Today's Insight

2026/7/8 12:00作成

ECBのインフレを巡る警戒は継続

■ 世界的な人工知能(AI)関連需要がユーロ圏経済を下支え。域内の個人消費も底堅さをみせる
■ ECB理事会メンバーは、中東の緊張緩和を好感もインフレを巡る警戒は継続している

 ユーロ圏経済は、これまでのエネルギー価格上昇を受けても想定以上の底堅さをみせている。6月のPMI改定値では、総合指数(50.0、前月比1.5ポイント上昇)が、速報値の49.5から0.5ポイント上方修正され、3カ月ぶりに好不況の境目である50まで上昇した。産業別の内訳をみると、情報関連機器やソフトウェア・サービスの新規受注・生産が大きく上昇しており、世界的な人工知能(AI)関連需要がユーロ圏の企業活動の支えとなっていることが示唆される。部門別では、製造業(51.4、同0.2ポイント低下)が5カ月連続で50を上回り、速報値から上方修正された。また6月の上方修正の主因は、サービス業の回復が挙げられる。サービス業PMI(49.4、同1.7ポイント上昇)の水準は、4月以降50を下回っているものの、6月は大きく上昇。これまでサービス業低迷の背景には、エネルギー価格の上昇で購買力が棄損した家計部門の弱さがあるとみられていたが、6月の結果はこの懸念を和らげた。5月の小売売上高(前月比0.2%増)も増加し、域内の財消費は底堅さをみせる。5月の増加は主にドイツ (同1.1%増) が牽引しており、政府の政策により価格上昇が抑制されたことで燃料販売が回復。スペイン(同0.6%増)も堅調な伸びとなった一方、フランス(同0.3%減)とイタリア(同0.3%減)は減少。域内全体でみれば、5月の燃料販売は減少が続いたが、エネルギー価格の下落および熱波による冷房需要増もあり、6月の消費はさらに増加する余地があるだろう。

 こうしたなか、欧州中銀(ECB)は6月29日から7月1日にECBフォーラムを開催し、多くの理事会メンバーが発言した。多くのメンバーが中東での緊張緩和と足元のエネルギー価格の下落を好感する一方で、ECBのインフレを巡る警戒が継続している様子もうかがえた。ラガルドECB総裁は講演において、「ショックに応じて、慎重に政策金利を調整する」と発言。2022年のような大幅な利上げの可能性は低下したが、ECBは今後のインフレの動向を注視しながら利上げの是非決定していくことになるだろう。足元のインフレ動向をみると、6月の消費者物価指数(HICP速報値)は、総合が前年比2.8%上昇、コア(エネルギー・食料・酒類・タバコを除く)が同2.4%上昇となった。物価の伸びは鈍化したものの、エネルギー価格上昇の二次的波及が本格化する前から2%のインフレ目標を上回る状態が続いている。7月は政策を据え置き、9月の追加利上げがメインシナリオとみられる。ただし、9月会合での利上げは物価の基調次第であり、今後の物価への二次的波及の度合いや賃金動向を注視する必要があろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

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