Today's Insight

2026/10/20 11:00作成

米国:中間選挙の注目点

■ ねじれ議会となれば財政赤字拡大懸念は和らぐが、政府機関閉鎖や債務不履行が警戒される
■ 州知事、州議会選挙の結果、州主導でAI規制強化の動きが強まらないか警戒したい

 11月3日に米中間選挙が行われる。共和党が上下院で過半数を維持すれば、追加減税や給付などにより財政赤字が一段と拡大することが想定されるものの、その可能性は低い。最新の世論調査によれば、下院は民主党が奪還し、上院も民主党がやや優勢の模様だ。民主党が下院の過半数を確保するだけでもねじれ議会となり、様々な影響が及ぶ可能性がある。

 (1)財政政策では、2025年7月に成立した減税・歳出法(OBBB法)により2017年のトランプ減税が恒久化されており、減税措置の停止による景気下押しへの懸念はない。ねじれ議会となれば追加減税も想定されず、財政政策は現状維持が見込まれる。(2)2027年度予算については、暫定予算で12月11日まで手当てされているものの、民主党の勢力が強まるほど予算成立が遠ざかり、政府機関閉鎖のリスクが高まるだろう。(3)連邦債務上限について、Bipartisan Policy Center(BPC)は2027年夏頃に上限に達し、米財務省の特別措置によりその後6-9カ月間は資金繰りがつくと試算している。連邦債務の上限引き上げ協議が難航すれば、2027年後半にかけて債務不履行リスクなどが警戒されることとなろう。(4)関税については不確実性が残る。米国憲法により関税を課す権限は議会にあるが、議会が制定した通商法によって大統領に一定の関税権限が委任されており、現在米国が課している関税は通商法を根拠にしている。米議会で民主党の影響が強まったとしても、トランプ関税に制限を掛ける動きは生じにくく、政策不確実性は残存するとみられる。以上から、財政赤字の拡大懸念は強まりにくいものの、予算や連邦債務上限を巡る協議や関税などの不確実性がリスクプレミアムを高め、米国債利回りを押し上げる力として作用しよう。

 なお、規制強化の動きには警戒したい。中間選挙を通じて人工知能(AI)開発やデータセンター建設に対する規制強化を呼びかける動きが強まってきたが、米国におけるAI規制は州法が中心となっている。中国とのAI開発競争にさらされるなか、トランプ米大統領は州ごとに異なるAI規制を問題視し、2025年12月にAI規制を連邦基準に一本化する大統領令(「AIに関する国家政策の枠組みの確保」)に署名した。規制緩和を志向する連邦方針と矛盾する州法を無効化するよう司法省が提訴する枠組みを打ち出したものの、具体的な動きはほとんどみられていない。中間選挙とともに行われる州知事・州議会選挙の結果、州主導で規制強化の動きが強まった場合、AI関連の企業業績の先行き不透明感が高まり株価調整が深まる可能性があり、警戒したい。


投資調査部長
山口 真弘

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