Today's Insight

2026/3/23 12:50作成

ECB理事会レビュー:インフレリスクを警戒

■ ECB理事会では政策金利が据え置かれ、ラガルド総裁はインフレ上振れリスクへの警戒を示す
■ スタッフ予測では物価見通しが上方修正。利上げへはエネルギーショックの二次的波及を注視

 3月18、19日に開催予定の欧州中銀(ECB)理事会では、6会合連続で政策金利が据え置かれた。ラガルドECB総裁は記者会見において、中東情勢の緊迫化により「インフレ上振れリスク」への警戒を示し、ECBは必要に応じて行動を起こす準備があることを示唆した。一方で、足元のエネルギー価格の上昇により「短期的なインフレに大きな影響が出る」ものの、その中期的な影響は「紛争の激しさや持続期間、エネルギー価格がどのように波及するかに依存する」とし、中期的な波及を注意深く点検する姿勢も示した。さらに、インフレ急騰を一時的として利上げが遅れた2022年と現在の違いにも言及。当時はロシアのウクライナ侵攻によるショックが発生した時点でインフレ率が6%を超えており、足元のインフレ率が2%のインフレ目標を達成している点や労働市場の過熱も見られない点など、当時とは状況が異なると述べた。上記を踏まえると、ラガルド総裁の記者会見は、インフレに対する警戒を示しながらも、今後の政策決定はデータ次第で会合ごとに判断する姿勢を示し、バランスをとった内容だったといえる。

 一方で、スタッフマクロ経済予測は、明確にタカ派的な(金融引き締め方向の)メッセージを示していた。ベースライン予測では、足元のエネルギー価格の上昇*を踏まえて、物価見通しが大きく上方修正され、総合HICPに加えコアHICP(エネルギー・食品・酒類・タバコを除く)の粘着性が示された。2026年の総合インフレ率は前年比2.6%へ上昇と前回から0.7%ポイント上方修正された。コアHICPの上方修正幅は0.1%ポイント程度と小幅にとどまったものの、2026年が同2.3%となったほか、2028年においても同2.1%と、見通し期間においてインフレ目標に収束しない予想となっている。一方、実質GDP成長率は、2026年が同0.9%と0.3%ポイントの比較的小幅な下方修正となった。2026年の原油価格に厳しめの想定を置いたリスクシナリオ(AdverseとSevereの2つのシナリオ)でも、物価がさらに大きく上昇する一方、景気への影響は比較的緩やかなものにとどまる見通しが示されている。

 こうしたECBの物価上昇に対する強い警戒感を踏まえると、中東情勢次第で政策スタンスが引き締め方向に傾くリスクは高まっている。今後はエネルギーショックの物価への二次的波及がみられるかが焦点だ。ラガルド総裁が記者会見で列挙した多くの指標(あらゆる商品市場の動向、供給のボトルネック、企業の販売価格予想、PMIや消費者信頼感などあらゆる需要指標、賃金⁠動向)の動きに注目したい。

* ベースライン予測には、通常より遅めの3月11日の予測カットオフ日の商品価格に基づき、2026年の原油価格は平均81.3ドル/バレル、天然ガス価格は46.4ユーロ/MWhが使用された。


投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加

プレスティア インサイトについて

マーケット情報