Today's Insight

2024/4/17 11:00作成

原油:国際機関の需給見通しは概ね均衡

■ 国際機関の原油需給見通しは概ね均衡、WTIの値幅は拡大しやすい地合い
■ イスラエルとイランの間で報復攻撃が連鎖し、WTIが上振れするリスクを警戒

 国際機関による4月時点の世界原油需給見通しが出揃った。世界の原油需要量に関して、石油輸出国機構(OPEC)は2024年を前年比2.24%増(2023年:1億211万バレル→2024年:1億440万バレル)、2025年を同1.77%増(1億625万バレル)に、それぞれ予想を据え置いた。米エネルギー情報局(EIA)は2024年を同1.42%増(2023年:1億100万バレル→2024年:1億243万バレル)に据え置き、2025年を同1.35%増(1億381万バレル)に上方修正した。一方、国際エネルギー機関(IEA)は2024年を同1.18%増(2023年:1億200万バレル→2024年:1億320万バレル)に下方修正し、2025年を新たに1.07%増(1億430万バレル)と見通した。緩やかな需要拡大との見方は一致しているが、OPECが中国・インドなど新興国の需要増を見越して相対的に楽観視している一方、IEAはやや慎重姿勢を維持している。新型コロナ禍後の需要拡大局面はほぼ一巡したとみるほか、足元の原油高も需要抑制要因と指摘した。また中国で経済成長ペースの鈍化に加え、電気自動車(EV)や高速鉄道などの普及により、原油需要の伸びが緩やかになると見通している。

 世界の原油供給量については、EIAは2024年を同0.83%増(2023年:1億180万バレル→2024年:1億265万バレル)、2025年を同1.91%増(1億461万バレル)とそれぞれ上方修正した。IEAはOPEC加盟国と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」の一部による自主減産が年末まで続くと想定し、2024年を同0.78%増(2023年:1億210万バレル→2024年:1億290万バレル)に下方修正した。2025年には減産が打ち止めになると想定し、同1.55%増(1億450万バレル)と予想。世界原油需給に関して、2024年はIEAが需要超過、EIAが供給超過を想定し、2025年は両機関とも供給超過になるとみている。ただ、いずれも超過幅は小幅で、原油需給は概ね均衡状態が続き、需要・供給の些細な増減要因でもWTIの値幅が拡大しやすい地合いが続くとみられる。

 今後の世界原油需給を見通すにあたり、需要面では欧米の景気減速の度合いや中国を中心とした新興国の景気拡大ペースが重要な要素となるだろう。供給面ではまず、OPECプラスによる自主減産の実効性と、米国やブラジルなど非OPEC諸国の増産の影響を見極める必要があろう。また、中東情勢にも引き続き注目したい。イスラエルは16日、イラン攻撃巡る戦時内閣の3度目の閣議を17日に延期しており、他国から自制を求められるなかで同国の動向を注視したい。イスラエルとイランの間で報復攻撃が連鎖すれば、原油需給ひっ迫への警戒感が高まり、WTIは90ドル台への道が開かれよう。 


投資調査部長
山口 真弘

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