Today's Insight
2026/10/21 12:30作成
フランスの政治・財政を巡る混乱(2)
■ フランスでは、各地でデモが起き、一部暴動が発展する事態に
■ 政府は財政再建を目指すが、抗議運動を受けて、2027年の予算審議がさらに難航する可能性
フランスでは、学生の教育環境の改善を求める抗議活動を発端に、各地で大規模なデモが起き、一部で暴動に発展する事態となっている。この背景には、物価高による生活苦、公共サービスの質低下に伴う、政府への不信がある。19日にはルコルニュ首相が、一部地域で夜間の外出禁止令を要請したと伝わり、抗議の長期化による景気への悪影響も懸念される。これを受け、20日のフランス10年国債利回りは、24年ぶりの高水準近辺となる4.98%台後半まで上昇し、ドイツとの長期金利差も拡大した。
フランスは主要先進国のなかでも、特に税・社会保障負担が重い国だ。本邦財務省による国民負担率(租税と社会保障負担の国民所得に占める割合)をみると、フランスは64.8%と、日本の45.7%、ドイツの53.4%、スウェーデンの55.2%と比較しても負担割合が高い。今回の抗議運動は、物価高に加え、財政支出が公共サービスの改善につながらないとの国民の不満がある。新型コロナ対策やエネルギーショックへの対策で財政赤字が膨らむなか、「高福祉高負担」国家を維持することの難しさが浮き彫りとなる。
今回の抗議運動が、国民議会での2027年予算協議をさらに難しくする可能性がある。政府は財政再建において、増税ではなく、歳出削減に重点を置き、公務員の人員削減・合理化や年金などの社会保障関連支出の抑制を盛り込んだ。しかし、議会で3割弱の議席しか持たない与党は、予算成立において野党の協力が不可欠だ。現在の予算審議は難航しており、歳入部分の審議は27日に延期された。同27日に社会保障予算案、11月17日に予算案全体の採決も予定されており、年内に予算が成立するか注目される。野党との協議が難航し、議会での承認が得られない場合、政府が憲法49条3項で認められた特別な立法手続きにより、予算案の議会採決を迂回することも可能だ*。政府は妥協姿勢をみせる国民連合(RN)の協力を取り付け、この措置に踏み切る可能性もあるが、その場合、RNとの協議で予算案がどのように修正されるかも注目される。それでも、予算法案が期限内に成立しない場合、政府がオルドナンス(行政命令)によって予算を執行できると定められるが、予算法案での執行は前例がなく、政治的に大きな反発を招く可能性が高い。審議の過程で、国民の不満緩和のために公共サービスなどの歳出削減を緩和すれば、財政再建が遠のき、長期金利がさらに上昇する可能性がある。金利上昇は利払い費の増加を招き、財政再建をさらに難しくしよう。フランスの混乱は出口がみえない状況だ。
* その場合、議会は内閣不信任案を提出でき、可決されれば政府は退陣し、予算案も廃案となる。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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