外貨コラム ― 外貨を持つ理由
資産運用のあり方について考える(後編)

更新日:2017/12/22
※本コラム内容は、2017年12月13日に作成したものです。

田中 正秀
田中 正秀
プロダクト統括部 ポートフォリオ・ソリューション室長

前編では、インフレに備えた資産運用の必要性について説明しました。
後編では、代表的な投資対象資産である株式と債券の特性を踏まえ、資産運用のあり方について考えてみます。

安全性は高い債券。ただし、インフレには弱い

債券とは、分かりやすく言い換えると「企業や政府の借用証書」です。
企業や政府は、債券を発行して投資家から資金を借り入れ、償還まで決められた利息を支払います。債券の発行体が破たんしない限り、満期日になると額面金額が戻ってくるため、債券は安全性が高いと言えます。また、一般的に、投資時点で利回りが確定しており、運用収益を見通しやすいという利点もあります。
ただし、投資時点で利回りが確定するということは、インフレになっても受け取れる利息や償還額が変わらないということでもあります。すなわち、投資している間にインフレが進むと、前編で取り上げたキャッシュと同様に、受け取った利息や満期日に戻ってきた資金の購買力は低下します。
インフレの兆しを察知して、あわてて債券を売却しようとしても、多くの債券保有者が手元の債券を売って有利な投資先に乗り換えようとするため、マーケットにおける債券価格は下落し、手取額が投資元本を割り込む可能性が高まります。したがって、債券は一般的にインフレに弱い資産だと言われます。

インフレへの耐性がある株式。値動きは大きいが、長期的には経済成長の恩恵を受ける

債券が借用証書だとすると、株式は「企業収益を受け取れる権利証書」です。
株式投資で得られる収益は、将来の企業収益拡大を織り込んだ株価上昇と、利益の分配である配当です。
債券と対照的に、株式はインフレへの耐性がある資産です。商品やサービスの販売価格上昇にあわせて、企業の売上高も増加します。また、先行き物価が上昇するとの見方が広がると、安いうちに買っておきたいという思いが消費者の間に広がり、メーカーや小売業の企業業績を押し上げ、株価上昇につながります。

株式のデメリットとして、値動きの大きさがあります。企業経営者は株主のために、1円でも多く収益を獲得するために努力しています。しかし、業界構造の変化や天災・テロによる被害と復興、為替や金利の変動など不確実な要因で企業収益が増減すると、投資家心理が楽観・悲観に揺れ動き、株価を動かします。

株価が上昇しているうちは良いのですが、ひとたび下落に転じると、投資家の間に資産が目減りするという不安感が高まり、株価下落に拍車をかけることがあります。

このような投資家の思いと株式市場の特性について、著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が師と仰ぐ、経済学者のベンジャミン・グレアム氏は、かつて次のように述べています。

In the short run, the market is a voting machine but in the long run, it is a weighing machine.
――短期的には、(株式)市場は(投資家の)投票集計機であるが、長期的には、(企業価値の)計量器である(カッコ内は筆者補足)。

米国株価(ニューヨーク・ダウ工業株30種平均)の長期推移
(ドル) 100,000 10,000 1,000 100 10 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 (年)

(出所)FactSetデータをもとにSMBC信託銀行作成

※株価の目盛は対数表示。

米国株価のチャートを見てみましょう。チャートに目を近づけると、短期的には企業の業績発表や新技術の発表、企業の不祥事等を受けた投資家心理を反映して、株価は細かく上下しています。しかし、チャートから目を遠ざけると、長期的には経済成長や企業収益拡大に歩調をあわせて、株価が上昇基調をたどってきたことが分かります。

収益性と安全性を意識した分散投資が安定運用のカギ

ここまでお読みいただき、インフレに備えるためには、すべて株式に投資すれば良いと思われるかもしれません。
インフレへの備えは大事ですが、同時にデフレに逆戻りするリスクも意識する必要があります。相場観に頼って特定の資産に投資するのではなく、株式の収益性と債券の安全性を意識した分散投資が、安定運用のカギとなります。

