Today's Insight
2026/10/19 10:00作成
中国:長期化する不動産不況の背景と原因(2)
■ 人口動態、家計の資産構成、財政などの構造的要因は不動産不況の早期脱却を妨げる
■ いずれも解消には長い期間を要し、不動産価格の調整は事態を一段と悪化させうる
10月14日のPRESTIA Insightでバランスシート調整を中心に中国の不動産不況を考察した*1。中国は信用収縮や金融危機への耐性を備えている一方、社会経済構造上、不動産不況の早期脱却を妨げる複数の要因が存在する。代表的な要因には(1)人口動態、(2)家計部門の資産構成、(3)財政が挙げられる。
人口動態では、中国の総人口は2021年の約14.1億人をピークに減少に転じ、国連の中位推計によると2050年に約12.6億人まで減少する。1980年代に進められた「一人っ子政策」は2013年から段階的に緩和されているが、出産適齢期人口の減少、未婚・晩婚化、教育・育児費用増加などにより人口減少に歯止めがかからない。都市化や単身世帯増加は住宅需要を下支えするものの、住宅取得層の人口減少により中長期的に住宅需要は増えにくいだろう。
中国の家計部門の貯蓄率(2025年:約32.0%)は非常に高く、資産構成では総資産における住宅の比率が高い。中国人民銀行が2019年に都市部3万世帯超を対象に実施した中国都市部家計資産・負債調査では、都市部の家計部門の住宅資産は総資産の約59.1%、非金融資産の約74.2%を占めた。都市部への移住労働者を中心に健康保険、年金制度の適用範囲や給付水準が不十分であることが予備的貯蓄を促し、貯蓄は住宅購入に向かった。資産構成が住宅に集中しているため、家計部門は財務的に不動産市場の影響を受けやすい。
財政では地方財政の悪化が問題視されている。現在、主要税収は増値税(付加価値税)や企業・個人所得税などが中央・地方の共有税、消費税(特定品目への課税)は中央税である。税収が中央政府に偏る一方、教育、社会保障、インフラ開発など財政支出は主に地方政府が担っている。不足財源は土地使用権の譲渡や簿外の地方融資平台(LGFV)での資金調達などで賄われてきた。不動産市場の調整は土地使用権の譲渡収入減少やLGFVの担保価値低下により地方政府の債務問題に波及している。中央政府は地方政府への財政移転を進めているが、主に当年度の歳入不足を補うものであり、累積債務の削減につながる訳ではない。
これらは長年蓄積してきた構造的問題で一朝一夕での解消は難しい。特に後者の2点は不動産市場と強く結びついており、価格調整は事態を悪化させる要因にもなると考えられる。
*1 詳細はPRESTIA Insight 2026.10.14「中国:長期化する不動産不況の背景と原因(1)」
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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