Today's Insight
2026/7/29 12:00作成
ユーロ圏:インフレを巡るデータを検証
■ 足元の物価はインフレ目標を上回り、ECBが9月に利上げに踏み込む可能性は高いだろう
■ しかし、賃金・インフレ予想は足元鈍化。それ以降の利上げは中東情勢次第となろう
22、23日開催の欧州中銀(ECB)理事会では、全会一致で政策金利が据え置かれたが、一部の参加者が今回すでに利上げが妥当な可能性を指摘するなど、ECBのインフレへの警戒が引き続き強いことが示された。足もとのインフレ動向をみると、6月のユーロ圏消費者物価指数(HICP改定値)では、総合(前年比2.8%上昇)およびコア(エネルギー・食品・酒類・タバコを除く、同2.4%上昇)の伸びが鈍化している。エネルギー価格がピークアウトしたうえ、これまでのところエネルギー高の二次的波及も限定的だ。しかし、インフレは目標の2%をしっかりと上回る。インフレのモメンタムをECBが公表する季節調整系列(ここでは3カ月前比年率の3カ月移動平均を計算)から確認すると、コア(2.7%上昇)、サービス(3.2%上昇)はともに高止まりする。こうした中東紛争以前から続くインフレ圧力の根強さを踏まえれば、9月理事会でECBが利上げに踏み切る可能性は高いとみている。
先行きのインフレの方向性を探るうえで先週公表されたECBによる調査を確認すると、6月の消費者期待調査(CES)では、インフレ率が急上昇するとの極端な期待は後退している。家計の1年先のインフレ期待(中央値)は、3.0%へと前月比0.5%ポイント低下した。3年先は同0.1%ポイント低下の2.8%、5年先は同変わらずの2.4%となった。予想のばらつきも縮小し、中央値は2%を上回るものの、先行きにかけて緩やかになる見通しが示される。また、企業への資金調達環境調査(SAFE)では、価格や賃金に関する予想が6月にかけて鈍化した。投入コスト(除く人件費)の見通しは5.2%(3カ月前比0.6%ポイント低下)と、中東紛争前の水準を1.6%ポイント上回る高い水準が続く一方、販売価格は抑制されており、3.2%(同0.3%ポイント低下)と、紛争前を0.3%ポイント上回るにとどまる。さらに、賃金予想は2.5%(同0.3%ポイント低下)となり、紛争前の3.1%から低下する。サービス価格と連動する賃金が明確に鈍化する見通しとなっている点は、注目に値するだろう。7月1日公表の7月HICP速報値では、こうした方向性から外れていないか、インフレ動向に注目したい。
上記のインフレの方向性に加え、ECBによる2回の利上げの影響が経済・物価に波及すれば、基調的なインフレ率は目標に向かって減速する可能性が高いとみており、9月利上げ以降は当面据え置きを見込む。しかし、9月以降の利上げに関しては中東情勢次第といえるだろう。イラン情勢が再び緊迫化し、エネルギー高が継続すれば、ECBがさらなる政策対応に踏み込む可能性は高まる。米・イランの戦闘終結を巡る動向から引き続き目が離せない。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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