Today's Insight

2025/12/12 11:45作成

米国株:2026年の相場観

■ 強いAI関連需要を背景に高い利益成長ペースが見込まれ、株価上昇基調が続くとみる
■ AI関連企業の決算動向と、新体制のFRBによる利下げの行方が2026年の注目点となろう

 2025年のS&P500は調整局面を経ながらも上昇基調を保った。2月以降米政権の関税政策を巡る不透明感が高まり下落基調に転じたが、相互関税発動直後に一部延期が決定され、株価は4月に底打ちした。その後は米政権が打ち出す極端な政策が最終的には実現しないとの見方が強まるなか、減税・歳出法案(OBBBA)の成立などが好感されたほか、人工知能(AI)関連需要の強さが割高な株価水準を正当化する展開となり、10月下旬まで株高基調が継続した。AI関連投資の収益化リスクや巨額の資金調達への警戒感が強まり、11月以降は高値圏で高下したが、11日時点で年初来17.3%上昇となり最高値を更新した。

 金融情報会社LSEG I/B/E/Sの集計(5日時点)によれば、S&P500構成企業の2026年の一株当たり利益は前年比14.6%と予想され、セクター別の寄与度では情報技術(IT、5.7%)が突出し全体をけん引している。金融(2.7%)、コミュニケーションサービス(2.1%)、ヘルスケア(1.6%)などが続くが、これらを除く7セクターは0%前後で概ね横ばいと想定されている。ITセクターの高い利益成長期待を背景に、向こう1年予想株価収益率(PER)は22.5倍と2018年以降の平均(19.2倍)を大きく上回っている。

 2026年の米国株式市場における注目点は、今年に続きAI関連企業の決算動向と、金融政策の変化となろう。AI関連需要の強さが決算により裏付けられ、高い利益成長期待が保たれる限り、株価は高値圏で推移しよう。さらに、AIの社会実装が進展し、他のセクターの生産性向上に寄与する兆候がみられれば、循環物色が生じ株価の底堅さが増すこととなろう。また、米連邦準備理事会(FRB)は9、10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で目先の利下げ一時停止を示唆しつつ、今後の経済指標などを慎重に評価する姿勢を維持した。12月下旬から2026年1月にかけて政府機関の一部閉鎖に伴い延期されていた経済指標が数多く公表される予定で、結果次第で市場の利下げ観測が大きく変化する可能性がある。FRB議長が交代し新体制となる5月以降の政策姿勢を現時点では見通し難く、利下げペースや利下げ終了時の政策金利水準などを巡る思惑により株価が不安定化する局面もみられよう。EPS成長率は高水準が維持されたとしても、すでに相当に割高な水準にあるPERのさらなる上昇を想定し難い。株価は上昇基調をたどるものの、米利下げ停止が視野に入る年後半にかけて上昇ペースが鈍くなるとみて、S&P500の2026年の年末予想値は7400ポイント、上値余地は7600ポイントと想定している。


投資調査部長
山口 真弘

プレスティア インサイトについて

マーケット情報