Today's Insight
2026/10/16 11:10作成
フランスの政治・財政を巡る混乱
■ 仏国債売りの背景には、政治の機能不全が財政立て直しを困難にするとの市場の懸念がある
■ 予算協議と仏大統領選の行方が注目される。ECBの政策に直ちに影響を与える可能性は低い
足元、フランス(仏)国債は強い売り圧力に晒されている。仏10年国債利回りは10月初めに5%近くまで上昇し、欧州国債の指標金利とされる独10年国債との利回り差は、一時2012年以来となる140bps超の水準まで拡大した。仏国債売りの背景にあるのは、政治が機能不全に陥り、財政悪化の立て直しが難しくなるとの市場の不安だ。仏財政環境は、マクロン政権下の新型コロナ対策、ロシアのウクライナ侵攻やイラン情勢の緊迫に伴うエネルギーショックへの対策を通じて大きく悪化し、政府債務残高対GDP比は120%近くに達する。フランスは2024年から欧州連合(EU)の過剰赤字是正手続き(EDP)の対象国となり、仏政府はEUから財政収支の基調的な改善を求められている。しかし、国民議会(下院)での与党グループの議席は3割を切り、ここ数年、歳出削減を主導しようとした首相は次々と退陣に追いやられてきた。
フランスでは来年4月から5月にかけて大統領選が行われる。現職のマクロン大統領は2期目のため立候補できない。同氏の後継である中道・中道右派候補の支持は伸び悩み、世論調査では極右・国民連合(RN)のルペン氏と極左・不服従のフランス(LFI)のメランション氏の対決となる可能性が高まる。両者とも、公約が財政拡張的かつEU懐疑的である点が市場で警戒される。6日にはルペン氏が財政構想を公表して債務残高抑制に取り組む姿勢を示したが、実現可能性には疑問も残り、懸念は大きくは払しょくされない。こうしたなか2027年度予算協議の行方が大きく注目される。1日に議会に提出された予算案では、財政赤字を5.0%に抑える方針が示された。利払い費増を踏まえれば、GDP比1.2%程度の大幅な財政引き締めを必要とする厳しい計画だ。社会党が反発する一方、RNは一定の妥協を検討する姿勢を示すが、分裂する議会での審議は難航する可能性が高く、年末にかけてその行方が注目される。
こうしたなかでも、足元の仏国債金利の上昇が欧州中銀(ECB)の金融政策に直ちに影響を与える可能性は低いだろう。2022年7月に導入された伝達保護措置(TPI)プログラムでは、「各国固有のファンダメンタルズでは説明できない、無秩序な市場変動」が生じた場合に国債の買い入れが可能だ。しかし、この措置はまだ1度も発動されたことがなく、ラガルド総裁は14日、「フランスは財政健全化を通じて自国の債務問題を解決すべき」と述べ、ECBによる仏国債買い入れへの市場の思惑をけん制した。ただし、足元のECB高官発言からはユーロ圏の長期金利上昇への警戒の高まりがうかがわれる。今後、ユーロ圏の長期金利上昇が景気や価格転嫁を鈍化させるような状況になれば、追加利上げの可能性は低下するだろう。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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