Today's Insight
2026/9/30 11:45作成
ユーロ圏:金利上昇が景気減速につながる可能性も
■ ラガルドECB総裁は、長期金利上昇が景気や物価への価格転嫁も抑制する可能性に言及
■ 一方、中立金利レンジの切り上がりも指摘しており、12月理事会での追加利上げを後押ししよう
ラガルド欧州中銀(ECB)総裁は28日、欧州議会の定例公聴会に出席し、ユーロ圏経済の見通しと金融政策対応について言及した。定例公聴会で認識が変更されることはあまりないが、足元の長期金利上昇を受けて、景気やインフレへのやや慎重な見方が追加された。
ラガルド総裁は講演において、ユーロ圏総合PMI速報値の急上昇など踏まえて景気回復の力強さを認めた一方、足元の長期金利の大幅な上昇が今後の景気拡大の抑制要因になるとの見解を示した。世界的な金利上昇が続くなか、欧州債券市場でも大幅な金利上昇が続く。9月のECB理事会を経て、市場のターミナルレート(政策金利の到達点)の見通しが引き上げられたことを背景に、ドイツ(独)10年債利回りは一時、2009年以来およそ17年ぶりの高水準となる3.64%台前半を付けている。ラガルド総裁は、インフレに関しても、金利上昇が価格転嫁を限定的にするとの見方を示した。エネルギー高によりインフレが数カ月前の見通しよりも高くなることを認めつつ、現段階ではエネルギーコスト上昇が賃金上昇につながるという証拠はまだみられておらず、インフレへの政策対応を慎重に見極めて行うとの姿勢を示している。
景気・インフレへの見方にはやや慎重さが加わった一方、中立金利を巡る発言は追加利上げを後押しするものだった。公聴会の質疑応答のなかで、ラガルド総裁は中立金利のレンジについて2.0-2.5%と回答した。これまで公表されているECBスタッフによる中立金利の推計値は1.75%-2.25%であり、今回言及されたレンジが正式に公表されているわけではない。しかし、これまでもシュナーベル理事が、人工知能(AI)関連投資や公共投資・財政拡張などを受けてユーロ圏の自然利子率が構造的に上昇し、中立金利が切り上がっている可能性を論じており、ECB内での議論が進んでいるようだ。現在2.5%である政策金利は依然として中立金利の上限にとどまっており、さらなる政策対応が必要となる可能性がある。
上記の点を踏まえれば、ECBのインフレへの警戒は続いているものの、エネルギー高の物価への二次的波及が限定的ななか、会合毎・データ次第の慎重な姿勢を維持されており、10月の理事会での政策金利は据え置かれる可能性が高いだろう。当行は引き続きECBの12月の利上げを見込む。来年以降は当面据え置きを見込むが、利上げ実施の有無は今後の中東情勢や天然ガス市場の動向に大きく左右されよう。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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