Today's Insight

2025/9/12 11:15作成

日本:自民党総裁選に伴う金融市場の反応を整理する

■ 2024年自民党総裁選での主張をもとに、財政拡張に伴う円安・株高が進展している
■ 経済情勢や政局の変化に伴い、主張に変化がみられるか注目したい

自民党は総裁選の日程について、9月22日公示、10月4日投開票と決定し、国会議員票と党員・党友票(それぞれ295票)の合計590票で争う「フルスペック方式」を採用した。2024年の自民党総裁選の得票や世論調査を踏まえると、高市氏と小泉氏を軸に選挙戦が進展するとみられる。情勢は非常に流動的であり、野党との連立も踏まえた金融・財政政策の先行きを見極めるには時期尚早であるが、両氏が主張する政策から総裁選に伴う金融市場の反応を整理しておきたい。

 財政拡張に伴う需要拡大が株価を下支えするほか、両氏が主張する政策の恩恵が及ぶセクターの株価が上昇しやすいと思われる。2024年総裁選での主張をもとにすれば、小泉氏は物価高対策、規制改革、外交・防衛力の強化などを掲げ、高市氏は日本の財政は健全との認識のもと、戦略的な財政支出による成長投資とともに、食糧やエネルギー・資源の安全保障の強化を志向する。両氏に共通する防衛関連株などには強い追い風になるとみられるほか、規制緩和やエネルギー・安全保障などの銘柄にプラスに働くだろう。なお、国内の政局が不安定な情勢は当面継続するとみられるが、海外投資家がこれまでのように日本株投資に慎重になる可能性は低いとみる。インフレの定着に伴い名目的な企業業績の拡大が期待されるほか、主要企業の資本効率改善への取り組みが定着したことでROEが上昇し、EPS拡大が正当に評価されるようになってきている。

 金融政策には明確な相違があり、小泉氏は金融政策スタンスを明確にしていない一方、高市氏は利上げに反対のスタンスを明確にしていた。国債利回りや為替への影響はやや複雑になると思われる。両氏の志向に加え、自民党と野党との連立を踏まえると、財政拡張への思惑が広がりやすいが、財政不安が強まる形での利回り上昇は円売り圧力となるだろう。ただし、財政拡張とそれに伴う円安進行によりインフレ圧力が強まるとの連想が働けば、日銀の利上げ観測を強め、利回り上昇・円買いの反応が生じるとみられる。

 なお、財政拡張・金融緩和の連想のもと、円安・株高が進行する「高市トレード」の持続性については慎重に見極める必要があるだろう。2024年総裁選から現在までインフレ圧力がかかり続けるなか、円安を助長しかねない金融緩和を求め続けるのか。自民党主流派からの反対が多い消費減税を志向する姿勢を貫くのか。高市氏の政策姿勢を見極めたい。


投資調査部長
山口 真弘

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