Today's Insight

2019/8/22 10:30作成

北戴河会議後の中国の政策方針

■ 中国は先週以降、矢継ぎ早に景気対策を発表。ただし、米国には対抗姿勢を強める
■ 北戴河会議を経て、中国は、貿易摩擦の長期化を前提とした対応を明確にしつつある

 中国では7月の経済指標で景気減速感が強まっていることが確認され*1、先週以降、政府、金融当局より矢継ぎ早に景気対策が打ち出されている。中国国家発展改革委員会(NDRC)は8月16日、消費刺激のために2019、20年に可処分所得引き上げ策を打ち出すこと表明。詳細は未公表ながら戸籍制度改革などが検討されている。また、中国人民銀行(PBOC)は17日、最優遇貸出金利(LPR)の算出方法を見直し、市中銀行の新規貸出金利の設定に際してLPRを参照するよう通達した。LPRはPBOCが定める中期貸出ファシリティー(MLF)金利に連動するよう設定され、貸出金利は金融政策との連動性を強めることになる。20日公表の初回の1年物LPRは従来の貸出基準金利(4.35%)をやや下回る4.25%に設定され、企業、家計にとっては実質的な金融緩和措置と位置づけられる。このほか、昨今の伸び悩んでいるインフラ投資を促すために、年初に続き、地方政府の特別債発行枠の追加拡大も検討されていると報じられている。消費、投資を中心に景気を下支えする姿勢がうかがえる。

 一方で対外的には、15日に、米国に対して、3000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の報復措置を講じる方針を表明。1日の米国の追加関税表明以降、米国産農産品の購入の見送り、人民元安の容認などの動きは観測されていたが、正式に対抗する姿勢を明らかにした。また、香港で激化する逃亡犯条例への抗議デモに対しても圧力を強めており、対話での解決を求める米国との新たな対立の火種となっている。

 上記対応は、いずれも先週以降に加速している。8月上旬の北戴河会議を経て、指導部の政策方針を強く反映した動きと推測される。通商交渉では米国に対して安易に譲歩はせず、関税措置などに伴う外需の落ち込みに対しては、経済対策による内需拡大でカバーする姿勢が明確になったと考えられる。中国政府は、貿易摩擦の長期化を前提とした対応を強めており、米国の対中強硬姿勢が続いているうちには、早期通商合意の可能性は低いだろう。

*1 詳細はPRESTIA Insight 2019.08.15 「中国経済:貿易摩擦の影が迫る」を参照

投資調査部
マーケットエコノミスト
祖父江 康宏

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