Today's Insight

2019/4/22 11:30作成

米国REITの市場環境

■ 外部成長への期待が高まるも、内部成長への期待は高まりにくい
■ REITが株式市場全体のけん引役となるには力不足だろう

 米国REITの代表的な指数であるNAREIT指数は1-3月期に16.1%上昇と、S&P500株価指数(13.0%上昇)を上回った。その背景には外部成長の好転への期待があろう。

 REITの成長は、買収や開発・拡張など資産拡大による外部成長と、賃料上昇や改装・建て替えなどのバリューアップによる内部成長に起因する。開発・物件取得案件はオフィスや産業セクターを中心に、2007年後半から2008年前半にかけての水準を上回る425億ドルまで積み上がっている。こうしたなか、米国が景気後退に陥るとの過度な懸念が緩和したことに加え、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策スタンスを景気配慮型に明確に転換。低コストで資金調達できる環境が続くとの見方が強まり、外部成長への期待が高まったことがREITを押し上げたと考えられる。

 しかしながら、1月に公表されたFRBの銀行融資担当者調査では、商業用不動産向け建設・土地開発融資の基準は昨年後半から厳格化傾向にある。米景気減速への不安がその背景にあると思われ、外部成長が頭打ちとなるとの懸念もくすぶる。また、内部成長についても楽観はできない。全米不動産投信協会(NAREIT)の昨年10-12月期のデータによれば、一般企業の純利益に当たり、株価に直結するFFO(Funds From Operation)は前年比7.4%増と、2012年以降の水準(同15%前後)から切り下がってきているものの、2017年以降の横ばい圏を維持できている。ただ、保有不動産の営業純利益を示すNOI(Net Operating Income、同一店舗ベース)は同2.1%増と、2016年1-3月期(同4.9%増)からじりじりと伸びが鈍化してきており、2011年1-3月期(同2.0%増)以来の低水準となっている。保有不動産の収益力が低下していることから、内部成長への期待感は高まりにくいだろう。

 商業用不動産市場のファンダメンタルズが急速に悪化に向かうとは思われないものの、さらなる改善に向かうとの期待も持ちにくい環境が続くだろう。米国REITは高利回りやディフェンシブがテーマになる局面では相場全体を上回るパフォーマンスとなろうが、相場全体のけん引役となるには力不足と判断される。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
山口 真弘

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