Today's Insight
2026/4/8 11:50作成
ドル:原油価格と投機筋の動向が主導
■ 3月以降、ドルは原油価格との連動性が高く、投機筋の動きが後押しとなった可能性が高い
■ 停戦合意後のドル安は投機筋のポジション解消が主導、不透明な中東情勢から一過性とみる
本稿では、直近のドル相場を巡る材料を整理する。3月31日発行のPRESTIA Insight*1で確認した通り、ドルインデックスは今年1月27日安値(95.551)を底値に反発し、特に米・イスラエルによるイラン空爆と、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖に伴う原油価格高騰を受けて、ドル高地合いが強まっていた。一方で、4月8日(日本時間)に米・イスラエルとイランが2週間の停戦で合意と伝わると、それまでの反動からドル安が進行している。
米国は2000年代からの本格的なシェールオイル革命を経て、2024年時点で世界最大の原油生産国となっていた。そのため、「有事のドル買い」に加えて、3月以降に原油価格高騰が天然ガス価格や石炭価格などの上振れをもたらし、外国為替市場で「エネルギー輸出国通貨の買い・エネルギー輸入国通貨の売り」傾向が意識されるなか、ドル高地合いが強まっていたとみる。例えば、こうした通貨ペアの代表格であるドル円とユーロドルは、中東紛争を境に原油価格との連動性が高まっている。原油先物価格(WTI)に対するドル円とユーロドルの相関係数を日次データで確認すると、年始から2月まで、WTIとドル円はマイナス0.49、WTIとユーロドルはプラス0.58だった。それが3月から4月7日時点までで、前者がプラス0.79、後者がマイナス0.63へ変化している。つまり、中東紛争以降、原油価格が上昇するとドル円は上昇(ドル高・円安)、ユーロドルは下落(ドル高・ユーロ安)と、反応する傾向だったといえる。
投機筋の一部ポジションを反映するとされる米商品先物取引委員会(CFTC)のデータでは、主要8通貨(ユーロ、円、ポンド、加ドル、豪ドル、NZドル、メキシコペソ、スイスフラン)に対するドルのネットポジション(買いから売りを引く)が、最新の3月31日終了時点で約7.7万枚の買い超となっている。約22.5万枚の売り超だった今年2月17日終了時点から1カ月半で約30万枚の買い越しとなり、中東紛争以降のドル高地合いと整合的だ。さらに、「ドル離れ」が意識されるトランプ政権下でも昨年11月25日終了時点に約19.9万枚の買い超だった点を踏まえると、投機筋はドル買い余力があると推測される。今般の停戦合意後のドル安進行は、ひとまず投機筋のポジション解消が主導する見込みだが、ホルムズ海峡での安全な航行や湾岸諸国の製油所の稼働状況など、中東を巡っては不透明な状況が続きそうだ。停戦協議中はドル安進行が一過性にとどまり、景気・金融政策動向に注目が戻るのはまだ先になる見込み。
*1 PRESTIA Insight 2026.03.31 「投資家心理悪化に伴う有事のドル買い進展」をご参照
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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