Today's Insight

2026/2/25 12:30作成

欧州経済:米代替関税の影響を確認

■ 経済指標は、ユーロ圏の緩やかな景気拡大とインフレ鈍化の進行を引き続き示唆
■ 米代替関税による経済への短期的影響は小さいが、ユーロ高となれば物価下振れリスクは上昇

 2026年のユーロ圏経済は、経済活動が緩やかに拡大する一方、インフレ率は欧州中央銀行(ECB)の物価目標2%をやや下回る水準まで鈍化することが見込まれる。20日に公表されたPMIデータはこうした道筋に沿った動きとなっている。総合指数(51.9、前月比0.6ポイント上昇)は上昇し、好不況の境目である50を14カ月連続で上回った。製造業(50.8、同1.3ポイント上昇)、サービス業(51.8、同0.2ポイント上昇)はともに上昇したが、特に製造業が2025年10月以来初めて拡大に転じており、これまで成長をけん引してきたサービス業とのセクター間格差が縮小しつつある。価格指数では、投入物価が高水準となる一方、販売価格は低下した。域内での競争激化などから価格引き下げ圧力は続いているようであり、インフレ率鈍化の見通しと整合的な動きとなっている。国別では、ドイツの総合指数(53.1、同1.0ポイント上昇)が上昇。製造業指数の内訳は、受注・雇用・期待指数などが幅広く改善しており、財政出動による産業への波及効果が出始めた兆候とみられる。8日に公表された昨年11月のドイツ製造業受注指数(同7.8%上昇)も、国内受注の増加に伴い、4カ月連続で大きく上昇している。大型受注(航空機など)を除いても同0.9%上昇とプラス基調が続く。

 こうしたなか、20日の米連邦最高裁での国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠とする関税措置への違憲判決を受け、トランプ政権は15%の代替関税の導入を決めた。これによる対欧州連合(EU)向けの関税水準は大きく変わらない見込みであり、直ちに欧州経済大きな影響が出るとは考えにくい。通商法第122条に基づく新たな15%の関税率は、米国・EU間で合意された15%と同水準であり、医薬品、航空機、自動車、トラックなどに対する除外措置も引き続き適用される。また、通商法第232条に基づく品目別関税(鉄鋼、アルミニウムなど)への関税も基本的には変更はなく、EU・米国の間で緊張感がすぐに高まる可能性は低い。

 EUにとっての焦点は、150日後の米関税体制がどうなるかだ。15%の関税は、150日間より長期の適用には米国議会の承認が必要となる。また、通商法201、232、301条などを用いての代替関税措置を取る場合は、事前の煩雑な調査が必要だ。150日間の期限が意識されるにつれ、その後の関税体制への思惑から前倒し需要とその反動が再び発生するかもしれない。さらに、こうした米国発の政策不確実性の上昇を受けて、ユーロの上昇基調が再び強まる可能性もある。足元のECBは政策調整への慎重姿勢を維持しているが、ユーロ高がインフレへの下押し圧力となった場合には、ECBの利下げを促す可能性があろう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

プレスティア インサイトについて

マーケット情報