Today's Insight

2025/12/18 10:15作成

原油:供給超過幅の縮小転換は一時的か

■ 需要見通しは小幅上方修正、供給見通しは一時的要因で小幅に下方修正
■ 世界原油需給の供給超過幅は5月以降で初めて縮小に転じたが、縮小基調とはならないだろう

 国際機関による12月時点の世界原油需給見通しが出揃った。

 2026年の世界の原油需要(日量)の伸びに関して、石油輸出国機構(OPEC)は138万バレル増(2025年:1億514万バレル→2026年:1億652万バレル)と前月の見通しを据え置いた一方、米エネルギー情報局(EIA)は123万バレル増(2025年:1億394万バレル→2026年:1億517万バレル)と前月(106万バレル増)から上方修正した。国際エネルギー機関(IEA)も86万バレル増(2025年:1億394万バレル→2026年:1億480万バレル)に前月(77万バレル増)から上方修正した。IEAは米国の関税の影響が以前の想定より限定的となったものの、需要の伸びは歴史的な基準からみて控えめなままとしている。

 2026年の世界の原油供給(日量)の伸びは上方修正基調が一巡した。EIAは同125万バレル増(2025年:1億618万バレル→2026年:1億743万バレル)に前月(139万バレル増)から下方修正し、IEAも同240万バレル増(2025年:1億620万バレル→2026年:1億860万バレル)に前月(250万バレル増)から見通しを引き下げた。IEA予測をもとにすれば、供給超過幅は過去最大規模の404万バレルから380万バレルに小幅縮小となり、OPECプラス*¹が生産量の引き上げに踏み切った5月以降で初めて供給超過幅が縮小に転じる見通しとなった。

 OPECプラスは11月30日に閣僚級会合を開催し、日量200万バレルの協調減産を2026年末まで継続する一方、10月から開始した日量166万バレルの自主減産を縮小する従来の生産方針を維持することで一致した。12月分の原油生産量を10、11月と同様、同13.7万バレル増やし、近年需給が緩和しやすい1-3月期に増産を一時的に停止することでも合意したが、増産停止は一時的な措置に過ぎず、世界の原油供給超過幅が縮小基調に転じる可能性は低いだろう。ウクライナを巡る和平交渉やそれに伴う欧米の対ロシア制裁の行方や、米国のベネズエラへの制裁強化など、原油需給を左右する要因が多く浮上しているものの、原油需給は引き締まりにくい地合いが続き、原油先物価格(WTI)は当面上値重く推移しよう。


投資調査部長
山口 真弘

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