外貨コラム ― 外貨を持つ理由
年金運用にみる外国資産への分散投資の重要性

更新日:2017/3/31

祖父江 康宏
祖父江 康宏
マーケットエコノミスト

「外国投資」とは、我々日本人が日本で生活していくうえでは、最も縁遠い世界の一つかもしれません。しかしながら、長期的な資産運用において外国資産への投資を行う意義は大きいと考えています。今回は、年金基金の運用方針を例に挙げ、長期投資の観点から外貨・外国資産投資のメリットを整理してみたいと思います。

中長期的な資産運用における外貨・外国資産投資のメリット

外貨保有の目的でまず挙げられるのが、為替差益の享受です。すなわち、外貨を安く買って高く売ることで差益を狙って取引を行います。また、仕事や旅行などでの海外決済の利用もよく挙がります。数日から数カ月程度の比較的短い期間を前提とすれば、恐らく大半の回答はこの2つのいずれかに該当すると思われます。ただ、数年、数十年といったより中長期的な資産運用を検討する場合、国内資産に加えて、外貨や外国資産を組み込むことで「分散投資効果」や「期待リターンの向上」というメリットも得られます。

年金基金の運用にみる外国資産投資

中長期的な資産運用を検討するうえで参考となるのが、年金基金の運用方針です。我々の老後資金の運用を担う年金基金は長期的視点で安定的な運用収益を上げることを目指しています。例えば、国内最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) では、長期投資、分散投資を前提に定める「基本ポートフォリオ」と呼ばれる資産構成に沿って運用を行っています。資産構成比率には一定の乖離が認められていますが、ある資産クラスの価格が急落しその構成比率が下がれば該当資産を買い増し、逆に価格が急上昇しその構成比率が上がった場合はその資産を売却しています。すなわち、価格が下がり割安となった資産を買い、割高な資産を売ることが仕組み化されているとも言えるでしょう。本稿を執筆している2017年3月時点の「基本ポートフォリオ」(下図)は2014年10月から適用されたものです。注目していただきたい特徴の一つが、私たちの年金原資のうち40%が外国資産(外国株式25%、外国債券15%)に向けられている点です。10年前の「基本ポートフォリオ」ではこの割合はわずか17%(外国株式9%、外国債券8%)でしたので、大きく引き上げられたことがうかがえます。昨年、マイナス金利が導入されるなど国内資産の利回りは低迷が続いており、国内資産のみで高い運用収益を安定的に上げることが一段と困難となっています。このような中で、外国資産への投資比率を高めることで運用収益の向上を目指していると考えられます。資産クラスとしての外国投資の重要性が高まっていることが確認できます。

図表:GPIFの基本ポートフォリオ 《10年前》67% 11% 8% 9% 5% 《現在》35% 25% 15% 25% 国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産

注: 10年前の基本ポートフォリオは平成18-21年度(2006-2009年度)に適用されたものを参照、現在の基本ポートフォリオは平成26年(2014年)10月以降現在まで適用されているものを参照している。上記水準から各資産ごとに乖離許容幅が設定されている。
出所: 年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF)

地域分散、通貨分散による価格変動の安定化

では、分散投資効果のメリットとは何でしょうか。一言でいえば、ポートフォリオ(運用資産)の価格変動を安定させられることです。特定の金融資産に集中投資を行い、仮にその資産が急落すると大きな損失を受けてしまいますが、投資対象を複数の金融資産に分散させていれば、損失を限定することができます。ポートフォリオの中に真逆の値動きをする資産を保有していれば、価格変動を大幅に抑制することが出来るかもしれません。一般的に、異なる値動きをするような資産を多く組み入れることで分散投資効果は高まります。外貨、または外国資産をポートフォリオに組み入れる(やや専門的な言い方をすると投資ユニバースを広げる)ことで、国内資産だけでは得られない分散投資効果(地域分散、通貨分散)が期待できます。年金基金など資産運用のプロフェッショナルは、必要なリターンをなるべく低いリスクで獲得することを目指しており、こうした運用手法を採用しているのです。

世界経済の成長を取り込む国際分散投資

また分散投資のメリットは、ポートフォリオ価格の安定化だけではありません。筆者が強調したいのは、国際分散投資によってリターン向上も期待できる点です。残念ながら、日本はこの先人口減少・少子超高齢社会を迎え、新興国のように高い経済成長は見通すことは極めて難しい状況にあります。ただ、これまでに蓄積してきた巨額の金融資産を有しており、これを有効活用していくことが大きな課題となっています。先に挙げたGPIFの例もこのような問題意識から進められている動きです。外貨や外国資産を含めた国際分散投資では、世界経済の成長の恩恵を享受することが出来、投資リターンの向上も期待されます。我が国は、世界と比べてもホームカントリーバイアス(自国投資への偏重)が強いことが指摘されていますが、長期的に資産形成を行ううえで、外貨、外国投資を組み込むことのメリットは大きく、今後ますます、その重要性が高まっていくことが見込まれます。

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