Today's Insight
2025/12/29 10:10作成
日本株:2026年の相場観
■ 企業価値向上を求める圧力やインフレ定着が評価され、PER水準が切り上がる可能性
■ 日中関係悪化の長期化・深刻化や、米国の利下げ打ち止めや中間選挙を巡る環境変化を注視
2025年の日経平均は年始からの軟調基調が4月に一変し、年後半に上昇に転じてからは大幅に水準を切り上げる展開となった。米政権の関税政策が二転三転し年初から軟調推移となるなか、4月に相互関税が発動され中国が報復措置に出たことで、年始の4万円付近から一時3万円台まで急落した。その後、米政権が打ち出す極端な政策が最終的には実現しないとの見方が強まったほか、7月下旬に日米関税交渉が妥結に至り、上昇に転じて最高値を更新した。10月に高市政権が樹立され「責任ある積極財政」への期待が高まったほか、米国を中心に人工知能(AI)関連需要の拡大への思惑が強まり、本邦関連銘柄が押し上げられたことも相まって、5万2000円台まで上値を伸ばした。11月以降はAI関連の過剰投資に対する警戒感が高まり、5万円を中心に高下する展開となったが、26日時点の年初来上昇率は27.2%と、米国(S&P500 17.8%)や欧州(ストックス欧州600 16.0%)を上回った。
TOPIXの向こう1年予想株価収益率は26日時点で15.5倍と、2013年以降のレンジ(12-16倍)の上限に接近しており、割高な印象も否めない。しかし、東京証券取引所や投資家が企業価値向上を求める圧力は定着しつつあるほか、賃上げに伴うインフレ圧力が持続することで、TOPIXの予想ROEは9.7%と年始(9.3%)から上昇基調をたどっており、これに応じて予想株価純資産倍率(PBR)も上昇している(1.31倍→1.51倍)。予想PBRの上昇につれて予想PERのレンジが切り上がり、17倍程度までは上昇余地があるとみる。
インフレ定着による増収効果や企業の価格設定行動の変容に伴う利益率の改善、賃上げに伴う内需回復による業績拡大、企業の買収・合併(M&A)や株主還元策、などへの期待といった日本株特有の好材料は来年も意識されよう。政府が閣議決定した2026年度予算案は一般会計総額が前年比約7兆円増の122.3兆円と、2年連続で過去最大規模となった。高市政権が推進するAIや半導体が含まれる電機・精密、国防や原発推進が含まれる機械や鉄鋼・非鉄などのセクターには追い風となろう。市場では向こう1年予想EPS成長率は10.2%と予想されており、日経平均の上値余地は5万8000円、年末終値は5万4000円を想定している。
日中関係の悪化が長期化するほどインバウンド関連銘柄や中国売上比率の高い銘柄に悪影響が強まるほか、レアアース輸出制限まで深刻化すれば自動車や家電メーカーに打撃が及ぶだろう。また、来年もAI関連の需要拡大や過剰投資に対する思惑がくすぶり、大きな株価変動要因となる。2026年後半には米国の利下げ打ち止めが視野に入るほか、米中間選挙に向けた政策効果の一巡が警戒され、株価上昇の勢いが失われるリスクを想定しておきたい。
投資調査部長
山口 真弘



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