Today's Insight

2026/7/28 10:30作成

米国:重い住居費負担が家計を制約

■ 住宅価格や金利の上昇により住宅アフォーダビリティは再び悪化
■ 関連コストを含めた住居費は世帯所得の40%を上回るデータもあり、家計収支を制約している

 物価高に直面する有権者の生活コストの負担軽減が今年11月の米中間選挙の争点の1つとなるなか、コストプッシュインフレ加速や金利上昇によりアフォーダビリティ(経済的余裕、主に生活費などの負担能力を示す概念)が再び悪化している。住宅アフォーダビリティを示す代表的な指標である住宅取得能力指数(Housing affordability index、HAI)は低水準ながら昨年後半には復調の兆しがみられていたが、最新データの6月まで5カ月連続で低下している。内訳からは、住宅価格(中央値)や住宅ローン金利(30年固定)の上昇の影響が家計所得(中央値)の増加に勝っていることが確認できる。

 HAIは最新値(6月:102.3)でも指数の基準である100を上回っており、指数の定義上、標準的な家計が中央値価格の住宅を20%の頭金を入れ30年住宅ローン(固定金利)を組んで購入する場合、元利均等支払のローン返済が家計所得の25%以内に収まることを意味している。すなわち標準的なケースでは中所得層の住居費は所得の25%程度であると考えられる。ただし、頭金を10%、住宅ローン元利返済に加えて税金、保険などを住居コストに含め、HAIよりも家計の住居費負担を厳格な基準で評価するアトランタ連銀の住宅所有アフォーダビリティモニター(Home Ownership Affordability Monitor、HOAM)では、世帯所得(中央値)に対する住居費負担は最新データである4月で43%に達する。2021年4月以降はアトランタ連銀が基準とする30%を上回っており、関連コストを含めた住居費は家計所得の非常に大きな割合を占める状況であることがうかがえる。HAIでは家計の住居費負担は適正範囲内だが、HOAMからは税・保険などを含めた住居費負担の重さが明確になる。

 景気拡大に連動して家計所得の増加傾向が続くなかでも中所得層の生活費負担が軽減されない一因には、HAIやHOAMが示すように最大の支出項目である住居費の負担が高水準にあることが挙げられる。関連コストを含む住居費が家計所得の40%超を占める状況はフローベースで家計収支を制約し、貯蓄率低下や消費者マインド悪化に寄与していると推測される。米国では今月、超党派で提出された住宅供給適正化法(21st Century ROAD to Housing Act)が成立した。同法はアフォーダブル住宅を含む住宅供給拡大、低所得世帯の住宅取得・賃貸支援の対象拡大、建設規制緩和などの包括的な住宅支援策である。ただし現在の外部環境で金利や住宅価格低下を促すのは難しく、アフォーダビリティ改善は限られよう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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