Today's Insight

2026/8/25 10:00作成

債券:世界的な超長期国債利回り上昇の遠因

■ 6月後半以降、原油高進行とともに世界的に長期・超長期国債利回りが上昇している
■ 6月のFOMCでフォワードガイダンスが撤回され、市場金利上昇が容認されたことも影響している

 6月後半以降、世界的に長期・超長期国債利回りの上昇が進行している。米30年国債利回りは先週17日に2007年以来の高水準となる5.3%台まで上昇し、日本、ドイツ(独)でも30年国債利回りは年初来の高値圏に位置している。利回り上昇の直接的な引き金は、中東和平合意への期待で6月末まで下落していた原油価格が協議難航に伴って再び上昇基調に転じたことである。またその間の日米独の国債市場の変化をみると、特に米国で2-10年国債利回り差の拡大が目立っており、米国主導で長期・超長期国債利回りの上昇が進行していると整理できる。その一因には、6月16、17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフォワードガイダンスなどの金融政策枠組みの見直しが表明されたことが挙げられる。6月後半を起点に始まったタームプレミアム拡大やイールドカーブのスティープニングが7月28、29日のFOMC以降加速していることから、原油高進行によるインフレ警戒に加えて、米連邦準備理事会(FRB)の情報発信の自重、米財務省による日米協調為替介入や米長期・超長期国債買い入れ消却の増額が重なり、財政・金融政策の予見可能性低下が反映されていると考えられる。

 7月29日のFOMC後の会見でウォーシュFRB議長は、フォワードガイダンス撤回の理由を金融市場での価格形成によるシグナルを重視するためと説明し、市場金利上昇による金融環境の引き締まりを容認する姿勢を示した。一方、米財務省は8月19日に期間10-30年の長期・超長期国債の買い入れ償却を9月9日から11月4日まで毎回40億ドル以上に増額することを発表し、金融市場での価格形成に介入する方針を明確にした。財政・金融政策の対応に齟齬が生じており、今週28日のジャクソンホール経済政策シンポジウムでのウォーシュFRB議長の講演では、金融市場の価格形成機能を引き続き重視するのか、換言すれば、長期国債利回りの安定に対する中央銀行としての見解や姿勢が問われることになろう。米国では来年2月にも利付国債が増発される可能性があり*2、米財務省の対応からは長期・超長期国債利回り上昇により国債発行年限構成や資金調達計画が制約されることへの懸念がうかがえる。長期期待インフレ率を示す米10年物価連動国債のブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2022年後半以降の中心レンジである2.3-2.6%の範囲内で比較的安定しており、FRBの政策金利調整が後手に回っていることが示唆されている訳ではない。ただし、金融市場の期待形成を促すツールであるフォワードガイダンス撤回の弊害が債券保有のプレミアムとして表れている*1。

*1 詳細はPRESTIA Insight 2026.06.22「米国:フォワードガイダンス撤回で得るものと失うもの」
*2 詳細はPRESTIA Insight 2026.08.04「債券:日米協調為替介入の背景にある米国債増発」


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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