Today's Insight
2026/4/17 11:20作成
IMF見通しからもみえる財政拡張のリスク
■ IMF見通しでは、原油価格高騰への主要国の金融政策においてスタンスの差が明確に
■ エネルギー価格上限や補助金といった財政政策は無駄が多く、回避すべきと批判的
14日公表の国際通貨基金(IMF)による「世界経済見通し」では、中東情勢の緊迫を受けて、2026年の成長率が0.2ポイント下方修正され、前年比3.1%となるとの予測が示された。IMFによれば、世界経済の見通しは紛争前時点で前回比0.1%ポイント上方修正されており、原油価格の高騰を受けた下方修正幅は0.3%ポイントと軽微にとどまった。ただし、これは紛争の早期終結を想定し、2026年の原油価格平均が80ドル/バレルをやや上回る水準に落ち着くとの前提に立つ。これに対しIMFは、悪化(Adverse)シナリオと深刻(Severe)シナリオという2つのリスクシナリオも提示した。エネルギーインフラの一段の棄損により原油価格上昇が続く深刻シナリオ(2026年:110ドル/バレル、2027年:125ドル/バレル)では、成長率は同2%(前回比1.3%ポイント)まで落ち込み、IMFが景気後退と想定する水準まで鈍化する見込みだ。
こうしたなか金融政策については、各国のスタンスの差が明確に表れる見通しとなっている。米国の金融政策対応は、2026年末の利下げが予想され、足元の3.75%から2027年末の3.1%程度まで政策金利の引き下げが見込まれている。一方ユーロ圏では、エネルギー価格高騰を受けたインフレ圧力への対応から、2026年中に50bpの利上げが行われる見通しだ。政策正常化が遅れる日本に関しては、中立的な水準とみられる1.5%に向けて、これからも段階的な利上げが継続する予想となっている。IMFは、中東情勢の緊迫を受けた金融政策対応は、インフレ期待のアンカーの強さや二次的波及の影響度合いを踏まえ、国ごとに異なるとしつつも、物価の安定維持のための利上げが選択肢となるとしている。もっとも、時期尚早な利上げは経済・金融の不安定化を招くおそれもあるほか、経済活動が潜在成長率を下回った場合は利下げもあり得るとも指摘した。
財政政策に関しては、エネルギー価格高騰の対応として、広範な補助金やエネルギー価格上限といった政策を講じることに、IMFは明確に否定的な立場を示した。こうした政策は価格による需給調整のメカニズムを歪めるほか、財政コストも大きくなる傾向があるとし、財政支援はターゲットを絞り、一時的となるように明確なサンセット条項を設けるべきと指摘。しかし、日本や欧州主要国などでは、政治的な理由からエネルギー価格抑制策が次々と採用され、IMFが推奨する政策との乖離は大きくなっている。2022年の危機時の財政支出と比較すれば、対策の規模はまだ抑制的にとどまるが、こうした財政拡張はインフレ圧力を持続させかねないほか、財政負担の増大を通じて中長期的に金利上昇圧力として顕在化するリスクを伴っている。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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