Today's Insight

2026/6/24 11:45作成

インフレ圧力の継続はECBの利上げを正当化しよう

■ ECBのラガルド総裁とレーン理事は、ユーロ圏の景気の底堅さとインフレ圧力の継続を指摘
■ 中東情勢の不確実性は継続し、インフレを巡る根強い懸念はECBの利上げを正当化するだろう

 22、23日は、ラガルド欧州中銀(ECB)総裁やECBの主席エコノミストであるレーン理事が欧州議会において相次ぎ発言を行った。今後の具体的な政策対応への明言はなかったものの、ともにユーロ圏の景気の底堅さとインフレ圧力の継続的な強さを強調する内容だった。

 23日公表の5月ユーロ圏PMI速報値も、ECB高官のこうした見解を裏付ける結果となっている。総合指数(49.5、前月比0.9ポイント上昇)は上昇し、市場予想も上回った。好不況の境目である50は3カ月連続で割り込んだが、回答の多くは6月中旬の米イラン合意の前に収集されおり、改定値で上方修正される可能性も残る。サービス業(48.9、同1.2ポイント上昇)の水準は依然低調だが、製造業(51.3、同0.3ポイント低下)が5カ月連続で50を上回り底堅さを保った。内訳指数では、雇用や新規受注が改善。価格関連では、エネルギー価格の低下から投入・産出価格指数ともに大きく低下したが、依然として紛争前の水準は上回り、インフレ圧力の継続を示す結果となった。5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP改定値)では、総合(前年比3.2%上昇)だけでなく、コア(エネルギー・食品・酒類・タバコを除く、同2.6%上昇)の伸びが加速。特にサービス価格(同3.5%上昇)の大幅上昇により、二次的波及が本格化する前からユーロ圏のインフレは目標の2%を上回る強さをみせる。PMI調査から示唆される経済活動の底堅さは企業のコスト転嫁を促す可能性があり、ECBのインフレを巡る警戒は続くことになろう。

 米イランの合意後も中東情勢の不確実性は継続しており、インフレを巡る懸念はECBの追加利上げを正当化することになるだろう。ラガルド総裁は今年3月の講演において、今般のエネルギーショックへの金融政策対応として、(1)据え置き:ショックが短期的な場合、(2)段階的な利上げ:ショックはそれほど持続しないがインフレ目標からの大幅な乖離を起こした場合、(3)大幅な利上げ:インフレ目標からの乖離が大幅かつ持続的な場合、の3つのケースを示していた。22日の発言において(3)の可能性は否定したものの、賃金形成が新たな⁠ショックにより敏感になっている可能性から油断はできないと述べ、賃金に連動するサービス価格への波及に対し警戒を示した。さらにレーン理事は、ユーロ圏が「インフレ率が目標を上回った状態がかなり長い期間続くリスクに直面している」との見解を示し、18日の講演では中立金利レンジの上限が切り上がった可能性から追加利上げの正当性を主張している。上記の点を踏まえれば、ECBは依然として根強いインフレ圧力に対応するため、7-9月期に追加的な政策対応に踏み込むことになるとみている。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

プレスティア インサイトについて

マーケット情報