Today's Insight

2026/7/14 10:30作成

グローバル:金融政策の枠組み見直し機運が高まる

■ 米国に続いてユーロ圏でもフォワードガイダンス見直しが示唆された
■ 金融政策サイクルの転換に伴い2010年代に確立したコミュニケーションの弊害が意識されている

 6月29日から7月1日にポルトガル・シントラで開催された欧州中銀(ECB)フォーラムでの基調講演で、ラガルドECB総裁は「フレームワークガイダンス」と名付ける概念を提示し、現在の複雑なフォワードガイダンスには弊害があると述べた。この主旨は、2010年代と環境が変わりフォワードガイダンスを含む非伝統的な金融政策に頼るのではなく政策金利調整による伝統的な金融政策へ回帰すべきという主張で、既存の枠組みの欠点の修正(講演では「革新」と表現)、および単一の指標やシナリオに基づく政策判断の見直しにも言及している。「フレームワークガイダンス」という新たなツールの効果は今後評価されていくことになるが、6月16、17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフォワードガイダンスを撤回した米国に続いて、ユーロ圏でもフォワードガイダンスを見直すことが示唆され、2010年代に確立された現在の金融政策の枠組みを修正する動きが世界的に広がりつつある。

 米国では、7月8日に公表された6月16、17日開催分のFOMC議事要旨で、経済と金融政策の見通しに関する様々なシナリオが議論されたこと、多くの(a number of)参加者が声明文の大幅な変更を支持し、過半数の(a majority of)参加者が声明文の短縮化に利点を見出していたことが明らかになった。ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事は7月6日の講演で、フォワードガイダンスは今後も引き続き有用なツールであるとの認識を示す一方、政策決定の妨げになることがあったとも述べ、厳格なガイダンスは政策の伝播効果を損なう可能性があるとの見解を示している。この講演のなかで、メインシナリオと異なる経済・政策金利の経路がそれなりの確率で認められる場合にはいずれにも適用できるガイダンスを明示することは困難であるとし、十分に柔軟であることをガイダンスの有効性を高めるための必要条件に挙げている。今後のFRBのコミュニケーションの方向性を示す手掛かりとなるだろう。

 これらの動向からは、中央銀行の間でフォワードガイダンスの有効性を認めつつもその弊害が認識されていたことがうかがえる。フォワードガイダンス見直し機運の背景には政策課題が2010年代のディスインフレ対策から2020年代にインフレ対応に変わったことが挙げられる。金融政策サイクルの転換期に差し掛かり、迅速な対応の制約となりつつある。金融市場の期待に働きかけるアプローチは基調が明確であれば効果的だが、見通しの不確実性が高まる転換期にはこれを反映したコミュニケーションスタイルへ改められていくと予想される。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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