Today's Insight

2025/12/16 13:30作成

SNB:マイナス金利再導入の可能性は低いか

■ スイス中銀(SNB)は2会合連続で政策金利を据え置き、必要に応じて政策調整の姿勢を維持へ
■ CPIが低水準にとどまれば、物価押し下げ要因のフラン高回避のため為替介入も辞さない構え

 11日、スイス中銀(SNB)は政策金利を0.0%に据え置いた。据え置きは1年9カ月ぶりとなった9月に続き2会合連続。中期的なインフレ圧力は前回会合時と比べてほとんど変化がみられず、予測期間全体を通じて物価安定の範囲内にあると指摘した。引き続き状況を注視し、中期的な物価安定を確保するため必要に応じて金融政策を調整、外為市場で積極的に行動する用意があるとの姿勢を堅持した。インフレ率見通しは2026年が0.3%、2027年は0.6%と9月時点から下方修正、予測期間を通じて政策金利が0.0%との前提に基づいていると説明した。

 11月の消費者物価指数(CPI)は前年比横ばいとなり、食品及び非アルコール飲料や輸送費が物価を下押しした。エネルギーや生鮮食品など変動の大きい項目を除いたコアCPIは同0.4%上昇へ伸びが鈍化し、2021年8月以来の低水準を付けた。CPIは中銀目標(0-2%)を下回る水準にとどまれば、物価押し下げ要因となり得る。過度なフラン高を回避するため、SNBが為替介入を実施する可能性も否めない。シュレーゲルSNB総裁は、貯蓄や年金基金への影響など望まない副作用をもたらす可能性があるとして、マイナス金利再導入のハードルは高いとの考えを示しているが、必要であれば再導入の用意があるとも述べている。

 2011年の欧州債務危機を背景にスイスフラン(フラン)高・ユーロ安が進行したため、SNBは同9月から1ユーロ₌1.20フランを上限に無制限の為替介入を実施。2014年12月にはマイナス金利を導入し、スイス経済を深刻な打撃から救ったとして2015年1月の臨時会合で対ユーロの上限を撤廃、フランは0.8588フランまで暴騰した経緯がある。足元の相場は、SNBがマイナス金利再導入に慎重であることや、SNBが2026年以降は緩やかな物価上昇を予測しているほか、米追加関税率が従来の39%から一律15%へ引き下げられるなどしてフランは対ユーロでじり高が続く。円安・ドル安基調も相まって、当面は節目の0.90フランを意識する展開か。ただし、スイス経済が7-9月期にマイナス成長に落ち込んだことに鑑みれば、3月に付けた年初来安値0.9662フランをメドに反落するか見極めの時間帯といえよう。


投資調査部
シニアFXマーケットアナリスト
二宮 圭子

プレスティア インサイトについて

マーケット情報