Today's Insight

2020/5/27 12:00作成

豪ドル 豪中関係悪化の影響は軽微か

■ 大麦への関税賦課、牛肉輸入禁止など豪中関係が緊張感を増している
■ 豪経済が新型コロナの影響を事前予想ほど受けていない様子もうかがえ、豪ドルは底堅い

 豪中関係が緊張感を増している。5月18日、中国商務省は豪州産大麦に対して計80.5%の反ダンピング(不当廉売)関税及び反補助金関税を5年間課すと発表した。同省は、2018年11月に開始した調査(期間1年、6カ月の延長可)でダンピングが確認されたとしている。やや古いデータだが2018年年間の豪州の大麦輸出量のうち8割弱が中国向けであり、波紋を呼んでいる。豪政府は世界貿易機関(WTO)を通じた解決を検討するとし、豪農業相は「貿易戦争は起きていない」と強調した。だが、5月12日にも中国は検疫違反として豪州の4つの食肉処理場からの牛肉輸入を禁止しており、豪貿易相は否定したが、新型コロナウイルスの発生源に関する国際調査を豪政府が呼びかけたことを受けた措置ではないかとの見方がくすぶる。

 一方、豪財務省は新型コロナ危機で影響を受けた企業の給与支払いを補助する制度の規模は当初予想の1300億豪ドルではなく700億豪ドルにとどまる見通しと発表した。新型コロナの感染拡大予想が過度に悲観的だったうえ、補助金申請の記入ミスが多く、過大推計されたとの説明だ。また4月の豪貿易統計でもアジア向けの鉄鉱石などが好調で、輸出は過去最高だった3月より減少したものの依然高水準だった。世界的に新型コロナ感染拡大防止の行動規制が行われた3-4月も豪州経済への影響は予想ほど大きくなかった可能性が示唆されたのは注目されよう。こうしたなか、豪ドル米ドルは100日移動平均線0.6488米ドル、豪ドル円は節目の70円辺りまで、下値が切り上がってきている。豪中関係悪化が表面化して以降、上昇ピッチは鈍化しているが、26日には豪ドル米ドルが3月9日以来の高値水準となる0.66米ドル台後半、豪ドル円は2月28日以来の71円台後半へ上昇した。中国への最大の輸出品である鉄鉱石輸出が依然好調(大麦の輸出合計に占める割合は0.6%)なことから豪中貿易戦争に至る可能性は低く、豪ドルは200日移動平均線(0.6658米ドル、72円13銭)を明確に越えてくれば上昇に弾みがつくと考えている。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
白鳥 朋子

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