Today's Insight

2026/11/4 10:30作成

中国:内需低迷と表裏一体の対外不均衡拡大

■ 対中貿易赤字が急増しているEUは中国製の一部輸入品に対して輸入制限を実施する
■ 中国の国内経済停滞が外需への依存度を高める一因であり、構造的に不均衡は拡大しやすい

 欧州連合(EU)は10月12日に中国製のハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)に対して早ければ12月1日から4年間の緊急輸入制限(セーフガード)を実施する方針を明らかにした。初年度は年間35万台に制限し、翌年以降は年間6%の増加を上限とする。報道によると、2027年1-3月期に中国製の化学製品、家具、機械などを念頭に新たなセーフガードの提示も検討されている。背景にはEUの対中貿易赤字拡大が挙げられる。2025年の米国の対中関税および「相互関税」発動以降、中国の対米貿易黒字が減少する一方で対EUでは貿易黒字が増加し、中国の貿易黒字額は対EUが対米国を上回るようになっている。

 筆者は以前、関税政策による米中間の貿易不均衡是正が世界的な不均衡を一段と拡大させ、中国との通商摩擦が世界的に拡散する可能性を指摘した*1。EUのセーフガード導入はこの延長線上で生じている事象と整理できる。中国は経済構造の転換を目指して、半導体・人工知能(AI)・次世代通信などのデジタル分野、新エネルギー車(NEV)・蓄電池・核融合などのグリーンエネルギー分野、ロボット・フィジカルAIなどのハイテク製造分野を中心に産業高度化を推進している。先行して産業育成が推進された「新三様」(NEV、リチウムイオン電池、太陽光パネル)などは国内需給バランスが悪化し、規模の経済性の追求による過剰生産や価格競争の激化に陥った。影響は海外にも波及し、中国政府による産業補助金で大量生産された製品を極端な安価で輸出する不当廉売(ダンピング)との批判が各国で強まっている。中国国内の消費や投資が低迷するなか、4.5-5.0%に設定された2026年の成長率目標の達成に向けて外需への依存度が高まっており、結果的に貿易黒字拡大も加速している。関税率引き上げや輸入制限により米国向け輸出が制約されたことが、電気機器、コンピュータ、自動車など米国と主要輸出品目が類似するEUへの輸出を促す要因になったと考えられる。

 不動産市場の調整、内需低迷、巨額の貿易黒字、自国通貨高、ディスインフレなど、中国の現在のマクロ経済環境は1990年代の日本と多くの共通点が挙げられる。これらの背景や原因がすべて一致する訳ではないが、構造的には、不動産不況が国内需要を抑制し、余剰品の輸出による貿易黒字拡大や自国通貨高が国内のデフレ圧力となっている。中国政府は経済構造改革を進めているものの、投資が大幅に減少するなかで貯蓄・投資バランスの観点では対外収支のさらなる黒字増加が見込まれ、根本的な問題の解消には至らないだろう。

*1 詳細はPRESTIA Insight 2026.01.28「中国:米中通商摩擦を経て不均衡は世界に拡散」


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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