Today's Insight

2026/4/6 10:00作成

米国:労働市場の緩やかな調整局面が継続

■ 3月の米雇用統計では、雇用が持ち直し、労働時間は微減、賃金の増勢は鈍化した
■ エネルギー価格急騰によって見通しのリスクバランスは労働市場の急減速より物価上振れに傾く

 3日に発表された3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(前月比17.8万人増)は寒波の影響で減少した2月から大幅増加に転じた。基調を示す3カ月平均値(同6.8万人増)を含めて労働需給の安定に必要とされるブレークイーブン雇用成長(米連邦準備理事会(FRB)の2026年4月推計値:同1.0万人増未満)を上回り、失業率(4.3%)も2025年11月の4.5%を直近ピークとして上昇が一服している。非農業部門雇用者数は景気との連動性が相対的に低い医療・福祉業(同8.99万人増)の寄与が大きく、このうち3.5万人分は外来医療サービスでのストライキからの復帰が含まれている。また、週平均労働時間(34.2時間)が3カ月ぶりに減少、平均時給(前月比0.2%増)の増勢が鈍化した。雇用は一時的要因で悪化した2月から持ち直したが、労働時間や賃金での調整も確認され、基調的には緩やかなペースでの労働市場の調整局面が続いている。

 求人労働異動調査(JOLTS)では景気後退期に急増する傾向がある解雇件数(2月:172.1万件)は引き続き安定しており、現時点で労働市場に変調の兆しはみられない。もっとも、失業率はMichaillat / Saez推計による完全雇用失業率(FERU、3月:4.15%)を上回り、失業者1人あたりの求人件数(2月:0.91件/人)が労働需給の均衡を示す1.00件/人を下回っている点から、完全雇用はすでに解消され労働供給超過に転じていることが示唆されている。

 1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、FRBは労働市場の減速への事前対応としての利下げを休止し、今後のデータ、見通しの進展、リスクバランスを踏まえて政策調整の幅や時期を検討する方針を掲げている。2月末以降のエネルギー価格急騰によって見通しのリスクバランスは従前よりも物価上振れに傾き、今後明らかとなるデータで追認されていく可能性が高い。労働市場の調整が緩やかな減速にとどまる限り、当面は利下げ再開の手掛かりにはなりづらいだろう。一方、物価動向が直ちに利上げにつながる訳ではなく、コストプッシュインフレが一時的にとどまるならば金融政策対応の必要性は高くない。中長期的なインフレ期待や基調物価の変化が焦点となり、影響が見通せるようになるまで様子見姿勢が保たれよう。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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