Today's Insight
2025/11/12 11:20作成
11月ブラジル、メキシコ中銀レビュー
■ 両中銀とも市場予想通りの結果、ブラジルは据え置きを示唆、メキシコは連続利下げ姿勢を緩和
■ 物価動向と米関税政策を注視する姿勢は共通、直近の景気動向の違いは為替市場の注目に
ブラジル中銀(BCB)は5日(現地時間)に、メキシコ中銀(Banxico)は6日(現地時間)に、それぞれ金融政策会合(以下、政策会合)の結果を公表した。BCBは3会合連続で政策金利を15.00%で据え置き、2006年7月以来の高水準を維持した。一方で、Banxicoは11会合連続で利下げを決定し、政策金利を7.25%と2022年5月以来の低水準とした。
BCBが公表した声明は、物価動向に対する評価の修正以外では前回9月時点と概ね一致した。つまり、ルラ政権からの利下げ要請にもかかわらず、BCBの様子見姿勢は変わっていないといえよう。そうしたなか、「金利を現行水準で非常に長期間維持することで、インフレ率の目標への収束を確実にする」との声明内の文言が、現在のBCBの政策姿勢を端的に示すと解釈する。10月消費者物価指数(IPCA)上昇率は前年比4.68%と、BCBの物価目標(1.5-4.5%)の上限に近付きつつある。レアル高が一段と進めばインフレ率を抑制し、年明け以降の利下げ観測が強まる可能性もあろう。ブラジルレアル(レアル)の年初来騰落率(対米ドル、11月11日終了時点)はプラス14.6%と堅調さを維持するうえ、底堅いサービス業が直近のブラジル景気を支える。BCBには、対米関税交渉や国内財政政策の動向を見極める余裕がありそうだ。今後政策姿勢を修正する場合は、上記の文言の修正がポイントになるとみる。高水準の実質金利や緩やかな景気減速は、相対的なレアルへの選好度を高めよう。
Banxicoは今回の声明で、従来の「金利のさらなる調整を検討」から「利下げについて検討」と修正。連続利下げに前向きな姿勢を緩めたと解釈するが、これは物価動向が背景とみる。直近の消費者物価指数(CPI)では、コアCPIの上昇率がBanxicoの物価目標(2-4%)からの上振れが続く。Banxicoは今回更新した物価見通しで、来年7-9月期に物価目標中央値(3.0%)へ収れんとの見通しは維持したが、来年4-6月期までの見通しはやや上方修正した。一方で、今年7-9月期の実質GDP速報値が前期比でマイナス成長に沈むなど景気動向への配慮も必要となるうえ、米国の関税政策の行方も大きな不確実性として残る。そうしたなか、短期金融市場での追加利下げ見通しは、次回12月が3割、次々回来年1月が5割の織り込みとなっている。11月末にBanxicoが公表する四半期報告書で詳細な景気・物価見通しが提示される予定で、追加利下げの思惑を通じてメキシコペソ相場が振らされる可能性も。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



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