外貨コラム ― 外貨を持つ理由
2017年下半期の市場環境見通し
~シナリオ別に考える~

更新日:2017/7/31
※本コラム内容は、2017年7月14日に作成したものです。

合澤 史登
合澤 史登
プロダクト統括部ポートフォリオ・ソリューション室
ポートフォリオ・アナリスト

前回は2017年上期の金融市場動向を振り返りましたが、今回は下期の市場環境を左右する2つの注目点についてシナリオ別に考えてみます。
投資家は、各国の政治情勢、金融・財政政策、経済環境、企業業績、地政学リスクなど様々な要因に注目しています。例えば世界経済については、2018年にかけて回復基調の継続が市場のコンセンサスとなっています(図表1)。他にもトランプ政権の政策実現性などへの注目度は高く、皆さんも連日ニュースをご覧になっているのではないでしょうか。ここでは相場を左右するポイントとして、①過剰流動性相場の継続性、②中国経済の行方の2点を取り上げます。

■ 図表1: 世界経済見通し(IMF)
  • 米国や新興国を中心に、2018年にかけて世界経済は成長が見込まれています。
  • 一方、欧州・日本・中国などは、経済成長率の伸びが縮小する見込みです。
2016年 2017年(予測) 2018年(予測) 世界 3.1% 3.5% 3.6% 先進国 1.7% 2.0% 2.0% 米国 1.6% 2.3% 2.5% 欧州 1.7% 1.7% 1.6% 日本 1.0% 1.2% 0.6% 英国 1.8% 2.0% 1.5% 新興国 4.1% 4.5% 4.8% 中国 6.7% 6.6% 6.2%

出所:IMF「World Economic Outlook,April 2017」より、
SMBC信託銀行作成

先進国の金融政策運営によって、市場環境は大きく変わります。

第一のポイントは、過剰流動性相場の継続性です。リーマン・ショック以降、主要中央銀行は量的金融緩和策を進めてきました(図表2)。しかし、2015年12月から4回の利上げを行った米国は既に金融引締めのステージにあり、2017年6月には欧州・英国・カナダが、金融緩和姿勢からの転換を示唆しています。鍵を握るのは、各国中央銀行の金融政策見通しです。

■ 図表2: 日米欧中央銀行の資産残高比較
  • リーマン・ショックの後、各中央銀行は量的緩和策を実施した結果、バランスシートが大きく膨らみました。
  • 「過剰流動性相場」の起点であり、今後のバランスシート縮小が市場に与える影響に、注目が集まります。
2007年12月末 2017年6月末 増加率
(2007年12月末対比)
日本 111兆円 UP 502兆円 350%増
(円建て)
米国 0.9兆米ドル
(約100兆円)
UP 4.5兆米ドル
(約505兆円)
400%増
(米ドル建て)
欧州 1.5兆ユーロ
(約244兆円)
UP 4.2兆ユーロ
(約539兆円)
180%増
(ユーロ建て)
合計
(円換算)
約455兆円 UP 約1,546兆円 240%増
(円建て)
  • 出所:日本銀行・FRB・ECBのHPより、SMBC信託銀行作成
  • (注1:日銀は月末時点のデータ / FRBは月末週・水曜日時点のデータ / ECBは月末週の週次データ)
  • (注2:円建て換算レートは、各月末のNY CloseレートをBloombergより取得)

ケース1:過剰流動性相場の継続。

FRB(連邦準備制度理事会)によるバランスシート縮小、ECB(欧州中央銀行)・BOE(イングランド銀行)による金融引締めは緩やかなペースとなり、2017年下期中は過剰流動性が残ると考えられるケースです。先進国では春先に比べ物価上昇率の伸びが鈍くなりました。インフレ圧力が弱い現状では、中央銀行が金融引締めへの転換を急ぐ必要はなく、下期を通じて金融緩和環境が維持される可能性が高いです。
当ケースでは上期と同様、リスク性資産へ投資するファンドが相対的に良いパフォーマンスになる見込みです。

ケース2:過剰流動性相場からの転換。

中央銀行による金融引締めペースが想定以上に加速し、過剰流動性相場からの転換が明確に意識されるケースです。今後、インフレ圧力の強まりなどを背景に当ケースが実現した場合、市場を支えてきた流動性が縮小するため、大幅な相場調整が懸念されます。
当ケースでは、投資元への資金流出懸念の高まる新興国より、先進国へ投資するファンドが有利になる見込みです。

習近平氏の指導力が、中国経済の安定に深く関わってきます。

内政・外交ともに問題を抱える中国(図表3)は、習近平氏のもとで構造改革の実現を図っています。内政面では、秋に実施予定の中国共産党第19回全国代表大会をめぐる動静、外交面では、対米関係や北朝鮮情勢、南シナ海をめぐる周辺国との領土問題が注目されます。

■ 図表3: 中国を取り巻く状況
  • 中国は、数々の内政・外交問題に直面しています。
国内問題 ・過剰生産能力の削減 ・過剰債務の解消 など 国外問題 為替市場 ・外貨準備額の減少 など 国外問題 アメリカ ・米中貿易摩擦 ・北朝鮮問題 など 国外問題 日本・韓国・ロシアなど ・北朝鮮問題 など 国外問題 東南アジア諸国 ・南シナ海の領土問題 など
経済成長率見通し(IMF)
実績 予測 (2017年4月時点)
2016年 2017年 2018年 2019年
6.7% 6.6% 6.2% 6.0%

出所:IMFなど各種資料より、SMBC信託銀行作成

ケース1:習近平氏が指導力を発揮し、中国経済の安定を達成。

この4年半で習近平氏は、高成長期から安定成長期へのスムーズな移行を目指し、多くの経済政策を打ち出してきました。習近平氏が、秋の共産党全国大会を経た後も引き続き円滑に構造改革を推進できれば、中国経済の安定に寄与する可能性が高いです(図表3)。
当ケースでは、中国をはじめアジア新興国を投資対象とするファンドが有利になる見込みです。

ケース2:習近平氏の求心力低下から内外の諸問題に対処できず、中国経済が悪循環に陥る。

中国はいまや世界第2位の経済大国ですので、中国の景気悪化は、貿易を通じて世界経済へも悪影響を及ぼす可能性があります。また、上期に急上昇した中国株や香港株に大幅な調整が入れば、中国金融市場発の悪影響が世界へ及ぶ可能性もあります。
当ケースでは、安全資産とされる先進国国債などを投資対象とするファンドが有利になる見込みです。

定期的なポートフォリオと市場動向の確認をお勧めします。

下期の見通しはいかがだったでしょうか。
私たちは、長期投資の合間にも定期的に、ご自身のポートフォリオ評価を行うことをお勧めしています。その際、市場動向と見通しの確認をあわせて行えば、市場の短期的な調整にも慌てず対処できるのではないでしょうか。

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