Today's Insight

2018/12/13 10:30作成

インド中銀新総裁は市場の信頼を得られるか

■ 原油価格上昇による財政赤字と経常赤字の拡大や、中銀と政府の対立でルピー安
■ 中銀の新総裁が市場の信頼を得れば、来年の政権交代も視野に、ルピーは反発か

 インド経済は原油を輸入に頼っており、原油価格上昇に弱い構造となっている。10月にはWTI原油先物価格が1バレル75ドル台に上昇し、国民の政府への不満が急激に高まるなか、モディ政権は燃料税の引き下げを決定した。原油価格上昇による経常赤字拡大と同時に財政赤字拡大への懸念も強まり、ルピーは対ドルで74ルピー台半ばの過去最安値をつけた。また、ノンバンクの信用不安を巡り、インド中銀(RBI)が2008-14年の投資ブームを放置したことで大量の不良債権を生み出したと財務大臣が批判。政府が中小企業向けの貸出基準緩和を一方で求めていることは、中銀の独立性をも脅かす行為だとRBIも反発し、政府とRBIの対立が表面化。10月下旬にはパテルRBI総裁辞任の噂が出るに至った。その後、中小企業支援でRBIと政府が合意、総裁の辞任騒ぎも落ち着いたかにみえるなか、ルピーは11月末に69ルピー台後半へ戻す場面もあった。

 だが、12月に入り、10日にパテル総裁が突如退職を発表。後任に任命されたダス財務次官は、2016年に実施された高額紙幣廃止を中心になって進めた人物で、政府が中銀への介入をさらに強める人事との警戒感もくすぶる。また、来年5月までに実施される総選挙の前哨戦と位置づけられた11日実施の5つの州の議会選で、モディ首相率いる与党インド人民党は大敗。主要3州で野党国民会議派に、残り2州で地方政党に過半数を奪われた。こうしたなかルピーは下落したものの、50日移動平均線のある72ルピー台半ばでは下げ渋った。今後は、RBIのダス新総裁が市場の信頼を得られるかにかかってくるだろう。RBI理事会の元メンバーでもあるダス新総裁が中銀の独立性を保ちつつ、政府との関係を改善できれば、ルピーの見直しにつながろう。迷走気味のモディ首相に代わり、名門出身のラフル・ガンジー氏率いる国民会議派への政権交代が視野に入りつつあることも、徐々に市場から好感され、節目の70ルピーを再び目指す展開とみている。

投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
白鳥 朋子