日本の10年国債利回りは、日銀による買い入れの影響もあり、ゼロ%近辺で推移しています。しかし、米国やオーストラリアの10年国債利回りは2%台と、先進国の中では相対的に高い水準です。利回りが低い国内債券に代えて、外国債券に投資することで、安全性を意識しつつ、相対的に高い利回りを享受することができます。

各国の10年国債利回り(2017年11月末時点)
(%) 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 利回り5%/年 利回り3%/年 利回り1%/年 日本 0.03 ドイツ 0.37 英国 1.33 米国 2.42 オーストラリア 2.50 ブラジル 9.89

(出所)FactSetデータをもとにSMBC信託銀行作成

しかし、外国債券への投資は、為替ヘッジをかけない限り為替変動リスクを伴います。「円高が進むと、円での手取り額が減ってしまう」という不安は、外貨建資産を保有する限り、常につきまといます。

為替評価損は外貨建て資産の運用益でカバー

外貨建資産に投資する際に、円建ての投資元本を確保するために、どこまで円高が許容できるのでしょうか。外貨建資産の運用収益と、円高に伴う為替評価損の合計がゼロとなる「為替損益分岐レート」を確認してみましょう。

米ドル円レートが1ドル=110円のときに、年率3%の利回りが見込める米ドル建て資産に投資した場合、10年後の対米ドルの為替損益分岐レートは約82円です。運用期間を20年に延ばすと、円の損益分岐レートは同60円近くまで切り上がります。
また、年率5%の利回りで運用すると、10年後の損益分岐レートは約68円となり、年率3%で運用するよりも円高への耐久性が増します。

1ドル=110円で米ドル建て運用を開始した場合の為替損益分岐レート
(シミュレーション)
(円/ドル) 110 100 90 80 70 60 50 40 利回り1%/年 99.6円 90.1円 利回り3%/年 81.9円 60.9円 利回り5%/年 67.5円 41.5円 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20(年後)

(出所)SMBC信託銀行作成

※「為替損益分岐レート」とは、各利回りで米ドル建て資産に投資した場合の資産運用益と、為替評価損の合計がゼロとなる為替レート。

(注)
運用収益は1年複利で計算。
本図表における「シミュレーション」は、一定の利回りの運用に基づく試算であり、実運用におけるコスト・税金・各種手数料等は考慮しておらず、特定の商品の運用成果を保証もしくは示唆するものではない。

このように、資産の運用収益は、利回りが高く、運用期間が長いほど積み上がり、円高に対するポートフォリオの耐性を高めることができます。もちろん、円安が進めば、資産の運用収益に加えて、為替評価益も期待できます。

資産運用のあり方についてまとめると、

  1. ① 国内債券への投資だけでは利回りが低く、将来のインフレに備えることが難しいため、収益が見込める外国債券や株式に分散投資する。
  2. ② 利回りが期待できる資産への長期投資を通じて、円高による為替評価損の影響を和らげることができる。

という2点がポイントとなります。

投資とは、値動きを見て機敏に証券を売買するような瞬発力が求められるものではなく、必要なリターンと許容できるリスクを踏まえてポートフォリオを構築し、時間をかけて運用収益を積み上げるという地道な行為です。短期的な相場変動に惑わされることなく、利息や配当をこつこつと蓄え、気長に経済成長の恩恵を受けること、それが投資の本来の姿です。複数資産への「分散」と収益を積み上げるための「時間」を意識して、実のある資産運用につなげていただければと思います。

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本資料は情報提供を目的としてSMBC信託銀行が作成した資料です。SMBC信託銀行はここに記載された情報が十分信頼に足るものとして信じておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。また、その情報を使用することにより生ずる、直接または間接のいかなる損失に対しても、責任を負うものではありません。本資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。投資の選択や投資時期の決定は必ずご自分の判断でなさるようお願いいたします。

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