Today's Insight
2025/11/21 11:00作成
日本株:日中関係悪化の悪影響は軽視できない
■ 中国からの訪日客減少や本邦企業の中国本土での活動停滞で、景気に悪影響が及ぶおそれ
■ 日中関係改善の兆しがみえるまで、株価は不安定化しやすい地合いとなるだろう
高市首相の台湾有事に関する国会答弁とそれに対する中国の駐大阪総領事の批判をきっかけに、日中関係が大きく悪化している。中国政府が中国国民に訪日自粛を要請しており、インバウンド消費の減退を通じて日本経済に悪影響が及ぶことが懸念される。今回に類する事態となったのは、2012年9月の日本政府による尖閣諸島国有化が挙げられる。中国からの訪日外国人旅行消費額をみると、2012年10-12月期に270.6億円と、前四半期(738.3億円)から63%減少した。また、2013年7-9月期(792.2億円)まで低迷が続き、本邦経済の下押し要因となった。
観光庁が公表した「訪日外国人の消費動向 年次報告書2024年」によれば、中国からの訪日客の旅行手配方法は個別手配が85.9%を占めており、団体ツアー参加(11.9%)の割合は小さい。2012年4-6月期にはパッケージツアー利用の割合が79%と大半を占め、自粛要請の影響を色濃く受けたことを踏まえると、今回の日中対立がインバウンド消費に及ぼす影響は限定的となる可能性はある。それでも、中国からの訪日外国人旅行消費額は2025年7-9月期に5901億円となっており、本邦経済に与える影響は格段に大きくなっていることから、日中関係悪化による企業業績への悪影響を軽視すべきではない。百貨店やドラッグストアなどの小売業、ホテルなどの宿泊業、移動手段としての陸運業や空運業などのインバウンド消費の恩恵を受けてきたセクターに悪影響が及ぶとみられる。
また、当時は中国国民への訪日自粛要請に加え、中国国内での反日活動が激化した。日系企業の経済活動に強い悪影響が及ぶ可能性があり、機械、電気機器、精密機器、化学セクターの逆風が強まるリスクは念頭に置いておくべきであろう。2010年9月に尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁巡視船が衝突した事件の際には、中国は日本向けのレアアース輸出を制限するところまで踏み込み、自動車や家電メーカーに悪影響が及んだ。中国側の対応に不透明感が強く、日中関係の悪化が深刻化、もしくは長期化した場合には、本邦企業の業績に悪影響が広がるリスクが高いとみられる。日中関係の改善の兆しがみられるまではインバウンドや中国関連などの大きな投資テーマを失った状態となり、日本株は循環物色が生じにくく、不安定化しやすい地合いとなるだろう。
投資調査部長
山口 真弘



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