バレル増→892万バレル増)、IEA(同750万バレル増→830万バレル増)はそれぞれ上方修正した。以上から、EIAは478万バレル、IEAは460万バレルの大幅な供給超過に転じる想定となっている。

 OPECプラス*¹の有志7カ国は8月2日の月次会合で、9月に自主減産を終了することを決定した。今後は年内で期限を迎える同200万バレルの協調減産の取り扱いに市場の関心は移行する。湾岸産油国はホルムズ海峡を迂回する輸送能力の増強に踏み切っているほか、世界的にも調達先の多様化などエネルギー政策の見直しが進み原油供給が膨らむとの見方もあり、原油先物価格(WTI)に下押し圧力がかかりやすくなるだろう。一方で、米国とイランの軍事衝突により、IEAは日量1400万バレル超、サウジアラムコの最高経営責任者(CEO)は同1100万バレルの原油が市場から失われたと推計している。IEAは大幅に減少した石油備蓄の復旧が進むほか、新たな戦略備蓄の構築に向けた機会となるかもしれないとしている。こうした需要回復が進展すれば供給超過幅が縮小し、WTIは下支えされるだろう。

 足元では米国とイランの軍事攻撃の応酬が続くなかホルムズ海峡や紅海での緊張が再び高まっている。恒久的な戦闘終結を含む両国の和平協議は一進一退となり、世界原油需給見通しは中東情勢により大きく変化しうる状況が続くとみられる。WTIは両国の軍事衝突が始まった2月末(1バレル67ドル台)を上回る水準での上下動が想定される。11月の米中間選挙の結果を受けて、米国の対中東戦略がどのように変化するか注視したい。

 *¹ OPECプラス=石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織


投資調査部長
山口 真弘

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