Today's Insight

2025/12/1 10:15作成

原油:供給超過幅は一段と拡大し、過去最大規模に

■ ロシア石油大手への経済制裁で原油需給が引き締まるとの思惑が広がるか
■ 供給過剰は一段と拡大し過去最大規模となり、WTIに上昇圧力はかかりにくい地合いが続く

 国際機関による11月時点の世界原油需給見通しが出揃った。

 2025年の世界の原油需要(日量)の伸びに関して、米エネルギー情報局(EIA)は105万バレル増(2024年:1億309万バレル→2025年:1億414万バレル)と前月(108万バレル増)から小幅下方修正した。石油輸出国機構(OPEC)は130万バレル増(2024年:1億384万バレル→2025年:1億514万バレル)と前月の見通しを据え置いた一方、国際エネルギー機関(IEA)は79万バレル増(2024年:1億310万バレル→2025年:1億389万バレル)に前月(70万バレル増)から小幅に上方修正した。IEAは需要の伸びは歴史的な基準からみて控えめなままで、米国の関税やロシア産油企業への経済制裁の影響は依然として不明確としている。

 OPECプラス*¹の有志国は11月30日に閣僚級会合を開催し、10月から開始した日量166万バレルの自主減産を縮小し、同200万バレルの協調減産を2026年末まで継続する従来の生産方針を維持することで一致した。また、12月分の原油生産量を10、11月と同様、日量13.7万バレル増やし、近年需給が緩和しやすい1-3月期に増産を一時停止することで合意した。過剰生産の兆候があるなかでの措置とみられるが、サウジアラビアは経済制裁を受けるロシアに配慮する一方、米国から原油先物価格(WTI)の引き下げ圧力を受けており、板挟みのなかで難しい判断に迫られている。ロシアによるウクライナ進行への対応として、米財務省は10月22日にロシアの石油大手2社を制裁の対象に加え、欧州連合(EU)もロシアに追加制裁を科すことで合意した。同制裁が11月21日に発効し、IEAはこれを受けてロシアの原油生産量見通しが大きく下振れするリスクを警戒するとしており、原油需給が引き締まるとの思惑が広がる局面もみられよう。

 それでも、2025年の世界の原油供給(日量)見通しは一段と引き上げられた。EIAは同281万バレル増(2024年:1億317万バレル→2025年:1億598万バレル)に前月(268万バレル増)から上方修正し、IEAも同310万バレル増(2024年:1億310万バレル→2025年:1億620万バレル)に前月(300万バレル増)から見通しを引き上げた。IEA予測をもとにすれば、供給超過幅は2025年の231万バレルから2026年には過去最大規模の404万バレルとなる見通しで、WTIには上昇圧力がかかりにくい地合いが続くとみられる。

 *¹ OPECプラス=石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する組織

投資調査部長
山口 真弘

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