Today's Insight
2026/6/29 12:00作成
日本:財源の先送りが高める財政悪化懸念
■ 成長投資や消費減税の道筋が示されつつあるが、財源についての議論は先送りされる
■ 財源議論の先送りは市場の財政悪化懸念を大きく高めるリスクを伴う
24日に経済財政諮問会議と日本成長戦略会議の合同会議が行われ、政府は戦略17分野について2040年までに官民合計で370兆円 (対GDP比約50%)超の投資を行う計画を示した。分野別では、2040年までに人工知能(AI)・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、情報通信などの分野が合計186兆円、合成生物学・バイオや創薬・先端医療などが98兆円となり、特に規模が大きい。官民投資のうち政府が負担する額については明示されなかったが、内閣府による機械的な試算では、実質政府支出が年間10兆円(対GDP比で1.5%程度) との想定が示される。また、高市首相はこうした経済成長に資する投資を実現するため、2027年度予算編成時に各省庁の概算要求に上限を設けない方針も示した。詳細は7月に予定される「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれようが、こうした投資枠は一般会計とは別の特別会計で管理されることになり、投資の財源は「つなぎ国債」によって事実上先送りされることになるだろう。また先週は、社会保障国民会議の実務者会議において、食料品の消費税率の引き下げを2027年4月から2年間1%とする中間とりまとめ案が示されたが、その財源についての具体策は2027年度の予算編成に合わせて結論を出すとされた。市場では高市政権が掲げる「責任ある積極財政」を見極める動きが続くが、こうした財源の議論の先送りは市場の財政悪化懸念を大きく高めるリスクを伴っている。
こうしたなか、24日に公表された6月15、16日の日銀金融政策決定会合における主な意見では、政府からの日銀の利上げに対して慎重な意見が示された。日銀内からは、国内外の成長に対する下振れリスクが後退する一方で、インフレの上振れリスクの強まりが6月の利上げを正当化し、さらに先行きの利上げ継続を多くの委員が支持していることが示された。今回対照的だったのは、会合に参加した政府代表者の意見だ。内閣府の担当者からは、「今後の成長型経済への変化が重要であり、マクロの需給動向と物価の関係の慎重な確認が必要」と利上げへの慎重な意見が示され、さらに「高市内閣が進める危機管理投資・成長投資等の取組につき理解の上で適切な政策運営を期待する」との要望も示された。今後も利上げを巡り、日銀は政府からのけん制を受けることが見込まれる。インフレ継続や財政拡張への懸念に加え、日銀の政策が後手に回るリスクが意識されれば、長期利回りへの上昇圧力なるだろう。
投資調査部
シニアマーケットエコノミスト
米良 有加



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