Today's Insight

2025/10/17 11:20作成

豪州:11月RBA理事会と豪ドル安への警戒

■ 11月RBA理事会を巡り、金融市場では現状維持と利下げの思惑が交錯している
■ 豪物価と豪労働市場の最新評価に注目、豪ドル急落はリスクシナリオだが上値は重いだろう

 豪中銀(RBA)が11月3、4日に開催する次回理事会を前に、政策金利を巡って、利下げか現状維持かで金融市場の思惑が交錯している。

 金融政策に影響を強く及ぼす物価では、7月と8月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年比2.8%、同3.0%と、6月(同1.8%)を底に加速している。そのため、9月理事会議事要旨では、10月29日に公表される7-9月期CPIが8月時点の予測値を上回る可能性を議論したと示された。10月15日には、ハンターRBA総裁補がこの点を改めて指摘したほか、10月10日と16日にはブロックRBA総裁が、サービスインフレの粘着性を指摘したうえで追加利下げを慎重に検討する姿勢を表明した。7-9月期CPIの結果に対する注目が高まるなか、これらの物価指標とRBA高官の発言を受けて短期金融市場では、11月の利下げ観測が大幅に後退していた。

 利下げ観測の再浮上は、10月16日に公表された9月雇用統計がきっかけだった。特に注目されたのは、2021年11月以来の高水準となる4.5%へ悪化した失業率だ。また、8月時点でRBAが示した当面のピークとされる予測値(4.3%)を大きく上回った点も、材料視されている。8月理事会議事要旨では、一部の委員は労働市場がすでに均衡している場合には若干急速な利下げが正当化される可能性があるとしていた。利下げ観測の再浮上は、この点が改めて想起された可能性が高いとみる。11月理事会では四半期金融政策報告(SMP)が公表されるため、RBAによる物価と労働市場に対する最新の評価に注目する必要がある。

 そうしたなか、直近の豪ドルは米中対立懸念や米国での信用不安の高まりから、対米ドルと対円でともに20日移動平均線(本稿執筆時点:0.6562米ドル、98円24銭)を割り込んだ。11月理事会で、仮にRBAが労働市場の悪化を重視して利下げへ前向きな姿勢へ転換した場合、豪ドル安が一段と進む恐れもある。一方で、国際通貨基金(IMF)が豪州の成長率見通しは2025年が1.8%、2026年が2.1%と示す通り、豪景気は復調へ向かうとの金融市場の見方は根強い。加えて、鉱業セクターの良好さを受けて豪州主要株価指数が過去最高値圏を維持できれば、豪ドルの支えとなりそうだ。よって、豪ドル急落は現時点ではまだリスクシナリオだが、市場のリスクセンチメント悪化に伴い、短期的には上値の重さが意識されやすいとみる。


投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登

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