Today's Insight
2026/10/2 11:00作成
米国:金融政策は「Higher for Longer」戦略に回帰か
■ 米国債イールドカーブのベアフラットニングが進行しており、利上げ織り込みが利回り上昇を主導
■ FRBは「Higher for Longer」戦略に回帰しインフレ抑制に向けて金融引き締めの長期化を優先か
米10年国債利回りは9月に上昇基調を強め、2002年以来の水準となる5.34%台に達した。米国債利回りは期間2年など中期国債の上昇幅が相対的に大きくイールドカーブのベアフラットニング(利回り上昇とイールドカーブ平坦化)が進行している。利回り上昇の主因は金融市場での米連邦準備理事会(FRB)による利上げ織り込みであると整理される。8月28日にウォーシュFRB議長がジャクソンホール経済政策シンポジウムでの講演でインフレ抑制を優先した金融政策運営を行う方針や政策判断において金融市場での価格形成を重視する考えを示したことが、利上げ織り込みを促す契機となった。9月に発表された物価統計では基調的な物価に明確な加速はみられないものの、中東紛争長期化によるエネルギー価格の再上昇や人工知能(AI)投資ブームによる経済需給ひっ迫で物価安定に対する懸念が広がっている。
9月15、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げが全会一致で決定され、10月以降も複数回の利上げが予想されている。米短期金融市場では2028年初までに政策金利の誘導目標を4.75-5.00%まで累計1.00%引き上げることが織り込まれつつある。ウォーシュFRB議長は金融市場での価格形成を重視しているため政策金利に関するガイダンスが明示されることは期待しづらく、利上げ織り込みが進展するなかでも金融政策の不確実性の対価としてタームプレミアムは高水準で推移している。また米10年物価連動国債のブレークイーブン・インフレ率(BEI)の水準は比較的安定しており、実質金利が上昇していることも9月以降の国債利回り上昇の特徴である。AI関連需要に支えられ潜在成長率を上回る経済成長が続くとともに、AI投資に向けた企業の社債発行の増加が債券市場の資金需給を引き締めていることも市場金利の押し上げやタームプレミアムの高止まりに寄与していると考えられる。
FRBは労働市場の減速を理由に2025年9月以降累計0.75%の利下げを実施し、労働需給安定の確認後も政策金利は据え置かれた。当行では米国の政策金利見通しを見直し、2027年前半までに政策金利の誘導目標を再び4.25-4.50%へ引き上げ、インフレ抑制が明確になるまで政策金利を同水準にとどめると予想する。金融市場の織り込みを下回るものの、FRBは利上げ局面終盤の2023年に打ち出した「Higher for Longer(高金利の長期化)」を採用し、大幅利上げよりも引き締め的な政策金利水準の長期間維持を優先すると想定している。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏



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