Today's Insight
2026/8/18 10:50作成
中国:景気低迷でも進むAIシフトと次世代インフラ整備
■ 7月に国内の経済活動が総じて落ち込んだことが明らかとなり、政策支援の必要性が高まった
■ 循環的な景気変動とは関係なく、国家戦略としてのAIの経済・社会インフラへの融合は進行する
中国では昨日、7月の主要経済指標が発表された。鉱工業生産(前年比4.5%増)、小売売上高(同0.6%増)、サービス業生産指数(同4.3%上昇)の増加・上昇ペースは鈍化し、固定資産投資(農村部除く、年初来同6.7%減)の減少率は拡大した。7日に発表された貿易統計では、ハイテク分野の製品輸出および原材料輸入を中心に輸出(同23.9%増)、輸入(同27.5%増)ともに大幅に増加し世界的な人工知能(AI)関連需要が継続していることが示されたものの、豪雨、洪水などの自然災害、および電力需給ひっ迫などによる製造業の稼働率低下の影響で国内の経済活動は総じて落ち込んだ。政府目標を下回る成長率となった4-6月期以降も景気は低迷しており、中国政府による景気下支え策の必要性が高まっている。
経済情勢や経済政策が主題であった7月30日開催の中央政治局会議では、下半期の経済政策運営の基本方針が示された。「穏中求進(安定的な発展の追求)」の下での「より積極的」な財政政策や「適度に緩和的」な金融政策など、3月に掲げた方針を維持し、必要に応じて追加的な政策を打ち出すことを表明した。マクロ経済政策では、債券発行を含めて財政支出を加速して「両重」建設(国家戦略プロジェクトと重要インフラ投資)と「両新」政策(設備更新と消費財の買い替え)が力強く推進される。金融政策も内需拡大を支援するため財政政策と連携して必要に応じて調整する。産業政策では、ハイテク分野の供給能力増強、サービス消費振興、「六張網」*1と呼ばれる次世代インフラ整備、現代産業体系構築が推進される。特に人工知能(AI)分野では、「AIプラス行動」と名付けたAIと経済・社会インフラの融合による生産性向上や新産業創出を目指す国家戦略が強調された。中国政府はハイテク分野のなかでもAIを産業政策や政府の目指すスマート経済の中核に位置付けている。
経済政策以外では、10月に中国共産党第二十期中央委員会第五回全体会議(五中全会)を開催することを決定し、厳格な党内統制の持続的推進に向けた重要問題の検討を主な議題とすることが合わせて発表された。共産党による統治態勢を一段と強化する意図がうかがえる。AIの経済・社会インフラへの融合を優先課題に挙げているのは経済だけでなく治安維持、安全保障など国家統治の基盤強化の意味合いもあり、循環的な景気変動に対応するマクロ経済政策とは異なり、景気変動に関わらず長期的観点で進められていくと考えられる。
*1 河川網、次世代電力網、算力網(AI向けコンピューティングネットワーク)、次世代通信網、都市地下インフラ網、物流網の6つの次世代インフラの総称で4月の中央政治局会議で打ち出された
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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