Today's Insight

2026/8/21 11:30作成

スイスフラン:キャリートレードがフラン安に寄与

■ 6月中旬以降、対ユーロに代表されるフラン安進行は外需重視であるスイス経済を支える
■ キャリートレードを巡る動きに注目、日米協調介入後に調達通貨としてフランへの注目が高まった

 本稿では、6月中旬以降のフラン安を巡る動向を整理したい。この間、主要先進国通貨のなかで米ドルに次いで軟調に推移しており、特に貿易関係の深さからスイス中銀(SNB)が注視する対ユーロ相場は8月中旬に、昨年12月上旬につけた0.9395フランを突破して、約1年ぶりのユーロ高・フラン安水準を示現した。構造的に貿易で稼ぐ外需重視であるスイス経済にとって、今年3月に2015年1月以来となる0.90フラン割れまで進んだフラン高からの状況変化はプラス要因として位置付けられよう。

 6月中旬以降にみられるフラン安進行は、キャリートレードが要因の一つとみる。SNBは2014年3月以降の利下げサイクルで政策金利を0.00%まで引き下げるなど、フランは主要通貨のなかで低金利通貨としての地位を保つ。「年率0%以上2%未満の消費者物価(CPI)上昇率」を物価目標とするなか、CPI上昇率は昨年5月に一時2021年3月以来となるマイナスに落ち込んだほか、直近にかけても物価目標レンジの下限付近で推移。原油価格が上昇した今年春以降に主要国で利上げ観測が広がるなかでも、SNBは利上げへ向けて慎重な姿勢を維持する。特に、国際通貨基金(IMF)が7月の世界経済見通し(WEO)で指摘した通り、中東情勢を巡るショックが和らぐ一方で人工知能(AI)関連のブームが支えとなって世界的な景気減速懸念が後退し、為替市場ではキャリートレードへの意識が強まったとみている。

 加えて、7月下旬には日米当局による協調介入が実施されたことで、もう一つの低金利通貨で従来からキャリートレードの調達通貨だった円の見通しに対する不確実性が高まった。そのため、金融市場では調達通貨としてのフランへの注目度が高まったと推測する。また、日銀の金融政策を巡っては早ければ次の利上げが9月と見込まれるうえ、来年にかけて利上げ継続の思惑が強い。日本とスイスの政策金利差拡大が進めば、調達通貨としてフランが選好される可能性は高まるのではないか。

 19日、米財務省による米国債買入規模拡大の報道後にユーロフランは一時3日安値(0.9301フラン)付近まで買い戻された。ただ、中東情勢がエスカレートしないなど「安全通貨」としての注目が高まらなければ、当面の間は緩やかなフラン安地合いが意識される見込み。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

プレスティア インサイトについて

マーケット情報