Today's Insight
2026/9/14 11:45作成
ECBはインフレへの警戒をさらに強める
■ 景気の底堅さ、インフレの粘着性、エネルギーショック継続により、ECBは12月に追加利上げへ
■ 来年以降の利上げは、中東情勢や天然ガス市場の動向に大きく左右されよう
9、10日に開催された欧州中銀(ECB)理事会では、予想通り25bpの利上げが決定され、預金金利は2.5%へと引き上げられた。声明文では、会合毎・データ次第、事前のコミットメントなしとの従来の枠組みが踏襲された。ラガルド総裁の記者会見では、インフレへの警戒感が強調されたが、中東情勢の不透明感を受けて会合ごとに判断する姿勢は維持された。ただし、スタッフマクロ経済予測からはECBが景気よりも物価を警戒していることが示唆された。成長率見通しは、景気の底堅さが織り込まれて上方修正され、異常高温の影響は2026年7-9月期の一時的な減速にとどまっている。インフレ見通しは小幅に上方修正され、2028年末でも目標を上回る前年比2.3%上昇が見込まれる。また、予測の前提は8月19日時点のデータに基づいており、その後エネルギー価格が悪化シナリオ並み上昇している点は、金融政策対応の必要性をより高めるだろう。
回復力のある経済成長、目標を上回るインフレ率、継続的なエネルギーショックを踏まえれば、ECBは12月の会合で追加利上げに踏み切るとみられる。コアインフレ率が高止まる背景には、賃金の粘着性に加え、人工知能(AI)関連需要に伴うテクノロジー関連価格の上昇も影響している可能性があり、こうした圧力が短期的に解消されるとは考えにくい。さらに、中東紛争の継続により、欧州の天然ガス価格はこの冬を通じて高止まりするリスクが高まっている。エネルギーコストの二次的波及はまだ限定的だが、底堅い景気とインフレ高止まりを受けて、より明確な波及が広がることへの警戒は続き、追加的な利上げの可能性は高い。
また、ECB高官らによる中立金利を巡る議論も利上げを後押ししよう。シュナーベル理事は、AI関連投資や公共投資・財政拡張などを受けてユーロ圏の自然利子率が構造的に上昇し、中立金利が切り上がっている可能性を論じている。またレーン理事も中立金利レンジ上の上限が2.25%から2.5%へ上昇した可能性を指摘する。こうした点を踏まえれば、政策金利は12月に2.75%への利上げが実施され、やや引き締め的な領域に入ることになる。
12月の利上げ後は、政策金利は当面据え置きを見込む。上記の議論はその先の利上げを排除するものではなく、市場ではすでに2027年7-9月期までに追加的に2回程度の利上げが織り込まれている。ただし、来年以降の利上げは中東情勢や天然ガス市場の動向に大きく左右されるとみられ、引き続きその動向を注視したい。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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