外貨コラム ― 外貨を持つ理由
資産運用のあり方について考える(前編)

更新日:2017/11/22
※本コラム内容は、2017年11月14日に作成したものです。

田中 正秀
田中 正秀
プロダクト統括部 ポートフォリオ・ソリューション室長

早いもので、2017年も残すところ1か月余りとなりました。今年のマーケットを振り返ると、トランプ大統領の政策運営をめぐる不透明感や、フランス、イタリアなど欧州主要国の選挙による反EUムード醸成への懸念、北朝鮮の軍事行動をめぐる緊張など、様々なリスクが意識されましたが、いずれも投資家の楽観姿勢を崩すには至りませんでした。

2018年には、FRBを筆頭に、金融政策正常化に向けた動きが続きそうですが、政治面の重大イベントは目先見当たらず、企業業績拡大を好感したリスク選好の地合いが続きそうな気配です。

しかし、株価が一本調子で上がり続ける中で、どこかで株価が頭打ちとなり、反落するのではないか、FRBの追加利上げや格付け会社による格下げ懸念から、債券利回りが急上昇するのではないかという漠然とした不安もあるでしょう。

そこで、先行き不透明な環境における「資産運用のあり方」について考えてみたいと思います。

資産をキャッシュで保有すれば、安泰なのか

日本銀行によると、2017年3月末の家計の金融資産約1,800兆円のうち、約52%を現預金が占めています。

一方、海外の家計金融資産構成をみると、金融資産に占める現預金の保有割合は、米国で約13%、ユーロ圏でも約33%にとどまります。

家計の金融資産構成(2017年3月末時点)
日本 現預金 51.5% 投資信託 5.4% 株式等 10.0% その他 33.1%米国 現預金13.4% 投資信託 11.0% 株式等 35.8% その他 39.8%ユーロ圏 現預金 33.2% 投資信託 9.2% 株式等 18.2% その他 39.4%

出所:日本銀行「資金循環の日米欧比較」(2017年8月18日)をもとにSMBC信託銀行作成

生活資金や不意の支出への備えのために、一定程度現預金(以下、「キャッシュ」と称します)を持つことは必要なことです。その点を割り引いても、金融資産の過半が収益につながらないキャッシュだということは、日本人が資産運用による利益よりも損失を恐れていることを示唆しています。しかし、収益を得られないキャッシュとして資産を保有することは、果たして望ましいことなのでしょうか。

いったんキャッシュの話から離れて、不動産の話をします。

あなたは、駅前の繁華街に土地を保有しています。更地なので収益は入ってきませんが、毎年固定資産税を支払わなければなりません。もし、マンションやコンビニエンスストアを建てれば、建設費やローンの支払いはあるものの賃料が入り、舗装してコインパーキングに仕立てても、利用実績に応じた安定的な収入が見込めます。土地を更地で持つことは、単なる税金の持ち出しになり、もったいないと感じるのではないでしょうか。

しかし、これが金融資産になると、キャッシュで保有していてももったいないとは感じなくなるようです。損しないことが肝要、だからキャッシュが望ましいということです。

「土地とキャッシュは違う。地価は変動するけれど、現金は額面のまま変わらず、定期預金も満期になれば全額戻ってくるじゃないか。」そのような意見もあるでしょう。しかし、土地と同様に、キャッシュの価値は経済情勢につれて変化します。

人手不足、忍び寄るインフレの足音

キャッシュの価値は、モノやサービスを買うための力、つまり「購買力」です。

たとえば、1年前に1,000円で買えた商品が、今は2,000円に値上がりしたとすると、同じ商品を買うのに2倍のキャッシュが必要だということになります。すなわち、「インフレ」です。言い換えると、1年間で1,000円札の購買力が半分になったことから、同じ商品を買うためには1,000円札が2枚必要になるということです。このように「インフレ」には、モノの価格上昇という裏側に、キャッシュの価値低下という側面があります。

わが国では、資産バブル崩壊後、長らくデフレが続いたため、40歳代半ばを境に若い世代は、インフレの実経験が乏しいと思います。それ以上の世代の方々もバブル期以前のようなインフレのイメージは薄れているのではないでしょうか。

しかし、足元ではひたひたとインフレが忍び寄る気配も感じられます。

厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(求職者に対する求人数の比率)は1.52倍とバブル期を上回る水準に達しており、企業の人材不足が深刻な問題になり始めています。

採用が難しいとなれば、企業は採用候補者に提示する賃金を引き上げざるを得ません。そのコストは、まず企業による業務の合理化や省力化投資で吸収されますが、自助努力が限界になると、販売価格に転嫁されることになります。

経済全体の需要と供給のバランスを示すGDPギャップも、2017年に入って需要超に転じています。デフレ脱却の芽が少しずつ顔を出してきましたが、芽が育つ前に、金融資産を守るための対策を講じる必要があります。

先ほどの例のように、インフレによる購買力の目減りは、会社員であれば給与アップ、公的年金であれば物価スライドで一部補てんされます。しかし、金融資産をキャッシュで保有する限り、インフレに伴う購買力低下を補うことはできません。

長らく経験しなかったインフレへの備えが、資産運用の最低限の目標となります。

とはいえ、高値警戒感がくすぶる株式市場では投資タイミングが難しく、低金利のもと債券投資から得られる利息は微々たるものとなると、いったいどの資産にどれぐらい投資したら良いのかと悩まれることと思います。次回は、投資資産や地域、通貨等を中心に、資産運用のポイントについてご説明いたします。

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