Today's Insight
2026/3/12 11:20作成
スイス:フラン高とスイス中銀(SNB)の政策姿勢
■ フランは対ユーロで2015年1月以来の高値圏に浮上、SNBは為替介入へ前向きな姿勢を示す
■ 物価上昇の想定からSNBはマイナス金利再導入に消極的、対欧州通貨でのフラン高は継続か
今年もスイスフラン(フラン)は堅調に推移している。3月11日時点の年初来騰落率は、対米ドルでプラス1.5%、対円でプラス3.1%と、ブラジルレアルや豪ドルなど資源輸出国かつ高金利を維持する通貨にはパフォーマンスが劣後するが、主要国最低水準の政策金利(ゼロ%)でも、底堅さを維持する。昨年8月には対米輸出品の関税率が一時39%まで引き上げられた(昨年11月中旬から15%へ引き下げ)が、2025年の貿易黒字は約543億スイスフランで前年からの減少幅は1割程度にとどめた。昨年4月以降に金融市場の不確実性が高まるなか、貿易黒字の積み上げや健全な財政状況などを背景とした安全通貨の地位は健在といえよう。
足元では、2月28日の米・イスラエルによるイラン空爆以降、対米ドルではフラン高が一服しているものの、対ユーロでは2015年1月以来のフラン高水準を付けている。3月2日にスイス中銀(SNB)は、声明で「外国為替市場に介入する意向を強めた」と発表。本稿執筆時点では介入は実施していないとみられるが、こうした発表は異例で、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票が行われた2016年以来。スイスは人口が1000万人未満で国内市場が限られるため、輸出で稼ぐ必要性が高い。SNBは過度なフラン高に対して警戒姿勢を強めている。
ただし、SNBは金利面でフラン高抑制を狙うためのマイナス金利の再導入には消極的とされる。3月19日に結果が公表される2026年最初の金融政策会合でも、ゼロ金利政策が維持されると予想する。昨年12月時点でSNBは徐々に物価上昇基調が戻るとの想定を示していたが、3月4日に公表された2月消費者物価指数(CPI)上昇率は前月比0.6%へ加速したほか、前年比でも0.1%とSNBの物価目標レンジ(0-2%)内にとどまる。そのため、SNBは過度なフラン高への警戒は改めて示すものの、「現在の金融環境は適切」との判断は維持するとみる。
こうしたなか、短期金融市場ではユーロ圏や英国と歩調を合わせる形で、スイスでも年内利上げ実施観測が復活している。しかし、スイスは国内電力発電の約9割を水力と原子力で賄ううえ、原油の輸入元は約7割が中東以外である。そのため、中東紛争が長期化した場合でもエネルギー価格高騰の影響は、欧州諸国と比べて相対的に軽微となる可能性が高い。投資家心理の悪化が進んだ場合、対欧州通貨でフランが堅調な状況は続くと想定されよう。
投資調査部
シニアマーケットアナリスト
合澤 史登



Japanese
English
